マーケターに使われている AIテクノロジー は?118人に聞いた「AIへの投資と活用法」
はじめに
Glossy+リサーチは、2022年11月、マーケターにとってのAIの用途を詳しく調査した新興テクノロジーシリーズからの記事を掲載した。この記事の掲載直後にOpenAIのChatGPTがリリースされ、それによりAIに関する議論は劇的に変化し、生成AIへのパラダイムシフトを引き起した。ChatGPTの一般公開により、高度なコンピューター技術の経験を持たない人も、生成AIの可能性を直接理解しながらAIテクノロジーを試したり活用したりできるようになった。
普通の人々の意識の中でAIが一般的になりつつある中、マーケターはツールキットの一選択肢としてAIに注目し始めている。Glossy+リサーチの調査結果を2022年と2023年で比較してみると、特に、マーケターによる、機械学習と人の言語学にフォーカスしたAI分野である自然言語処理(NLP)とAIの導入率は12パーセントポイント増加している。2022年のグラフでは、その調査時点でもっとも広く理解されているAI形式として、主にNLPについて言及されている点に留意してほしい。
ほかの業界筋からも同じような増加の報告が寄せられている。市場情報会社のインターナショナルデータコーポレーション(International Data Corporation)によると、AIへの投資は2023年の160億ドル(約2.3兆円)から2027年には1430億ドル(約20.8兆円)に増加すると予測されている。同様に、ビジネスリーダー2450人を対象としたトウィリオ(Twilio)の調査でも回答者の54%が2024年に「AIを活用したキャンペーン」への支出を増やす予定だと答えた。38%がマーケティング活動にチャットボットを使う予定だと回答し、28%がデータプライバシーについて懸念を表明した。また、デロイトデジタル(Deloitte Digital)の調査によると、マーケターの26%が生成AIをすでに使っており、さらに45%が2024年末までに使用する予定であることが判明している。
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生成AIの導入率が高まるにつれ、マーケターやブランドは主に生産性の向上のためにこの技術を使用している。APIプラットフォーム、パブナブ(PubNub)の最高技術責任者、スティーブン・ブルーム氏は、AIを使えば通常のタスクをもっと速く完了することができると述べている。「現在のAIツールはまさに生産性向上システムであり、我々が活用できるものだ。このようなシステムは、かつて掃除機がそうだったように、大飛躍だといえる。掃除機が登場する前には、カーペットをどうやって掃除していただろうか。カーペットを外に持ち出して、洗ってこすって乾燥させるのに何時間も費やしていた。だが、掃除機ならさっとかけるだけですむ。AIに関して、現在我々はそのレベルに達している」。
この1年間でAIに起こったあらゆる変化を考慮して、Glossyは前回のAIレポートで取り上げたテーマをあらためて検討し、現在の市場動向と流動的な業界の状況を考えることにした。
方法
Glossy+リサーチは、マーケターによるAIの現在の用途を具体的に考察するために、現時点と今後のAIへの投資と活用法について118人を対象にアンケートを実施した。また、AI業界の幹部との個別インタビューも実施した。
機能向上につれて、計算されたリスクを冒して生成AIを導入するマーケター
年々、AIテクノロジーにおけるもっとも一般的な用途はチャットボットとAIアシスタントになっている。マーケター回答者の大多数(2022年は78%、2023年は51%)が、自社が使用するNLPまたはAIテクノロジーのトップとしてチャットボットとAIアシスタントを挙げている。
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チャットボットがAI使用のトップとしてマーケターから好まれ続けている理由には、生成型AIの向上に伴い、チャットボットやAIアシスタントの多くがさらに高機能なツールや機能でアップグレードされていることがある。たとえば、最新世代のチャットボットには、さらに適応して人間のような応答を生成できる強化言語モデルが搭載されている。
