2024年3月のダイヤ改正で登場する「スーパーつがる」は、久々の「スーパー」を冠した特急列車です。国鉄の分割・民営化当初は多数設定されていた「スーパー」な列車。どのような変遷をたどったのでしょうか。

まさかの「スーパー」復活

 2024年3月のダイヤ改正で、JR東日本の秋田〜青森間で運行されている特急「つがる」のうち1往復が、停車駅を5駅削減して速達化のうえ、列車名も「スーパーつがる」に変更されます。

 JR発足当初は多く見られた「スーパー」を冠した列車ですが、時代とともに徐々に減少しており、2024年1月現在はJRでは西日本の「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」、貨物の「スーパーレールカーゴ」、私鉄・第三セクター鉄道では小田急電鉄の「スーパーはこね」、智頭急行の「スーパーはくと」、一畑電車の「スーパーライナー」が残るのみと、まさに風前の灯火です。

「スーパー」な列車はどのように生まれ、そしてなぜ衰退していったのでしょうか。


特急「スーパーつがる」に使われる予定のE751系電車(左)。従来の「つがる」よりも停車駅が少なくなり、速達性をアピールするために命名(児山 計撮影)。

●「スーパー」で新生JRをアピール

「スーパー」という言葉には「これまでのものよりすごい」という意味合いがありますが、列車における「スーパー」が登場した背景には、国鉄時代の特急列車事情があります。

 国鉄時代は公共性の観点から、全国均一の旅客サービスを行う必要がありました。そのため、地域で望まれるきめ細かなサービスよりも、なるべく利用客に不公平感がない平等で標準的なサービスを全国に展開します。

 しかし、国鉄が民営化しJRになると、そういった“配慮”は優先事項ではなくなります。それよりも当時台頭してきた高速バスや私鉄特急などと同等以上の高品質なサービスを提供する必要に迫られ、JR各社はその地域で望まれるサービスや性能を備えた新型車両を投入しました。

 当然これらの車両は速度や設備が国鉄時代よりも優れたものとなるため、列車名に「スーパー」をつけることで新生JRの新世代車両をアピールしたのです。

 つまりJRにおける「スーパー」は、停車駅が少なく速達性が高い、従来車両よりもサービスレベルが高いといった「国鉄特急の上位車両」という認識で命名されました。1988(昭和63)年に登場したJR九州の「スーパー有明」をきっかけに、1989(平成元)年の「スーパーひたち」、1994(平成6)年の「スーパーあずさ」「スーパー北斗」などが、国鉄型の車両を使用した従来特急の上位列車として設定されました。

国鉄型車両が淘汰されると…

 古くなった鉄道車両は基本的に、1年〜数年をかけて置き換えられていきます。そのため過渡期なら新型車両に「スーパー」をつけてアピールする戦略は有効ですが、新型車両に統一されればその役割は薄れます。

 一例をあげると、JR北海道の「スーパー北斗」と「北斗」は停車駅に大きな差はなく、キハ281系気動車を使用した車両を「スーパー北斗」、従来の国鉄型キハ183系気動車を使用した「北斗」と区別していました。そのためキハ183系の置き換えが完了して全車キハ281系になると、「スーパー」の意味はなくなってしまいました。

 JR北海道は2020年、「スーパー北斗」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」などから「スーパー」を外しました。

 また別の例としては、「スーパー」をつけると列車名が長くなって覚えにくいという弊害も生まれました。たとえばJR西日本では、「雷鳥」の上位速達列車として「スーパー雷鳥」が登場したあとに、設備をグレードアップした新型の681系電車「サンダーバード」が投入された結果、最速達列車は「スーパーサンダーバード」と長い名前になってしまったため、後に「サンダーバード」と改称されました。


新車の投入が進み、キハ183系の「北斗」が廃止されると「スーパー」の意味がなくなってしまったキハ281系「スーパー北斗」(2013年6月、児山 計撮影)。

 JR各社では国鉄型車両の淘汰が進むと、列車名から「スーパー」が徐々に外れていくことになりました。速達型と主要駅停車型の2種類の特急が設定されている路線でも、常磐線の「ひたち」「ときわ」、中央本線の「あずさ」「かいじ」のように異なる列車名をつけるのが現代の主流となっています。

 そのような流れがあったからこそ、今度のダイヤ改正で「スーパーつがる」という名称が誕生したことに鉄道ファンは驚きを隠せませんでした。かつては昼行、夜行含めて数多くの特急列車が設定されていた奥羽本線の秋田〜青森間も、現在は3往復の特急が走るのみとなってしまいましたが、そのような中で「スーパーつがる」が、文字通りスーパーな活躍をしてくれることを期待したいところです。