日本外国特派員協会で記者会見する五ノ井里奈さん。刑事裁判の判決について語った

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陸上自衛隊在職中に性暴力を受けたことを実名で告発していた五ノ井里奈さん(24)が2023年12月13日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で約1年ぶりに記者会見した。強制わいせつ罪に問われた元自衛官3人に対し、福島地裁が12月12日、いずれも懲役2年執行猶予4年(求刑懲役2年)の有罪判決を言い渡したことを受けての記者会見だ。

五ノ井さんは、判決を聞いて「やっと報われたという感情」とする一方で、無罪を主張した3被告について「私の思いが全く彼らには伝わらなかったという面では残念」とした。五ノ井さんによると、日本で「声を上げる」ことを難しくしている理由のひとつが、被害者にも誹謗中傷が投げつけられるという点だ。五ノ井さんは悪質なものについては被害届を出し、罰金30万円の略式命令を受けた事案もあったという。五ノ井さんは「心を殺すような言葉を使った人が、たった罰金30万円で許される日本の法律は、ちょっと私はあまり納得はいっていない」などと話した。

無罪主張の3被告には「私の思いが全く彼らには伝わらなかった」

3人は強制わいせつ容疑で書類送検され、一度は不起訴処分になったが、郡山検察審査会(福島県郡山市)が「不起訴不当」とする議決を出した。これを受けて福島地検が23年3月、強制わいせつ罪で起訴していた。

判決によると、3人は21年8月3日夜、北海道別海町の陸自演習場の建物内で飲食中、格闘技を使って五ノ井さんをベッドに押し倒し、覆いかぶさって腰を前後に動かし、着衣越しに下半身を接触させるなどのわいせつ行為をした。被告側は腰を振ったりしたことは争わなかったが、「笑いを取るためだった」として無罪を主張していた。

五ノ井さんは、判決前日は寝られなかったといい、「もし仮に正しい判決が出なかったら、私は生きていけるんだろうか」といったことを考えながら当日を迎えた。有罪判決に接して「初めの頃からずっと訴えてきたことが全面的に裁判所に認められて、やっとの思いで報われた」とも話した。

一方で、被告3人については

「本当は、彼ら3名に対して心から反省してほしい思いで戦っていたので、私の思いが全く彼らには伝わらなかったという面では残念だったという思いはある」

と話した。

柔道が教えた「世の中に色々言われても、何度でも立ち上がる強さ」

検察側か被告側が14日以内に控訴しなければ判決は確定する。刑事裁判とは別に、元自衛官の被告5人と国を相手取って起こした民事裁判が進行中だが、五ノ井さんにとってはひとつの区切りだ。今後については、「本当に判決まで自分の命を削って戦ってきて、まずはちょっと心を休めたい」。その上で、幼少期に始めた柔道に関係する活動に携わっていきたい考えだ。

「世の中に色々言われても、何度でも立ち上がる強さというのは柔道で教えてもらった。そういう、人生において必要な力が柔道にはあると思う。私の生きがいである柔道を、今後いろんな人に柔道の体験を通じて伝えていきたい」

「日本では、やはり声を上げる難しさが結構あると思っている」として、「表に出る人に対してはやっぱり誹謗中傷が来てしまう」とも。「本当にこれは許せないと思ったもの」については警察の被害届を出し、侮辱罪での略式起訴を経て罰金30万円の略式命令が出た事案もあったという。ただ、この「罰金30万円」は軽すぎるとみており、

「言葉は凶器だと思っているし、それを受け取った側は一生傷になるにもかかわらず、そういう心を殺すような言葉を使った人が、たった罰金30万円で許される日本の法律は、ちょっと私はあまり納得はいっていないです」

などと訴えた。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)