自分の本音が言えない、すぐに自己嫌悪に陥ってしまう……そんなあなたへ、自分のために幸せをつくる方法を紹介します(写真:shimi/PIXTA)

がんばっているのに満たされない、人のことばかり気になる、自分の本音が言えない……。日々そんなふうに感じていませんか?

悩みを抱える人たちへの優しさあふれる言葉がSNSで大人気の心理カウンセラーPocheさんがそんな悩みにお答えします。これまで誰かのためにがんばってきたあなたへ、自分のために幸せをつくる方法をつづった『がんばりすぎて疲れたあなたが自分のつくる本』より一部抜粋し、3回にわたってご紹介します(2回目)。

自分の本音が言えない

自分の本音が言えない、と悩む人が増えています。

がんばればある程度できてしまう人の場合は、「助けてほしい」が言えずに1人で抱え込みすぎてしまったり、「できません」が言えずにキャパオーバーになって、ヘトヘトに疲れてしまうこともあります。

相手の反応が気になりすぎる人の場合は、とっさに相手がどう思うかを最優先に考えて行動するため、自分の気持ちが後回しになってしまいがち。知らず知らずのうちに我慢が増えてストレスが溜まったり、家に帰ってから「ああ言えばよかった」と後悔することも珍しくありません。

自分の気持ちを出すのが苦手な人の場合は、「うれしい」「嫌」「好き」「やめて」「そばにいてほしい」など、素直な気持ちが伝えられずに悩むこともあるかもしれませんね。

このように言いたいことがあるのに我慢したり、本音を抑えてその代わりに思ってもいないことを言うことは、想像以上に大きなストレスがかかります。

あなたが言いたい本音は、何でしょうか?

自分の考えや意見ですか? それとも自分の気持ちでしょうか?

現実面で何かをお願いしたり、断ったりできないことに悩んでいますか?

まずは自分自身の本音について考えてみましょう。どんな本音が言えないと悩んでいるのかを知ることは、本音を言えるようになるための第一歩です。

言わないことを「選んでいる」

でも、実は本当に本音が言えないという人は、ほんの一握り。本音が言えないと悩んでいる人の大半は、本音を言わないことを選択していることが多いのです。

たとえば、「本音を言ったら嫌われてしまうのではないか」「本音を言ったら相手が離れていくのではないか」という不安や恐怖、「本音を言うと自分に不利に働くのでは?」など状況をみて判断した結果、本音を言わないことを選んでいることもあります。

だからこそ、本音を言えるようにがんばる前に1つ、考えてみてほしいことがあります。

それは、本音をどうしても言いたいのかということです。

もしかすると「本音を言えたほうがいい」という世の中の風潮に、何かしらの影響を受けてしまっていないでしょうか? あなた自身はそうまでして本音を言いたいわけではないのに、「我慢せず本音を言うべきだ」という世の中のプレッシャーに押しつぶされていないでしょうか?

なぜこのようなことをお伝えしたかと言うと、本音を言えなくてもとくに大きな問題はないからなのです。本音を言えるのが良くて、本音を言えないのが悪いということはありません。

「幸せ」についていえば、本音を言えなくても幸せになれるし、本音を言ったからといって幸せになるとは限りません。大切なのは、あなたが本音を言いたいのかどうかです。

本音を言うメリットとデメリットを考えてみたときに、「別に本音は言えなくてもいい」「そうまでして言えなくてもいいかも」と感じるなら、それはそれでいいのです。

この場合は「本音を言えない」ではなく、「本音を言わないことを選んだ」と考えることをおすすめします。本音を言わないという現実は同じなのですが、「できない」と捉えるのと「しない」と捉えるのとでは精神的な負担が全然違うからです。

「しない」と思うだけで、本音を言わないことのストレスはかなり軽減されます。「できないのではなく、しないのだ」と自分で納得することができるので、できない自分を責めることも減ります。

「やっぱり本音が言いたい。でも言えない……」と思うときには、次のように自問自答してみてくださいね。「その人は、私が本音を我慢しなければいけないほど大切な相手だろうか?」「自分ばかり我慢していないだろうか?」と。

よくよく考えてみたら、あなただけがそこまで本音を我慢しなくても良い相手かも、と気づくこともありますから。

「本音を言わなきゃ」「本音を言っちゃいけない」などとルールを無理に一本化すると大変ですから、相手を見て本音を言うかどうかを考えたり、誰にどこまで本音を言うか工夫してみるのも良いかもしれませんね。


