タイヤの前にある「謎のベロ」何のため!? 存在すら「気付いてなかった」声も! めちゃ“地味”だけど「重要」なパーツの目的とは
まさに「縁の下の力持ち」!
昨今のクルマには、フロントタイヤの前に、黒いベロのような部品がついていることがあります。
フロントバンパーの下をのぞくと「チラッ」とみえるこの黒いベロ、一体何のためにあるのでしょうか。
実はこれ、燃費を改善してくれるアイテムなのです。
あまり気付かれることもない地味なパーツで、そもそも「見たことがない」「気付かなかった」という人も少なくないかもしれません。
この黒いベロの名前は「タイヤディフレクター」。「タイヤスパッツ」や、「タイヤストレーキ」とよばれることもあります。
タイヤディフレクターは、フロントタイヤの前方に垂れ下がるようにつけられており、走行中にタイヤ前面にあたる風を整流するのが役目。
タイヤ接地面よりも前側にかかる圧力の上昇を抑え、空気抵抗を減らし、それによって燃費を改善しようとするものです。
2000年頃から欧州車で採用が始まったタイヤディフレクターは、国産車でも2010年頃から多くのクルマで採用されています。
なかにはフロントタイヤ側だけでなく、リアタイヤ側にも採用されるクルマが多くあります。
走行中、正面からクルマにあたった空気はボディに沿って後方へ流れてきますが、同じくクルマの床下にも入り込んでいきます。
タイヤ前面にあたった空気は、ホイールハウス内へと押し広げられ、またタイヤが回転していることで、前側の圧力は高く、後ろ側の圧力は低くなります。
一般的に、圧力は高い方から低い方へと力を発生しますので、クルマを押し戻す力を発生させてしまい、空気抵抗となります。
空気抵抗が増えると、クルマが進みにくくなるため余計にアクセルペダルを踏み込んで燃費が悪化したり、アクセルペダルを踏んでも加速せず最高速度が低下する、といったことも起こります。
特にSUVのように地上高が高いクルマは、クルマの下側へ入り込む空気が多く、タイヤ周りで大きな空気抵抗が発生してしまうため、大きめのタイヤディフレクターが付いています。
タイヤ周りの空気の流れを整えることは、燃費低減のためには非常に重要なのです。
同様の目的で空気の流れを整えるアイテムとしては、タイヤディフレクターのほかにも、エアカーテンを用いる手法が取り入れられています。
エアカーテンとは、フロントバンパーの左右両端に設けられたエアインテークから取り込んだ空気を利用して、タイヤ周辺の気流の乱れを抑える手法のこと。
バンパー内を通過した空気を、フロントタイヤの側面(ホイールディスクがある面)に流れるように吹き出させることで、「空気のカーテン」をつくり、気流を整えて空気抵抗を抑えようとするものです。
なかには、フロントタイヤだけでなくリアタイヤでもエアカーテンの考え方をとりいれているクルマもあります。
空気の流れを整えることは、燃費を向上させるだけでなく、走行安定性も向上させてくれます。
こちらも欧州車で採用が始まった手法ですが、現在は国産車でも、ほぼすべての車種で採用されています。
メリットの大きい手法ですので、今後さらに進化をしながら採用が進むことが考えられます。
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環境負荷低減が厳しく求められる現代のクルマにおいて、燃費改善は至上命題。
空気抵抗は速度の2乗に比例するので、高速走行になるほど燃費低減効果が期待できます。
今後広がっていくであろうBEV(バッテリーEV:電気自動車)社会においても、燃費(電費)向上は重要視されています。
さらなる改善に向け、こうした空力性能向上アイテムは今後も登場すると思われます。