英Stability AIは3月23日(現地時間)、Emad Mostaque氏がCEO(最高経営責任者)および取締役を辞任したことを発表した。新たなCEOが指名されるまでの間、COO(最高執行責任者)のShan Shan Wong氏とCTO(最高技術責任者)のChristian Laforte氏が共同で暫定CEOを務める。

Mostaque氏は2020年に英国で、「AI技術の民主化」を目標にStability AIを創業した。同社は2022年8月にテキストから画像を生成するAIモデル「Stable Diffusion」をリリースした。多様なスタイルやコンテンツの画像を生成する能力を持ち、その技術をオープンソースで提供したことで注目を集め、Stability AIは2022年10月に10億ドルの評価額で約1億ドルの資金を調達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。

Mostaque氏は辞任の理由を「非中央集権型AIを追求するため(to pursue decentralized AI)」としている。Xへの一連の投稿の中で、OpenAIやAnthropicのような生成AI業界の新興トップ企業を巡る近年の動きに触れ、「中央集権的なAIに、さらに中央集権的なAIで打ち勝つつもりはない」と述べている。19日にはMicrosoftがMustafa Suleyman氏をAI製品研究の責任者にすると発表した。同氏はGoogle DeepMindの共同創業者の1人であり、2022年にInflection AIを興してCEOを務めてきた。MicrosoftはInflection AIと提携し、Suleyman氏とともにInflection AIの主要な研究者がMicrosoftに加わると報じられている。

IT大手の間で生成AI開発競争が激化する中、Stable Diffusionの運営に対する投資家からの圧力が強まり、昨年末には売却の可能性が報じられていた。

Mostaque氏は「AIの重要性が増すにつれて、より透明で分散したガバナンスを持つ必要がある。難しい問題だが、解決可能だと考えている」と述べている。市場は巨大であり、オープンモデルはエッジや全ての規制産業に必要とされる。同氏はStable AIの重要な意思決定に大きな影響力を持つ株式を保有し、そして取締役会がStability AIの運営や方向性を統括している。「AI分野における権力の集中は悪影響を及ぼす」という自身の考えに基づいて、より公正な状況を築き、非中央集権型AIを追求するために、CEOと取締役の両職から辞任することを決めたと述べている。