【闘病】タバコは吸わないのになぜ「肺がん」に? 症状も全くなかった…

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肺腺がんは肺がんの中で最も多いがんであると同時に、初期は無症状で発見しにくいがんでもあります。初期で発見すれば根治も十分可能で、再発・転移のリスクも抑えられます。そこで、初期の肺腺がんを健診で発見し、もうすぐ術後6年目(取材時)に入るH・Sさん(仮称)から話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年4月取材。

体験者プロフィール(仮称):
H・S

1960年代生まれの女性。50代の頃に5年ぶりの健康診断を受けたところ、レントゲンで肺に影が映っており、大学病院で精密検査を行い、肺腺がんとの告知を受けた。胸腔鏡手術を受け、3ヶ月毎の定期的な検査を行いながら、まもなく術後6年が経過する(取材時)。

記事監修医師:
稲尾 崇(神鋼記念病院呼吸器内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

タバコも吸わないのに」戸惑いと不安が押し寄せていた

編集部

最初に、病気が判明した経緯を聞かせてください。

H・Sさん

5年ほど健康診断は受けていませんでしたが、「還暦も近いからやっておこうかな」という軽い気持ちでかかりつけ医の健康診断を受けたところ、レントゲンで肺に影が見られるから専門病院を受診した方がいいと指摘され、紹介状を持って大学病院の呼吸器内科を受診しました。そこでもレントゲンとCTを撮って、肺に所見があると指摘され、気管支内視鏡のために1泊2日の検査入院をしました。そして、検査の結果「肺腺がん」という告知を受けたという流れです。

編集部

肺腺がんが判明するまで、病気などはなかったのでしょうか?

H・Sさん

身体が丈夫なことが取り柄だったので、病気とは無縁でした。検査で肺に影があると言われた時も、自覚症状は全くありませんでした。肺の影も何かが映り込んだのだろうと気楽に考えていたのですが、CTではしっかりと肺の下の方に2cmくらいの影が映っていました。それから局所麻酔で最悪な気分になりながら検査を受けて、1泊2日の検査後に医師からあっさりと「まず間違いなく悪性ですね」と言われて、呼吸器外科に移った感じです。

編集部

いきなりのことでかなり動揺されたのではないでしょうか?

H・Sさん

告知された時は、「え? 私たばこは吸わないのに?」と信じられない想いでした。次の日に外科に行った時は、内科との情報連携も上手くいっておらず、ますます不安が募ったのを覚えています。最終的には「切ってみなければはっきりしたことがわからない」ということで、肺腺がんの疑いで検査を進めることになりました。

編集部

手術までの経過はどのようなものだったのでしょうか?

H・Sさん

術前検査、PET-CTを受けて、入院手術の日程が決まりました。4月7日に入院、4月11日に胸腔鏡手術で右肺下葉の切除とリンパ節郭清を行いました。手術後の3日間はICUに入り、水が飲めて歩行ができるようになれば一般病棟に戻れるということでした。そして、手術から2週間後に退院、1ヶ月後に病理結果を聞いたところ、初期の肺腺がんとのことでした。

編集部

結果や治療方針などの説明はどのようなものだったのでしょうか?

H・Sさん

ステージはIAのリンパ節浸潤なし、転移なし、大きさは1.8cm、充実部1.4cm、表面突出なし。抗がん剤治療なしで経過観察を5年間という説明でした。それからは3ヶ月毎に採血、レントゲン、造影CT・MRIと繰り返しがあって、5年目で一応の「治癒」という状態になりました。これからの5年間は年に2回CTとMRIの撮影を行うことになっています。

不安を誤魔化すために何でも試そうとしていた

編集部

病気が判明してからの生活はどのように変わりましたか?

H・Sさん

とにかくタンパク質を食べること、それと糖質を控えることに躍起になっていました。当時は丁度、糖質制限というのが流行り出した頃で、プロテインも試していました。今思えば、不安が強くて「何かしなきゃ」という気持ちで判断力も情報の取捨選択もおかしくなっていたのだと思います。

編集部

体調や日常生活、仕事面ではどのような変化がありましたか?

H・Sさん

術後の後遺症で炎症があり、片方の肺が肥厚(ひこう)して癒着しているので、肺の機能がほとんどありません。そのせいで息苦しさを感じることも多く、階段を登ると動悸と息苦しさで歩くのが辛いので、エレベーターやエスカレーターを使っています。それでも、調子の良い時は少しずつ慣らすために、階段を使ったり、週に1回ジムに行ったりすることで、体重を戻して筋力を落とさないようにしています。息苦しいと感じるときは、富士山の8合目に住んでいると思うようにしています。仕事面でいうと、普段は塾の講師をしていて、業務内容を1日1人の個別授業に変更してもらい、業務時間も自由が利くように提案して理解してもらいました。

編集部

ほかに変化を感じることはありますか?

H・Sさん

心臓も切除した肺の方に引っ張られて半回転しているせいか、脈が速くなり、1分間に100~110回の頻脈です。さらに、胸腔鏡手術の影響で肋間神経痛が時々起こるので、温めるために貼るカイロを下着の上から貼っています。ほかにも、精神科から抗不安薬を処方してもらって、お守りとして持っています。

早めの検査、医師と良い関係を結ぶことが大切

編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

H・Sさん

家族や塾の生徒たち、私と同じように病気を経験した友人です。そして、私はクリスチャンなので、神さまと教会の人達にも助けられました。

編集部

病気になる前の自分に声を掛けるならどんなことを伝えたいですか?

H・Sさん

自分の身体を過信せず、「ちゃんと健康診断や定期健診には行くように」と伝えたいです。

編集部

H・Sさんがこの病気をされた経験から、医療従事者に伝えたいことや望むことはありますか?

H・Sさん

実際に告知を受けると、平静を保つことは難しいです。逆に平然としている人の方がよりショックを受けている時もあるので、告知をする先生にはそのことをわかっていてほしいです。それから、大体の先生は最悪の事態を想定して説明してくれますが、希望を持たせる言葉や患者さんが安心できることも言ってほしいと思いました。「最高のスタッフを揃えて手術に臨みますから安心してください」など、その言葉だけで患者さんは安心できます。

編集部

最後にこの記事を読んだ読者の方にメッセージをお願いします。

H・Sさん

健康診断は毎年きちんと受けた方が良いということ、そして、主治医と良い関係を結ぶことです。不安なことを何でも相談できて、信頼できる先生を見つけることが大切だと思います。自分の命と心を守るためにも、毎年健診を受けること、なにか「おかしいな?」と思ったら病院へ行ってほしいです。医療はどんどん進んでいますが、早期発見に勝るものはありません。どこも痛くもなんともないと過信せず、毎年健診を受けることがその1年を安心して過ごすお守りだと思ってください。そして、もしご自分やご家族が万が一罹患しても、誰のせいでもありません。辛さやしんどさを受け止めて、家族みんなで一緒に乗り越えていってほしいです。

編集部まとめ

H・Sさんは今年で術後6年となり、後遺症はあるものの日々を懸命に過ごされています。肺腺がんはたばこを吸わない人でも発症するがんで、初期症状がないのが特徴です。進行すれば胸痛や咳、痰などで気付けますが、早期発見こそ再発・転移を防ぐためにも重要です。H・Sさんが話されたように、健康だからと過信することなく、毎年の定期健診を受けることで、異常を早期発見することができます。早期発見・早期治療こそ、あなたとご家族の命と生活を守る大事な手段です。

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