一部の富裕層が主催するプライベートなパーティーに、ビヨンセやドレイクといった著名アーティストを招いていると報じられています。

How to Hire a Pop Star for Your Private Party | The New Yorker

https://www.newyorker.com/magazine/2023/06/05/how-to-hire-a-pop-star-for-your-private-party



アメリカ・サンフランシスコ在住でエンタテインメント業界専門弁護士のジャクリーン・サベック氏は「これまで多くのアーティストが『クールではないから』との理由でプライベートなパーティーに赴いて演奏することを避けていました」と語っています。そのため、プライベートパーティーでは基本的に「ノスタルジア・パフォーマー」と呼ばれるプライベートパーティー専門のアーティストが演奏することが多かったとのこと。

しかし近年では、ビヨンセやフロー・ライダー、ロッド・スチュワートといった著名なアーティストがプライベートパーティーでの演奏を行っています。実際に2023年1月にはビヨンセがドバイのアトランティス・ザ・ロイヤルにおいて楽曲を披露したことが報じられています。海外メディアのThe New Yorkerによると、その際ビヨンセに支払われた出演料は約2400万ドル(約37億円)だそうです。

タレントエージェント企業のC.A.A.でプライベートイベント部門の責任者を務めるロバート・ノーマン氏は「私が数十年前に入社した当時は、年間100〜200件のイベントをブッキングしていましたが、2022年にはその数がおよそ600件にまで増加し、プライベートなイベントの予約を専門とするチームを結成することになりました」と報告しています。



このようなプライベートなパーティーでポップスターが演奏する理由について、The New Yorkerは2つの理由を挙げています。

1つ目は、アーティストの音楽収入の落ち込みです。かつて、アーティストはレコードの販売によって収益を得ており、1999年にピークを迎えました。しかし、その後のダウンロード販売などの興隆によってアーティストの収益は減少。一部のアーティストは最盛期の50%以上の収益を失うことになりました。近年ではSpotifyやApple Musicなどの音楽サブスクリプションサービスが活況を迎えていますが、これらのサービスを運営する企業からアーティストが得られる収益はわずかなものとのこと。

2つ目の理由は、アメリカでは億万長者の数が2000年以降約3倍に増加していることです。つまり、アーティストが得られる収益の不確実性と富裕層の急激な増加に伴い、プライベートなパーティーにポップスターを招く富裕層と、それに応じるアーティストが増加しているというわけ。



一方で、ポップスターによるプライベートパーティーへの参加には否定的な意見も上がっています。ある音楽会社の責任者は「とあるポップスターはガン撲滅をうたったプライベートなチャリティーショーに出演したにもかかからず、主催者側から出演料をもらっています」と批判。また、2013年にジェニファー・ロペスがトルクメニスタンの幹部向けのイベントでグルバングル・ベルディムハメドフ元大統領の誕生日を祝った際には、人権擁護団体のヒューマン・ライツ・ファウンデーションが「トルクメニスタンの独裁者の誕生日を祝ったことでジェニファー・ロペスは少なくとも1000万ドル(約15億円)もの報酬を得ていました」と指摘しています。

他にも、ラッパーのニッキー・ミナージュは2015年に、アンゴラのジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス元大統領と関係のある企業が主催するパーティーに参加したことで200万ドル(約3億1000万円)の報酬を得たことが批判の的となった際、「私への全ての批判は最終的に断罪されるでしょう」とコメントを残しています。





Fitz and the Tantrumsなどのマネジャーを務めるアダム・ハリスン氏は、一部のクライアントに対して自身がマネジメントするアーティストをプライベートパーティーに招かないよう注意を促しています。また、ハリスン氏は「自分がマネジメントするアーティストには、『どんなコンサートでも自身の価値観そっちのけで演奏することを控えるように』と伝えています」と述べています。