記事のポイント

ソーシャルメディアの環境の細分化が口コミの意味を変え、ブランドのオンラインでの存在を確立することが難しくなっている。

ワークフローの調整や承認プロセスの変更を通じて、コンテンツ制作からリリースまでのスピードを向上させることが求められる。

新進気鋭のクリエイターを早く見つけ、彼らが有名になる前に協力することが、コスト削減や効果的な連携につながる。


若いオーディエンスとの関係を維持するために、ブランドをカルチャーの一部にしたいと考えているマーケターやエージェンシーの幹部にとって、トレンドを見極めるとともに、パートナーとなる新進気鋭の才能を見つけることは以前からとても重要だった。

ここ数カ月、インフルエンサーマーケティングの加速度的な成長、コンテンツ消費習慣の変化、ソーシャルメディア環境の継続的な細分化により、その重要性は増すばかりだ。

ブランドのコンテンツをオンラインで目立たせる方法を決めることが、これほど難しくなったことはない。ソーシャルメディアの細分化は、結局のところ、口コミの意味を変えることになった部分的な原因となっている

承認やプロセスの在り方を根本的に変える必要性



エージェンシーの幹部によると、この領域で勝負したいブランドは、ワークフローを調整しなければならなくなっているという。彼らはクライアントと協力して承認プロセスを変更し、コンテンツの候補選定から実行までのスピードを大幅に速め、トレンドサイクル内にコンテンツをリリースできるようにしている。

インフルエンサーマーケティングショップのフォール(Fohr)でシニアクリエイティブストラテジストを務めるソフィー・ウッド氏は、「ブランドは、クリエイターに素早くブリーフィングし、1週間でコンテンツを回すことができるワークフローを持つ必要がある」と言い、「当社ではクライアントと協力して、そのためのワークフローを構築している」と付け加える。「ソーシャルメディアでは、関連性がとても重要だ。トレンドは1〜2週間しか続かないため、ブランドは迅速に仕事をする必要がある。(中略)以前は、インフルエンサーのコンテンツを回すのに8週間かかっていたが、いまはブリーフィングして5日ほどで回せるようになっている」。

ニューヨークを拠点とするマザー(Mother)は、承認者とプロセスが異なる別々のカルチャー識別ワークストリームを持つことについてクライアントと話してきた、と同社の戦略ディレクターであるハンナ・タボール氏が説明する。「われわれは電子メールでアイデアを送り、ひとりが発言するのと組織全体が発言するのとを使い分けている。アイデアを通すためには、承認やプロセスの在り方を根本的に変える必要がある」と同氏は言う。

一方、「マーケターは、彼らが売れっ子になる前にその才能と戦略的に提携できるよう、次に誰が来るかを常に把握しておきたいと考えている。われわれがしばしば直面するのは、これを正確に予測できるようにすることだ」と話すのは、リーチ・エージェンシー(Reach Agency)の最高経営責任者(CEO)で共同創業者のゲイブ・ゴードン氏だ。「その結果、当社では専門のクリエイターチームを設け、クライアントのために日々この問題を解決している」。

ブランドは、より速く動くだけでなく、自分たちのブランドがオンライン上でどのように語られるかをあまりコントロールできないことにもっと慣れなければならない。タボール氏は、「カルチャーに関する会話はそれ自体が生命を持つ。あまりコントロールしすぎると、人々はそれと関わりたがらなくなる。プロセスの変化と同じくらい、考え方の変化が必要だ」と話す。

適切なタイミングで新進気鋭のクリエイターと仕事をすることが重要



各ブランドやエージェンシーによって異なるプロセスや考え方の転換はさておき、マーケターたちはエージェンシーに対し、自分たちのブランドにふさわしい新進気鋭のインフルエンサータレントを定期的に把握しておくよう求めている。クリエイティブショップであるミスチーフ・アット・ノー・フィックスト・アドレス(Mischief @ No Fixed address)のパートナー兼エグゼクティブクリエイティブディレクター、ビアンカ・ギマラエス氏は、「新しいクリエイターの才能は常に出現しているため、ブランドにとって誰と手を組むべきかを判断するのは難しい」と述べる。「ナノ、マイクロ、ミッド、ラージといった規模は関係ない。重要なのは、クリエイターのブランドに対する愛と、フォロワー数に対してフォロワーのエンゲージメントの度合いがどうかということだ」。

予算が少ないブランドにとっては特に、コストを抑えられる可能性がある新進気鋭の人材を見つけ、契約することが急務となっている。とりわけ、予算が切り詰められてきた、ここ数カ月はそう言える。

ザ・マーケティングアーム(The Marketing Arm)のタレント・IP(知的財産)調達部門であるプラチナムライエンターテイメント(Platinum Rye Entertainment)のセレブリティおよびインフルエンサー担当シニアバイスプレジデント、メアリー・セムリング氏は、「新進のタレントは、確かに既存のスターと仕事をするよりも費用対効果が高い。だから、予算が少ないブランドとの仕事では、適した選択肢になることもある」と語る。「ブランドはまた、新進気鋭のタレントとの契約において、制作のためのより多くの日数、より多くのPR時間、より多くのソーシャル投稿など、より多くの利益を得る傾向がある」。

重要なのは、新進気鋭のクリエイターと仕事をすることで単にコストを削減するだけでなく、適切なタイミングで彼らを見つけることだ。

「ブランドにとって、適切なクリエイターをより早く見つけることが大切だ。その人物がクリエイターとして地位を確立して、多くのブランドと仕事をし、エージェンシーと契約すると、価格が上がってしまうからだ」と、クリエイターのためのウィキペディアとして自社サービスを売り込んでいるメディア企業、フェイマスバースデーズ(Famous Birthdays)のCEOを務めるエバン・ブリットン氏は述べる。

フェイマスバースデーズは近年、ブランドやエージェンシーが同社のデータを使って、いまもっとも勢いのあるクリエイターを見極める機能を追加した。「彼らがブレイクしている時こそ、本当に効率的な方法で彼らと一緒にスケールアップできる時なのだ」。

[原文:Marketing Briefing: How brands and agencies are speeding up their pursuit of influencer trends]

Kristina Monllos(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)