特に、2022年11月にリリースされたOpenAIのChatGPTは、定期的に更新されているチャットボットのもっとも人気の高いものの1つである。ChatGPTは、9月、新しいマルチモーダル機能のおかげで、「見る」「聞く」「話す」新しい方法が追加され、数日後には、ChatGPTにウェブブラウジング機能が備わったことが発表された。10月にはテキストから画像へのジェネレーターであるDALL-E 3(ダールイー3)がChatGPT PlusとChatGPT Enterpriseに追加されて、ChatGPT内で直接画像を作成する新しい方法が提供されるようになった。
企業はこのような改善点に注目して、ChatGPTを自社の技術に組み込んでいる。たとえば、美容レビューアプリのスーパーグレート(Supergreat)はChatGPTを統合して自社のGRWM.aiチャットボットをデスクトップ上に作成、消費者に美容製品のおすすめや動画を提供している。
ほかの企業も独自のチャットボット対応テクノロジーを持っており、それらは同様にアップデートされている。
Googleは先日、PaLM 2 LLMのアップデートであるGemini(ジェミニ)のリリースを発表した。この新しい大規模言語モデルは、GoogleのチャットボットのBard(バード)に搭載されるようになる。ChatGPTと同様に、企業はBardを自社チャットボットに統合することができる。Bardはチャットボットに注力しているが、Bard関連のAPIにより、企業はチャットボットをEメールなどのGoogle Suite製品に接続して、概要やその他のテキスト結果を生成することもできる。
ChatGPTやほかのLLMのAPIを介して既存のAIテクノロジーやインターフェイスを接続することで、マーケターは自社のチャットボットの機能をレベルアップさせ、顧客へのサービスと顧客エンゲージメントを向上することができる。
マーケターから2番目に多く使われているAIテクノロジーの用途は、コピー生成である。これも生成AIに根ざした用途であり、回答者の43%がコピー生成タスクにAIを使用していると答えた。また、コピー生成には、ウェブサイトや製品リスト、Eメール用のコンテンツ作成から社内KPIレポートの作成まで幅広い用途がある。一例を挙げると、コンテンツ作成プロセスを加速するために、キャンペーンのマーケティングコピー作成に生成AIを使っているストリートウェアブランドのハットクラブ(Hat Club)の例がある。
ハットクラブのeコマース担当ディレクター、ジェイソン・エドワーズ氏は次のように述べている。「当社の最大の課題はマーケティングコピーを常にタイムリーに完成させることだった。驚いたのは、アテンティブAI(Attentive AI)のおかげで、我々が介入して完成させる前にかなり最終版に近い形でコピーが得られるという点だ」。
コピー生成にAIを使っているマーケターのうち、約4分の3(71%)がエディトリアルと消費者対応の目的でコピー生成を使っていると回答した。ただし、そのような目的でAIを使うことにはある程度のリスクが伴う。多くのマーケティング担当者や業界監視団体は、特にAIモデルのトレーニングに使われるデータに関する透明性が欠如している場合、一般向けの生成AIアウトプットにより生じかねない著作権問題を懸念している。
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OpenAIは著作権侵害に関する多くの訴訟に見舞われており、その中には、7月の集団訴訟もある。弁護士は、ChatGPTやほかの生成AIアプリケーションを動かす言語モデルのトレーニングに使うデータを収集する際、OpenAIが州と連邦政府の著作権法およびプライバシー法に違反したと主張している。
しかし、そのようなリスクにかかわらず、Adobeやシャッターストック(Shutterstock)の画像編集・生成ツールのように、多くの企業が一般向けの生成AIツールを提供しており、マーケターにより使用されている。特筆すべきなのは、Adobeとシャッターストック両社は企業クライアントに補償を提供している。これは、両社の生成AIツールを使った結果として、企業クライアントが著作権関連の申し立てや訴訟に直面した場合、両社がクライアントの費用を負担することを意味する。
現在、大部分のマーケターはEメールや製品コピーの作成などのリスクの低い用途にAIコピー生成を使用している。だが、注目度の高い用途に直接移行しているブランドもある。コカ・コーラは、3月、同社のクリエイト・リアル・マジック(Create Real Magic)プラットフォームを使って、看板で際立つAI画像の制作を消費者に促すキャンペーンを実施。このキャンペーンは、AI生成のグリーティングカードの作成も含め、ホリデーシーズンまで継続された。
