リモートワークやハイブリッドワークの求人が減ってきたようだ。業界や、希望する給与によっては、このような働き方をすることが難しくなりはじめている。

リモートワークやハイブリッドワークの台頭を促したパンデミックからの4年間、従業員と雇用主のあいだでは、自宅で働くのがよいのか、オフィスで働くのがよいのか。あるいは、これらを組み合わせるのがよいのかをめぐり、綱引きが続いていた。

専門家はしばしば、振り子は戻りつつあり、より多くの人々がオフィスに戻ってきているという。しかし、すべてがそうなっているのだろうか? 柔軟な働き方の現状について詳しく知るために、3人の専門家に話を聞いた。

現在、高賃金の仕事全体に占めるハイブリッドワークの割合は、わずか2%



この数字は、給与が10万ドル(約1540万円)以上の仕事に特化した転職サイト、ラダーズ(Ladders)の最新の調査によるもので、1月から3月にサイトに掲載された50万件の求人を分析した結果だ。また、高賃金の仕事のうち完全リモートワークは10%未満であることもわかった。

リモートワークが可能な仕事の割合は、2023年10月から12月の期間と比較して、2024年1月から3月の期間では33%減少した。要するに、就職可能な高賃金の仕事のうち、完全リモートは全体のわずか9%ほどだ。

「ハイブリッドワークは、大幅な減少を続けている」と、ラダーズの成長マーケティング担当ディレクターであるジョン・マリニクス氏は語った。「この給与水準のハイブリッドワークは、近い将来、ほぼ消滅すると思う。ハイブリッドワークを採用した企業は、望んでハイブリッドになったわけではなく、しかたなくそうなっただけだ」と言う。

「ハイブリッドワークの割合は将来、0.5%を下回るだろう。リモートワークは、ある時点でゼロになるかもしれない」と言い添える。

求職者が2024年に高賃金のハイブリッドワークの求人を見つける可能性は40%低下し、現在は高賃金の仕事の89%が完全出社型だ。つまり、高賃金のハイブリッドワークやリモートワークの仕事を探している求職者は、求人数が急降下し続けているため、ますます厳しい戦いに挑むことになる。

「リモートワークが検索される傾向は常に高い」とマリニクス氏はいう。「リモートワークが見つからなければ、出社型かハイブリッドワークで妥協する。問題は、リモートワークの割合が減っていることだ。20万ドル(約3090万円)以上の給料を求める場合、リモートワークはさらに少なくなる」と話す。

「誰もがリモートワークをしたがるが、仕事がない。結果的に、リモートワークの競争率は信じられないほど高くなっている」。

柔軟な働き方の求人広告は62%増加



高賃金のハイブリッドワークは増えていないかもしれないが、柔軟な働き方の求人自体は多い。このデータは、4000件以上の求人広告と84万件以上の求人検索を分析した求人情報提供会社のフレクサ(Flexa)によるものだ。

労働市場の逼迫によりRTO(Return to Office、オフィス出社義務)が拡大しているにもかかわらず、求職者はリモートワークを諦めようとしていない。平均すると、全労働者の半数が、前四半期に完全リモートワークを探していた。

フレクサの成長担当リーダーであるベス・カーター氏は、「柔軟な働き方が大きく取り上げられた当初は、皆、長々としたウィッシュリストを作っていた。デートのときに『理想の男性はこういう人。この55の条件を満たしていないようでは無理』などとやるような感じだ」と語った。

「求職者は、あらゆる種類の、とても細かくニッチな条件を求めていた。しかし興味深いことに、ここ数カ月は労働市場がますます厳しくなった結果、求職者は、必須ではないがあれば嬉しい条件を放棄しはじめている。完全リモートワークの需要は、実際に減少している」という。

同氏は、求職者は仕事に何を求めるかという点で基本に立ち帰りつつあるので、リモートファーストでなくても、どのようなレベルの柔軟性でもある程度満足すると話す。

賃金と求人が縮小し、失業率が上昇するなか、多くの雇用主が柔軟な働き方を撤回している。最近では、大手コンピューターメーカーのデル(Dell)、ドラッグストアチェーンのブーツ(Boots)、世界的IT企業のIBMなどが、リモートワークに対してペナルティーや制限を課す動きを見せている。

