大谷妻「真美子さん」の扱いが日米でこうも違う訳
(写真:YONHAP NEWS/アフロ)
大谷翔平選手が夫婦で韓国に向かう飛行機に乗ってから数日経つ今も、日本のメディアやSNSは、妻と判明した真美子さんのニュースで持ちきりだ。一方、飛行機の前で夫妻が並んだ写真が出たときには騒然となったアメリカは、以後、かなり落ち着いている。
そもそもアメリカが騒然となった理由は、公表までの経緯が異例だったからだ。メジャーリーグでは、妻や、結婚前でも真剣に交際している女性は、しばしば選手の遠征に同行したり、イベントに出てきたりするのが通常だ。選手は家族や恋人との写真を自分でSNSに投稿したりもするので、婚約、結婚という大きなステップに至る前に、チームメートやファンは、その特別な人の存在を知っている。
今回の韓国遠征にも、昨年ケガでまったく出場できなかったギャビン・ラックスが女性を連れて来ていて、「休んでいる間に恋人ができていたのだな」とわかった。もしこの女性が運命の人であり、この先、婚約、結婚となったなら、チームメートも、彼らの奥さんたちも、そしてファンも、祝福するだろう。
アメリカでは交際を隠すことはしない
大谷選手の場合、真美子さんと交際期間中にその存在を隠し、チームメートですら、彼に婚約者はおろか恋人がいることも知らなかった。そこへいきなりインスタグラムで発表となったから、度肝を抜かれたのである。しかし、遠征先の韓国には堂々と夫婦として現れ、奥様も観客席で夫を応援するというアメリカ人にとって普通と思われる行動を取った。この結果、アメリカの野球ファンの間で、このネタは終わりとなった。
カップル社会の欧米では、配偶者や恋人を“隠す”ということをしない。メジャーリーグの選手の場合はとくに、ここまで来られたのは、才能や本人の努力はもちろんのこと、支えてくれた両親や妻のおかげだということを見せて感謝を示そうとする。マイナーリーグの選手がメジャーデビューするときには、両親、友人が必ず観客席に来て、テレビ中継のカメラはその人たちの喜び、誇りの表情を追い、視聴者はそれを見て一緒に感動する。
スタンドで試合を観戦する真美子さん(写真:Mydaily/アフロ)
だが、マスコミやファンが結婚相手や交際相手についていちいち詮索することは、ほとんどない。大谷選手の場合は本人が特大級のスーパースターであるうえ、前述したように異例なプロセスだったから、奥様は元バスケットボール選手だとの情報が出回ったが、ほかのドジャースの選手が結婚や婚約をしても、顔と名前はみんなが知るところになるものの、詮索はそれで終わりだ。
もっともこれは、相手が一般人の場合であって、セレブ同士のカップルであれば、話は別である。今年、スーパーボウルの視聴率が史上最高記録を達成したことに、トラヴィス・ケルシーと熱愛中のテイラー・スウィフトが応援に来ていたことが関係しているのは明らか。世界のトップミュージシャンと付き合ったせいで、アメフト界のスター選手であるケルシーは、以前とは別のレベルで注目されることになったのだ。NFLの元スター選手トム・ブレイディとスーパーモデルのジゼル・ブンチェンも、離婚するまでパワーカップルの代表格だった。
セレブ同士だとパパラッチ攻勢に遭う
ハリウッドでも、事情は同じだ。ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーがカップルだった頃のパパラッチ攻勢は、尋常でなかった。当時、ピットの友人マット・デイモンは、「ふたりともがセレブだと好奇心が2倍になってヒートアップする」と語っている。
事実、ピットは、ここ1年ほどジュエリー業界で仕事をしているという34歳の女性と付き合っているが、ジョリーや、アメリカで絶大な人気を誇るジェニファー・アニストンとカップルだった頃のようには騒がれていない。
ジェニファー・ロペスとベン・アフレックも、最初に婚約した20年前、さんざんゴシップネタにされた。彼らの場合は、揃って有名人であることに加え、高額なプレゼントを渡し合うなどこれでもかというほど派手なライフスタイルを見せつけて、世間の関心(一部からは嫌悪感も)を買ったせいもある。
20年後に再び復縁し、ついに結婚にたどりついてからも、いちゃいちゃぶりを見せつけるのは変わらず。さらに最近はロペスがあえて自分たちの愛を新作アルバムや自腹で製作したドキュメンタリー映画で語るなど、ネタを提供し続けている。
皮肉にも、一般人と結婚したセレブの代表には、アフレックの親友であるデイモンがいる。妻ルチアナは、出会ったとき、マイアミでバーテンダーをしていたシングルマザーだった。デイモンはレッドカーペットなど公の場にいつも妻を同伴するが、ウィノナ・ライダーと交際していた頃のようには騒がれない。彼自身の言葉通り、セレブが自分一人だけだからだろう。
ライダーといえば、クリスチャン・ベールの妻は、かつてライダーのパーソナルアシスタントをしていた女性だ。結婚して24年目を迎えたこの夫妻も、プライバシーを守ってきている。
カップルでレッドカーペットに登場
ほかには、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ヴィンス・ヴォーンらが一般人と結婚した。彼らは時々、レッドカーペットにもカップルとして登場する。
一方、ジェニファー・ローレンスの画商の夫は、まだレッドカーペットデビューをしていない。しかし、ローレンスはインタビューで夫について語っているし、ニューヨークの街を堂々と一緒に歩く姿はたびたび目撃されていて、隠しているわけではない。おそらく夫本人がスポットライトを浴びることに興味がないのだろう。
ライアン・ゴズリングとエヴァ・メンデスも同様で、一緒に公の場には出ない。ゴズリングとメンデスの出会いは、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』での共演。メンデスが最後に映画に出たのは、長女が生まれた2014年に公開されたゴズリングの監督デビュー作『ロスト・リバー』だ。女優業のほか、モデルとしてレブロンなどの広告にも出演し、「最もホットな女性」リストに何度もランク入りした彼女は、現在、家庭に専念している様子だ。
プライバシーを守りたがるふたりは長いこと私生活について語らなかったが、近年、ゴズリングは、受賞スピーチでメンデスを名指しして感謝したり、『バービー』に出演を決めた背景に娘たちのことがあったと明かしたりしている。彼もまた、妻を隠してはいないのだ。
ゴズリングが助演男優部門に候補入りした今年のアカデミー賞授賞式にも、メンデスは姿を見せなかった。だが、ゴズリングが「I’m Just Ken」のパフォーマンスをした後、彼女はインスタグラムに「あなたはケンをオスカーまで導いたわ。もう帰ってきてね。子供たちを寝かしつけないと」と、キスマークと共に投稿し、夫への愛を世界に表明している。
隠しもせず、詮索もせず
今年、この部門は前評判から、『オッペンハイマー』のロバート・ダウニー・Jr.の受賞で決まりだった。それもあって、わざわざ今年を選んで行かなくてもいいと、この夫妻は思ったのかもしれない。すでに3度候補入りしているゴズリングがついに最有力候補になるときがきたら、メンデスもようやく妻として会場まで足を運ぶのではないか。
もちろん、世間はゴズリングがこの女性と幸せな家庭を築いていると知っているので、どっちであっても別に構わない。とはいっても、キャリアで最高の瞬間を、愛するふたりがどう分かち合うのかを目撃できるなら、それはそれで素敵だ。どうなるかは、本人たちにお任せである。
(猿渡 由紀 : L.A.在住映画ジャーナリスト)