(イラスト:Poche)

すぐに自己嫌悪に陥ってしまう

何かあったときにすぐ自己嫌悪になる人は「自分が悪いからだ」「自分がもっと気をつけていれば」と考えがちです。でも自己嫌悪になるからといって、必ずしもあなたが悪いとは限りません。あなたが悪いことをしていなくても、相手に非があるとしても、自己嫌悪になることは十分にありうるのです。

次のような場面を想像してみてください。

AさんとBさんが、カフェで楽しく話をしています。

そこに、水の入ったグラスを持った店員さんがやってきました。テーブルの上にはまだお皿がたくさん残っていたので、店員さんはグラスをテーブルの端のところに2つ置いていきました。

すると突然、Aさんが大きなくしゃみをしました。驚いたBさんは、自分のひじでグラスを倒して水をこぼしてしまいました。

さて。水がこぼれたのは、誰のせいでしょうか?


店員さんがテーブルの端にグラスを置いたせいでしょうか? Aさんが突然に大きなくしゃみをしたからでしょうか? それとも、Bさんがひじをぶつけたせいでしょうか?

……いろいろな見解はあるかもしれませんが、状況を見て冷静に判断するならば「誰か1人だけのせいではない」というのが答えです。グラスが倒れて水がこぼれたのは、いろいろな状況が複雑に絡み合っての結果だからです。

このようなケースにおいて、自己嫌悪になるとどのような思考に陥りやすいのかを、店員さん、Aさん、Bさん、それぞれの視点から見てみましょう。

【店員さんの視点】

「私がテーブルの端にグラスを置いたから水がこぼれてしまった。私がテーブルの真ん中にグラスを置けば、グラスが倒れることはなかった」と落ち込むかもしれません。

ですが、店員さんがグラスを端に置いたのには、「テーブルの上にお皿がたくさん残っていたから」という理由がちゃんとあります。さらにはBさんがグラスを倒したのは、くしゃみに驚いたから。つまり、店員さんだけの責任ではありません。

【Aさんの視点】

「私が突然大きなくしゃみをしたから、Bさんを驚かせてしまった。だから私のせいで、Bさんはグラスを倒してしまった」と自分を責めてしまうかもしれません。

ですが、くしゃみは生理現象ですし、驚いたからといって必ずグラスを倒すとは限りません。グラスがテーブルの真ん中にあれば、Aさんがくしゃみをしたとしてもグラスを倒すことはなかったかもしれません。つまり、Aさんだけの責任ではありません。

【Bさんの視点】

「私がグラスにひじをぶつけたせいでグラスが倒れて、その場にいるみんなに迷惑をかけてしまった」と考えるかもしれません。

ですが、グラスが端にあったこと、さらにはAさんのくしゃみに驚いて手が当たってしまったことなど予知できないことが重なっています。「こぼしたのは自分」という事実だけがクローズアップされていますが、Bさんだけの責任ではありません。

……いかがでしょうか。

100%自分が悪いのか?

すぐに自己嫌悪に陥る人というのは、このように自分側の責任を実際の数倍大きく捉えています。自分側の責任が10%しかないときでさえ、ほぼ100%自分が悪いかのように捉えてしまいがちなのです。

でも現実には、あなただけが悪いことは滅多にありません。先ほどのカフェの例のように、いろいろな原因が重なっていることがほとんどです。

自己嫌悪になるのがいけない、ということではありませんよ。

自分側の原因を考えられるあなただからこそ、人として成長できた部分もあるはずです。それにまったく自己嫌悪にならないというのも、それはそれで厄介です。それこそ何でもかんでもすべて人のせいにしてしまっていたら、人間関係はうまくいきません。

ですが、自己嫌悪になってばかりだとしんどくなってしまいますよね。そんなときには「もし自分のせいではないとしたら?」と考えてみてくださいね。

「自分以外の原因はないだろうか?」と探すことで、実はあなたのせいではないことがたくさん見つかります。この「自分のせいではないとしたら?」という自問自答が、自己嫌悪から抜け出す大きな一歩になるはずです。


(イラスト:Poche)

(Poche : 心理カウンセラー)