マーケターがAIコピー生成を使う現時点での最大の理由は一般向けのコンテンツを作成することであるが、AIによって生成されたコピーを使うと答えた回答者のかなりの割合がB2Bの販売コミュニケーション(46%)、または社内の使用(32%)にも利用しているという。AIがさらに有能なデータ分析ツールになるにつれて、AIの周辺用途の使用が増えると思われる。
AIが推進する全面的なデータ分析の民主化
Glossyの調査によると、コピー生成に次いで3番目に一般的なAI用途はソーシャルメディアリスニングであり、回答者の38%がソーシャルメディアリスニングにAIを使っていると答えた。マーケターがこのAI用途に注目しているのは、多くの既存のデータ分析ツールや人間のアナリストよりも情報を高速に分析する能力を得られるからである。
AIがソーシャルメディアリスニングに使用される場合、AIは「いいね」やコメント、投稿タイプなどのソーシャルデータに基づいてトレーニングされ、どのコンテンツが顧客のエンゲージメントを促進するかを予測し、さらに重要なことには、新しく登場する消費者トレンドを浮き彫りにする。従来の方法よりも迅速にこれらのトレンドを察知するAIの能力により、企業は顧客のニーズに迅速に対応し、消費者心理が衰退したり変化し始める前に、その動きを利用したり回避することができるようになる。
ロレアル(L’Oreal)のデジタル・マーケティング最高責任者のハン・ウェン氏は、ロレアルは2023年に美容トレンドの出現に合わせてソーシャルリスニングを強化していると語っている。また、トレンドを特定して対応するまでに最大3カ月かかる可能性があった以前のタイムラインとは対照的に、社内チームを編成して数日以内にトレンドを取り入れたコンテンツ制作を加速させている。
ウェン氏は次のように述べている。「スピード感がまるで違う。現在の当社の目標は、アルゴリズムやコンテンツプラットフォーム、消費行動をめぐる変化によってもたらされる文化のスピードに合わせて、いかに動くかということに集中している。それを実現するためには、まずリスニングの態勢から始めて、次に極めて迅速に対応する能力を社内で構築することが必要だ」。
この数カ月においてAIに関する最大の変化のひとつには、AIツールを構築するマーケターから、社内データに基づいてサードパーティのアルゴリズムをトレーニングするマーケターへのパラダイムシフトがある。ソーシャル会話を分析するAIアルゴリズムをゼロから開発するのは難しい可能性があることを考慮し、大部分のマーケターは現在利用できるオープンソースやライセンスのオプションを選ぶようになっている。AIユーザーの多くは、どのモデルを選ぶかよりも、モデルのトレーニングに使うデータのほうが最終的には重要だと述べている。
「通常、AIについて語られる際、最大の(企業に競争上の優位性を与える)堀はアルゴリズムではない。なぜならアルゴリズムはすべてオープンソースだから」と述べるのは、APIプラットフォーム、パブナブの最高技術責任者、スティーブン・ブラム氏だ。「Googleでさえ『すべて入手して使ってよい』と言っている。アルゴリズムは無料だが、IPこそがデータだ」。
AIは、ソーシャルメディアリスニングで特定されたトレンド以外のトレンドを浮き彫りにするためにも使用できる。販売や広告、顧客レビューのデータなどのソースを使ってモデルをトレーニングできる。また、生成AIは短い時間で膨大な量のデータを選別・分析できるため、マーケターに多くの可能性をもたらしている。
重要なイノベーションのひとつには、現在利用可能な生成AIツールの多くがチャットボットに似た会話型インターフェイスを提供していることが挙げられる。手作業でのデータ処理用に構築されたツールを使う代わりに、データに基づいてトレーニングされたAIモデルは特定のプロンプトに対するテキスト応答の形式で分析を生成することができる。このインターフェイスはデータフォーマットやクエリ言語などのハードスキルセットに取って代わり、以前にはなかった柔軟性を提供している。ユーザーは、自分が求めている結果を理解して、その結果を引き出すための自然言語プロンプトを作成できればよいため、マーケターにとってAIベースのデータ分析への参入障壁が低くなっている。
