転職時に「同じ職種か、異職種か」で悩む人の盲点
研究開発職かコンサル業界かで悩む相談者。いったいどちらの選択がよいのでしょうか(写真: saki / PIXTA)
→安井さんへのキャリア相談は、こちらまでお送りください。
転職する業界について悩んでいます。私は大学院を修了してから約3年半、大手精密機械メーカーで研究開発職に従事しています。
しかし、年収、勤務地、身につくスキル、事業の魅力などミスマッチが多いと感じ、転職を決意しました。そこで次に転職する業界・職種として別のメーカーで研究開発に携わるか、新たにコンサル業界に挑戦するかで悩んでいます。
以下、その経緯を説明します。職探しの開始直後、私はやりたいことが特にあるわけでもないので、勤務地と専門性(スキル)を見てメーカーの研究開発職を探していました(年収は現在と大差ない求人が多数なのでいったん気にしないことにしました)。ですが、その過程で研究開発職からコンサル業界へ転身する人もいることを知りました。
調べてみたところ、勤務地と成長環境は希望に合致しており、年収も今以上を見込めるので魅力的に感じました。しかし、この話を身内にしたところ反対されました。曰く、「適性がないだろう」とのことです。
そして、「コンサルではアップorアウトが常だし、適性がない場合、その先のキャリアをどうするつもりなのか? 一度、研究開発を離れる以上、復帰も難しいだろう。今より地位を落とした場合、自分は後悔しないのか?」とも言われました。
適性は推測にすぎないので気にせず、自分で調べようと考えていますが、後者については私も懸念していることです。おそらく今より地位を落とせば、後悔することは明らかです。一方で研究開発職は、アップorアウトのような扱いはないし、安定してキャリアを積めるところが多いと考えています。このようにいろいろ考える中で、自分がどういう道に進みたいのかわからなくなってしまいました。自分のキャリアは自分で決めることですが、それを決めるためのアドバイスを頂きたいです。よろしくお願いします。
YS 研究開発職
自分に問いかけるべきこと
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結局のところ今回の転職にあたりYSさんが、ご自身に問いかけるべきは、「現状を変えたいか」であり、「自分を変えたいか」です。
「挑戦して失敗したことによる後悔」か「挑戦すらしなかったことによる後悔」のどちらをより後悔するかの違いとも言えます。
そのようなことを勘案しつつ、長期的なキャリア形成の道筋において、よりよい選択肢は何かを考えたほうがよいでしょう。
長期的な目線がないからこそ、選択や決断をするにあたっての軸が不在であり、決断に至れない、ということかと思われます。
現時点においては、研究職を継続するか・コンサルという新しい業界に挑戦するかの二択で検討されているようですが、いずれにせよ本質は「今の延長か・新しい挑戦か」、の選択で悩んでいるということだと思います(なお、頂戴した相談からはどんな業界の研究職なのかや、どのようなタイプのコンサルなのかは不明ですので、ここではその双方の将来性などについては言及致しません)。
年収や勤務地、(どのような意味かはわかりかねますが)地位、などさまざまな要素を勘案しているようですが、要するに問われているのは自分を変える勇気があるか否か、であり、長期的な目線に立ってどちらの選択肢を取るべきか、です。
どちらの選択肢にせよ、よい面もあれば悪い面もあるでしょう。どちらかが全面的に魅力的な選択肢であれば、そもそも最初から迷わないハズです。
今回の転職「のみ」を考えていないか?
そうではなく、双方に魅力と不安があるからこその悩みだと思います。
もちろんキャリアに関する選択ですから、100パーセント正しい選択肢なんてありませんし、正解も存在しません。
将来、過去の選択肢を振り返ったときに、その選択肢が正解であったか否かがわかるのが関の山です。
とは言え100パーセント言えることは、どちらの選択肢を選んだとしても、その結果が凶と出るか吉と出るかはYSさん次第です。
それだけYSさんが選んだ道で工夫し、努力し、情熱を燃やしたか次第で、結果は大きく変わるものです。
キャリアにおいて結果を出すためには、自分の持っている経験やスキルなどを踏まえて、自分にとって勝負するのに適切な場所を選び、その場所でどれだけ真剣に覚悟を決められるか、が大切です。
今回のケースにおいては、その勝負するべき場所で悩んでいる、ということであり、その選択にあたって、何となく先行きが見えている現状の延長である研究職か、それとも新しい挑戦であるコンサルか、ということだと思います。
いずれにしても、YSさんが決断できないのは、恐らく今回の転職「のみ」を見ているからでしょう。
キャリアとは長期的な話ですから、長期的な目線で考えたほうがよいでしょう。
加えて言いますと、キャリアはその積み重ねが大事です。だからこそ、個々の場面における決断や選択の場合は、長期的なゴールに照らし合わせて、どちらがよいのかを選んだほうがよいのです。
恐らくその視点が欠けているため、目の前の選択肢のみにフォーカスしてしまい、そして双方によい面も悪い面もあるので、悩んでしまう、ということかと思われます。
YSさんにとって、キャリア上のゴールは何でしょうか? もちろん、それはキャリア単体で考えるべきものではなく、順番としては
1. どんな人生を歩みたいか
2. その中で仕事やキャリアをどう位置付けるか
3. キャリア上のゴールや目指すべきものは何か
4. では現在何をするべきか(イコールどんな選択をするべきか)
という流れです。
上記でいうと、YSさんは4のみにフォーカスしてしまっているため、決断や選択するにあたっての軸がない状態です。
100パーセント正解というものがない以上は、そういった自分なりの軸をもって、判断するしかありません。
そして一度選んだら、100パーセントの結果が出せるように、自分自身の創意工夫と努力をすることに邁進をしたほうがよいでしょう。
結局のところ、研究職にせよコンサルにせよ、はたまたまったく別の第三の選択肢にせよ、「その先」につなげることが大事なのです。
キャリア上のゴールで考えたほうがよい
転職がゴール、というわけではありませんよね?
自分に問うべきは、ご自身の目指すべきキャリア上のゴールに向かうための手段としてどちらがよりよい選択肢なのか、です。
現状の延長の先にゴールを見据えているのか、それとも現状とはかけ離れたゴールを見据えているのか。
目的によって、とるべき選択肢が異なるのは言うまでもありません。
前者であれば場所としての職場は変わっても研究職を継続する、という話でしょうし、後者であれば、今までの経験やスキルに加えて、新しい視点や経験を積むべくコンサルに挑戦してみる、ということになるだろうと思います。
恐らく転職を考えた最初の経緯として、身につくスキルや事業の魅力、将来性に対する懸念をお持ちであった、ということですから、漠然とYSさんの中で、「将来こうなりたい」または「将来こうはなりたくない」というような長期的な目線をお持ちのハズです。
そういったご自身の長期的な目線をまずはキチンと分析し、正しく理解し、そのうえで軸をもって判断をするのがベストです。
繰り返しですが、どっちを選択するにせよ、よい面も悪い面もありますし、学べることも多々あり、困難にぶつかることも多いでしょう。
そういった、決してプラス面だけではない困難を乗り越えようとするときにも、長期的な目線や視野は大事なのです。
長期的な目線があるから困難にも打ち勝てる
長期的な目線があるからこそ、困難も乗り越えられますし、それ以上に新しい挑戦にも突き進めるというものです。
YSさんが目の前の選択肢のみにフォーカスせずに、長期的な目線、すなわちしかるべき判断軸をもって今後のキャリアにとってよりプラスとなる選択肢を選ぶであろうことを応援しております。
(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)