フレクサの調査により、RTOが広がっているにもかかわらず、オフィスへの出勤が任意であるリモートファーストの職が、現在出されている求人広告のかなりの部分(31%)を占めていることもわかった。カーター氏は「氷山の一角は必ずしも業界全体で実際に起きていることを反映しているわけでもない」と述べた。

前四半期に「完全リモート」の職を探していた労働者は半数



現在、完全リモートワークに就くのは難しくなっているとささやかれているにもかかわらず、求職者は依然として完全リモートワークを求めている。フレクサの調査によると、完全リモートワークの求人検索は、ことし1月から3月のあいだに11%増加した。

「誰もが知る有名企業の大ニュースが目につくが、実際には、知名度こそ低いものの本当に先進的で、非常に柔軟でさまざまな働き方を用意している企業が何十万も存在している」とカーター氏は語った。

Z世代は在宅勤務をもっとも望んでいないグループ



Z世代は、完全在宅勤務を望み、何よりも柔軟性を重視する世代として表現されることが多い。しかし、米国人材派遣協会(American Staffing Association)からの委託を受けて市場調査会社のザ・ハリスポール(The Harris Poll)がオンラインで実施した、情報提供サイトのワークフォースモニター(Workforce Monitor)の最新の調査によると、Z世代のうち完全在宅勤務を希望しているのはわずか4分の1(26%)である。

また、ベビーブーマー世代が全員、出社を望んでいるというのも誤解だ。かなりの割合(37%)が完全リモートワークを望んでいる。ミレニアル世代は31%、X世代は33%で、中間に位置している。

「Z世代は完全リモートワークを支持していると思われているかもしれないが、実際のところは違っていた」と、米国人材派遣協会のCEOであるリチャード・ワールクイスト氏は述べた。

「若い世代は、リモートワークが自分のキャリアの妨げになりそうだと感じていることがわかった。上の世代の労働者は、おそらく、これまでのキャリアのなかでメンターを得て、自分がメンターになり、職場のベストプラクティスを理解する機会があったので、もう出世階段のステップについてあまり考えない段階にあるのだろう」。

この調査では、アメリカ人の39%が、理想の勤務スケジュールはハイブリッドワークだと回答した。18歳未満の子どもがいる家庭ではより高く、46%がハイブリッドワークを望んでいると回答している。

自分は燃え尽き症候群だと回答した米国の労働者は43%で、上司に相談していないのはそのうちの47%



自分が燃え尽き症候群であるとどの程度感じるかは、スケジュールが柔軟かどうかと密接に関係している。1月に実施され、先週発表されたワークフォースモニターの調査によると、調査対象の成人2094人のうち、10人に4人以上が燃え尽き症候群に苦しんでいることがわかった。

世論調査会社のギャラップ(Gallup)が公表している関連データによると、労働者の17%が、燃え尽き症候群によりアクティブリー・ディスエンゲージド(actively disengaged、仕事が嫌いで周囲にも悪影響を与えている状態)になっている。

「これに当てはまる人は、友人、家族、同僚、そして時には上司に多くの愚痴をこぼしている」とワールクイスト氏は述べた。「彼らは意欲をまったく持とうとしない。このグループを、単に意欲を失っている状態にまで改善するチャンスはほとんどないが、それでも時間だけは費やしている」。

しかし、従業員とつながることは、画面越しではより困難になるため、リモートの従業員の燃え尽き症候群に対処するのはさらに難しくなる。

「リモートワーカーが燃え尽きてストレスを抱える一方で、彼らを呼び寄せる機会がないなら、オフィスに招いてストレスについて話し合い、どうしたらよいかを考えることはできない」とワールクイスト氏は語った。

[原文:The state of flexible work, by the numbers]

Cloey Callahan(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:坂本凪沙)