しかし、実稼働の生成AIアプリケーションを構築するリアルタイムデータ企業、データスタックス(DataStax)のシニアデベロッパーアドボケート、メアリー・グリグレスキー氏は、既存のAIシナリオにおける課題のひとつには拡張可能なデータストレージソリューションを用意することがあると述べている。同氏によると、ほとんどの企業が社内データベースの代わりにプライベートクラウドストレージシステムを使用しているという。プライベートクラウドストレージはコスト効率は高いかもしれないが、社内データベースと同じほどインフラストラクチャーのコントロールはない。AIツールにとってデータの重要性が高まるにつれ、企業は、データを保存する方法と、自社インフラストラクチャーがAIシステムに追いつき、そのシステムの機能を適切に強化できるかどうかについて、より慎重に検討する必要がある。
「たとえると、家の購入のようなものだ。外観で下見をするだろうが、表面下にあるもの、つまり配線類には注意していないかもしれない」とグリグレスキー氏。「そのような舞台裏は非常に重要だ。『家の照明すべてを同時に点けても問題ないだろうか?』『どの配線も負荷テストに合格するだろうか?』と考えなければならない」。
「同じように、AIシステムは非常に多くのデータを処理する」とグリグレスキー氏は付け加える。「大規模な言語モデルには膨大な量のデータが保存される。だが、その規模にかかわらず、自社のドメイン固有の最新データが考慮されていないため、データは十分とはいえない。これらすべてが連携して機能しなければならない。……データはどのようなAIシステムにとっても大きな課題のひとつだ」。
モデルの急増・進化につれ、AI競争はマーケターに利益をもたらす
Glossyの調査によると、2022年以降、AIソリューションに関してサードパーティベンダーと協働しているマーケターの割合は53%から62%に増加してる。一方、社内ツールを構築しながらサードパーティベンダーも利用しているマーケターの割合は31%から20%に減少。サードパーティのAIソリューションがこの1年ほどで非常に洗練され向上しているため、多くのマーケターはツールを自分で構築するよりも、ツール構築ニーズのアウトソーシングを選択している。
IBMのエコシステムエンジニアリング・開発者アドボカシー担当バイスプレジデント、サビオ・ロドリゲス氏は、最近、組み込み可能なAIテクノロジーのスキルの習得と提供に重点が置かれていることに気づいたと述べている。「技術スキルが不足しており、ほとんどの企業には、これらのAIモデルをゼロから開発するために必要な構築や管理、継続的なサポートを提供するための時間も資金的リソースもない」。
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実際、テクノロジー企業の間では成長する顧客市場向けに最新かつ最高のAIツールを開発する競争が続いている。最近では、OpenAIの元社員が設立したAIスタートアップのアンソロピック(Anthropic)が、ChatGPTに対抗するために、Claude(クロード)というチャットボットの新バージョンをローンチした。このアップグレードではAPIツールがClaudeに追加され、さらに多くの情報を処理できるようになり、正確に応答する機能が向上する。
2023年11月、別のAIスタートアップのインフレクションAI(Inflection AI)は、2023年11月、GoogleのPaLMなどのほかのLLMよりも優れているとされる新しい言語モデルをリリースした。また、同月には、OpenAIの元社員を大勢雇用したMicrosoftが小規模な言語モデルのOrca 2をリリース。一方、MetaにはLLAMA-2言語モデルがある。
マーケターはさらに優れたAIモデルを構築しているテクノロジー企業の競争から恩恵を受けているが、テック企業が提供する継続的なアップデートや新しいオプション、その他のアップグレードにより決定麻痺に陥る可能性がある。だが、AIの選択肢が増え続けるにつれて、マーケターはニッチなソリューションでAIツールキットを定期的に多様化することに適応すると思われる。
データスタックスのグリグレスキー氏は、最新のAIツール開発競争は顧客にもメリットがあると語っている。「消費者にはさらに多くの選択肢が与えられる。異なるベンダー間の統合が増えており、ベンダーは単に『我が社のほうが優れている』と言うのではなく、すべての利点を最大限に引き出す方法を追求している」。
Glossyの調査結果で注目すべき点の1つは、マーケターの18%がAIツールを社内で構築していると回答したことだ。一部の大企業やAI企業を除いて、ほとんどの企業は、通常、専任のAIチームを持っていない。AIツールを社内で構築していると答えた回答者のほとんどは、OpenAIなどの既存のオープンソースツールを使い、それを独自のデータでトレーニングしている可能性がある。この点は、自社製のAIモデルの構築と混同すべきではない。
