【訃報】DRAMの発明者ロバート・ヒース・デナード氏が91歳で亡くなる、ムーアの法則を補完する「スケーリング則」も考案
揮発性メモリ「DRAM」の発明者として知られるロバート・ヒース・デナード氏が2024年4月23日に亡くなりました。91歳でした。
Robert Dennard, father of DRAM, is deceased - also known for his foundational Dennard scaling theory | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/semiconductors/robert-dennard-father-of-dram-is-deceased-also-known-for-his-foundational-dennard-scaling-theory
https://www.nytimes.com/2024/05/16/technology/robert-dennard-dead.html
Robert Dennard | IBM
https://www.ibm.com/history/bob-dennard
デナード氏は1958年にカーネギー工科大学(現在のカーネギーメロン大学)で電気光学の博士号を取得し、研究者としてIBMに入社しました。IBMに入社した当初、デナード氏はメモリ開発ではなく、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOFEST)の設計および回路応用に関する研究を担当していました。
デナード氏は1964年に「高速かつ低消費電力なメモリ」の開発部門に配属されました。デナード氏らの開発チームは「6個のMOFESTを用いて1ビットのデータを格納するシステム」の開発に成功しましたが、そのシステムはデナード氏の理想と比べて設計が複雑で動作も遅かったとのこと。その後、デナード氏は「1個のトランジスタで1ビットのデータを保存する」というアイデアを思いつき、1966年にDRAMを発明。DRAMは瞬く間に市場に広がり、現在でもPCやスマートフォンに欠かせない技術となっています。
また、デナード氏は1974年に「スケーリング則」と呼ばれる法則も発表しました。スケーリング則は「MOFESTの寸法をk分の1にすると、遅延時間はk分の1、消費電力はk分の2乗分の1となる」という法則で、簡単に言えば「トランジスタが小さくなると、処理速度が向上し、消費電力は低下する」というものです。このスケーリング則は「半導体の集積密度は2年ごとに倍増する」とする経験則「ムーアの法則」を補完する理論的な裏付けのある法則として知られています。
デナード氏の功績は広く認められており、1988年にアメリカ国家技術賞、2009年にIEEE栄誉賞、2013年に京都賞、2019年にロバートN.ノイス賞を受賞するなど、数多くの賞を受賞しました。
なお、京都賞受賞に際して公開された以下のインタビュー映像では「高度に洗練された技術を活字だけから学習するのは不可能」「私は新しい技術を真っ先に取り入れるタイプではない」「スマートフォンやタブレットは持っておらず、携帯電話は電話をかけるときしか使わない」といった興味深い内容が語られています。
第29回京都賞受賞者からのメッセージ(ロバート・ヒース・デナード博士) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=uNePKFEucps