食料品の価格が地球温暖化のせいで年間3.2%も上昇してしまう可能性があると判明
近年の日本は物価が上昇するインフレーション(インフレ)の状態にあると日銀総裁が述べており、外食やファストフードのメニュー、スーパーの食料品などの価格変動でインフレを実感している人も多いはず。ドイツの研究チームが行った新たな研究では、「地球温暖化の影響で食料品価格が年間3.2%上昇する可能性がある」という深刻な結果が明らかになりました。
Global warming and heat extremes to enhance inflationary pressures | Communications Earth & Environment
By 2035, global warming could add up to 3.2 percentage points to food inflation every year: Study - The Economic Times
https://economictimes.indiatimes.com/news/india/by-2035-global-warming-could-add-up-to-3-2-percentage-points-to-food-inflation-every-year-study/articleshow/108687439.cms
Higher temperatures mean higher food and other prices. A new study links climate shocks to inflation | AP News
https://apnews.com/article/inflation-climate-change-food-prices-heat-6e5297e12868aaf797529bb755268818
Food prices will climb everywhere as temperatures rise due to climate change - new research
https://theconversation.com/food-prices-will-climb-everywhere-as-temperatures-rise-due-to-climate-change-new-research-226345
気候変動は人間社会のさまざまな面に影響を及ぼしており、異常気象や熱波は農業の生産性を低下させることが知られています。しかし、気候変動が食料品を含む物価のインフレにどのような影響を及ぼすのかは、まだ十分に研究されていないとのこと。
そこで、ドイツにあるポツダム気候影響研究所や欧州中央銀行の研究チームは、気候変動とインフレの関連についての研究を行いました。研究チームは121カ国における1991年〜2020年の気象データと、さまざまな商品やサービスの月次物価指数データを分析し、気候予測モデルと組み合わせて2030〜2060年のインフレ率に気候変動が及ぼす影響を推定しました。
研究の結果、食料品価格のインフレ率は気候変動により、2035年までに年間0.9〜3.2%上昇する可能性があることがわかりました。一方、気候変動による全体的なインフレ率の上昇は0.3〜1.2%にとどまるため、人々は世帯収入のより多い割合を食料品の購入に費やす必要に迫られます。
論文の筆頭著者でポツダム気候影響研究所の気候科学者であるマックス・コッツ氏は、「気候変動の物理的な影響は、インフレに持続的な影響を与えるでしょう。これは、気候変動が人間の福祉や経済的福祉を損なう可能性があるもうひとつの例だと考えています」とコメントしました。
気候変動による食料品価格のインフレは世界中で感じられるはずですが、特にグローバルサウスと呼ばれる南半球の発展途上国が強い影響を受けるとのこと。イギリス・サウサンプトン大学の公衆衛生学者であるジェシカ・ボクソール氏らは、「アフリカは気候変動にほとんど関与していないにもかかわらず、最も大きい影響を受けるでしょう」と指摘しています。
ボクソール氏らがガーナの北部の農村地帯で行った調査では、話を聞いた約400人のほとんどが「過去1年間である程度の食糧不安を経験した」と話しており、約99%は気候変動が原因だと回答したとのこと。さらに、62%は中程度または重度の食糧不安を経験し、26%は丸一日食べ物がない状態を経験していたそうです。
気候変動が食糧不足に及ぼす影響は、2つの問題に分類できるとボクソール氏らは指摘。1つ目が「気候変動そのものによる作物の収量低下や物流の困難により、食料品の入手が難しくなる」というもので、2つ目が「気候変動によるインフレ率の上昇で購買能力が低下する」というものです。
ボクソール氏らは、「今回の研究を行った研究者らは、温室効果ガスの排出を削減することで世界経済への影響を軽減できると提案しています。また、経済を多様化させることで、食料と収入の両方を農業に依存している地域社会をある程度保護できるだろうと提言しています。政府の介入はまた、インフレや食料へのアクセス低下によって貧困の連鎖に陥りやすい人々のため、経済的保護と栄養補助を保証することができます」と述べました。
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