現在の大規模言語モデルについてのガイド
AIオプションの急増を踏まえ、このセクションでは、マーケターがベンダーの主な傾向や特長を知って選択できるよう、AIツール用の大規模言語モデル (LLM) のいくつかについて簡単に説明する。AI用語の詳細と定義については、姉妹サイトのDigidayの「DIGIDAY的『AI』用語集 2023年版」を参照してほしい。
Adobe
• 名称:Adobe Sensei
• アクセス:オープンソースではなく、一般公開されていないが、商用に利用できるツールに搭載される。
• 特長:Adobe Senseiは、Analyticsや、Adobeの画像ベース生成AIツールであるFireflyなど、多くのAdobe Suite製品に搭載される。
• 注目すべきツール:FireflyはAdobeの主要なツールであり、Adobe PhotoshopやIllustratorに統合できる。画像の生成だけでなく、画像の編集も可能。
AssemblyAI
• 名称:LeMUR
• アクセス:オープンソースで、使用分を支払う従量課金制。
• 特長:音声認識において優秀だが、AmazonのAlexa LLMとは異なり、柔軟性が高く、Amazon製品スイートに関連付けられていない。ただし、AmazonのAlexaと同じ量の音声データへのアクセスはない。
• 注目すべきツール:LeMURは、音声からテキストへのトランスクリプションとオーディオインテリジェンス(Audio Intelligence)という2つのツールに搭載。音声からテキストへのトランスクリプションは、フィラーワードを削除したり卑猥な言葉に対するフィルターを設定するなどのカスタマイズもできるトランスクリプションツールである。オーディオインテリジェンスは音声感情分析を提供する分析ツールで、話された内容の要約も提供する。
Amazon
• 名称:Alexa LLM
• アクセス:現在、一般利用はできない。
• 特長:音声認識に優れており、また、AlexaがほかのAPIに接続してカスタマイズされた機能を実行できるようにする。
• 注目すべきツール:Alexa LLMは、主にAlexaアシスタントと統合される予定。この統合によりAlexaはさらに多くの機能を実行できるようになり、また、ユーザーと関与する際に個性を伸ばすこともできるようになる。AmazonはAIを現実のデバイスに統合している主要企業の1社である。別の例にはGoogleがある。
Anthropic
• 名称:Claude 2
• アクセス:オープンソースで、使用分を支払う従量課金制。
• 特長:Anthropicの理念は安全指向のAIモデルを構築することである。Claude 2はブランドの安全性により注力しており、将来の規制の遵守を重視すると思われる。
• 注目すべきツール:Anthropicは、企業がClaude 2に接続してほかのチャットボットを強化できるAPIも提供している。チャットボットと併せて、このAPIはテキスト生成と自動コーディングライターを作動することができる。
• 名称:PaLM 2
• アクセス:オープンソースで、研究および商用利用の両方に対して無料。
• このLLMは、Googleの増え続ける広範なデータセットへのアクセスに加えて、多言語対応、推論(論理と数学を含む)、コーディングに特化している。
• 名称:Gemini
• アクセス:この記事の執筆時点では、発表されたばかりで、オープンソースでもなく、商用の利用もできなかった。
• 特長:テキスト、画像、動画、音声、コードをプロンプトとして取り込む機能があり、さらに柔軟な対応ができる。
• 注目すべきツール:Vertex AI(バーテックスAI)は、Googleのクラウドサービスで利用できるプラットフォームで、ユーザーが機械学習とAIツールをトレーニング・起動できるようになるツール。また、起動後のパフォーマンスを追跡するために監視もできる。現在はPaLM 2を搭載しているが、後にGeminiも搭載予定。
Meta
• 名称:Llama 2
• アクセス:オープンソースで、研究と商用利用の両方に無料。
• 特長:このLLMは、Metaの膨大なデータセットと公開情報に基づいてトレーニングされている。Metaのウェブサイトによると、「Llama 2はMetaのユーザーデータに基づいてトレーニングされていない」ということだ。
