Samsungの広帯域幅メモリー「HBM3」と「HBM3E」が熱と消費電力の問題でAIプロセッサ用のNVIDIAのテストに不合格
第4世代High Bandwidth Memory(HBM)である「HBM3」と第5世代の「HBM3E」としてSamsungが製造したDRAMが、発熱などの問題によりNVIDIAのAIチップでの使用に堪えないとのテスト結果が出ていると、ロイターが報じました。
Exclusive: Samsung's HBM chips failing Nvidia tests due to heat and power consumption woes | Reuters
この問題に詳しい関係者の話によると、熱と消費電力に難を抱えているというSamsungのHBM3の問題は、2024年中にも市場投入される見込みの第5世代HBMである「HBM3E」にも影響を与えるものだとのこと。
ロイターが独占的に発表した今回のニュースに対し、Samsungは「当社の製品が、熱や消費電力が原因でつまずいているという主張は事実ではありません。テストは計画の通り順調に進んでいます」と述べて、報道を否定しました。また、NVIDIAはコメントを控えました。
HBMは2013年に開発されたDRAM規格の一種で、チップを垂直に積み重ねることで省スペース化と省電力化を実現しており、生成AIのブームにより高性能GPUの需要が急増するのに伴って、HBMの需要もうなぎ登りになっています。
そのため、世界のAI向けGPU市場の約80%を占めるNVIDIAのお眼鏡にかなうことは、メモリメーカーにとって利益面でも面目を保つ上でも大変重要だとされています。
Samsungは、2023年からHBM3とHBM3Eに関するNVIDIAのテストに合格しようとしてきた、とロイターに情報を寄せた関係者3人は述べました。また、そのうち2人によると、2024年4月にはSamsungの8層および12層のHBM3Eがテストで不合格という結果が出たとのこと。
不合格になった原因がすぐに解決できるようなものなのかは不明ですが、「NVIDIAの要求を満たせなかったことで、SamsungがHBMの分野で競合するSK HynixやMicron Technologyにさらに水をあけられるとの懸念が業界や投資家の間で高まっている」と関係者らは口をそろえました。
Samsungの苦戦とは対照的に、SK Hynixは2022年6月からNVIDIAにHBM3を供給しており、HBMチップの主要サプライヤーとしての地位を固めています。また、2024年3月にはHBM3Eの出荷も開始しており、出荷先は伏せられていますが、それはNVIDIAだと情報筋の1人は話しています。
SK Hynixは2013年に最初にHBMチップを開発したメーカーであり、Samsungより多くの時間とリソースを投資したことが、HBMにおける技術的優位につながっています。また、SamsungにとってSK Hynixに並ぶライバルであるMicron Technologyにも、NVIDIAにHBM3Eを供給する計画があるとのことです。
業界アナリストは、Samsungが2024年5月21日に半導体部門のトップを更迭したのは、SamsungがHBMの遅れに焦りを募らせていることを強調する動きだと指摘します。
韓国の証券会社・KB Securitiesの調査部長であるジェフ・キム氏は「世界最大のメモリーメーカーであるSamsungならすぐにNVIDIAのテストに合格するだろう、と市場は期待していましたが、HBMのような特殊な製品が顧客の性能評価を満たすのに時間がかかるのは当然です」と話しました。