• 注目すべきツール:PyTorch(パイトーチ)はオープンソースフレームワークで、ほかのユーザーが機械学習ツールを作成・トレーニング・テストできるようになる。また、PyTorchはMetaのデータセットにも接続されている。Llama 2と同様、PyTorchも無料で、研究や商用に利用できる。
Microsoft
• 注記:Microsoft のツール自体はLLMではないが、LLMを向上させるために機能する。
• 名称:Orca 2
• アクセス:オープンソースであり、研究目的のみ無料。
• 特長:これは、比較的小規模なLLMを改善するためにデザインされたツールであり、小規模な言語モデルをトレーニングするための合成データの作成に特化している。基本的には、その小規模な言語モデルが多くの応答を作成するために使用できるデータベースを作成する。
OpenAI
• 名称:GPT4
• アクセス:オープンソースではなく、使用分を支払う従量課金制。
• 特長:もっとも一般的に知られているLLMの1つであり、生成AIとほぼ同義になっている。テキスト生成に特化している。また、ChatGPTの一部であり画像生成用のDALL-E 3に搭載されている。
• 注目すべきツール:OpenAI APIにより、ユーザーはGPT4のLLMを利用してほかのチャットボットやAIアシスタント、ほかのアプリケーションを構築できる。このAPIは、センチメントアナライザーやコンピューターコードデバッガー、自動コードライターなどほかのツールの作成にも使用されている。
迫りくる規制によりAIの将来にもたらされる不確実性
AIの導入が急加速する一方で、将来のAIの導入方法において規制と政策が重要な役割を果たすことは間違いないだろう。現時点では、ほとんどの立法機関はAIテクノロジーとその潜在的な脅威を理解しようとしている学習段階にある。たとえば、アメリカ合衆国著作権局(U.S. Copyright Office)は、ライセンスや著作権で保護された情報や画像でトレーニングされている生成AIから生じる著作権問題に関する研究を行っている。同様に、米国の規制当局は、生成型AIがさまざまな業界や消費者に及ぼす可能性のある広範囲の影響についてを調査している。連邦取引委員会(Federal Trade Commission)は、9月22日、著者やアーティストをはじめとするさまざまな参加者を迎えて、著作権に関する懸念やその他の問題に対処するためのバーチャルラウンドテーブルを主催した。
AIを対象にいくつかの法律が制定されているが、そのほとんどは一般的なもので、AIの特定の機能やAIが生成できるコンテンツについては取り上げられていない。AIデジタル政策センター (Center for AI and Digital Policy、CAIDP) とホワイトハウスは、AIテクノロジーの一般的な開発のためのフレームワークを作成した。CAIDPは、米国のAI規制のために高レベルのフレームワークを作成する目的の米国AI法(U.S. AI Act)を支持している。また、ホワイトハウスはAIテクノロジーの開発と使用に関する大統領令を発令し、AIテクノロジーが安全である必要性を強調したが、その命令では何が安全やセキュリティを意味するのかについては詳しく述べられていない。さらに、現在の法律はAIの急成長に追いついておらず、その結果、適切な厳格さを欠いている。
データスタックスのグリグレスキー氏は、データアクセスを監督する規制機関の必要性を指摘する。「これは間違いなく、まだ多くの作業が必要な分野だ。殊に、あらゆるデータにアクセスできる上場企業と関わっている現在ではそうだ。監視組織や監視機関、データのアクセスと保管を管理する規制機関が必須だ。……それに向けた取り組みは見られるが、まだ十分ではない」。
AIテクノロジーの導入を目指すマーケターにとって、規制が今後の主な障壁となる可能性は十分にある。将来どのようなAI戦術が許可されるかについての不確実性と、ブランドの安全性への一般的な懸念があるため、マーケターの中には現時点ではAIテクノロジーに多額の初期投資を行ってAI導入の最前線に立つことに消極的な人もいる。その代わりに、現時点では、多くのマーケターは不透明なプライバシー倫理を深く掘り下げることなく、実績あるAIアプリケーションや単純なアプリケーションへの投資を選んでいる。
[原文:The State of AI: The paradigm shifts toward data for marketers]
LI LU(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)