2023年12月期決算企業を対象として、会社の通期営業利益計画に対する第2四半期(2023年1〜6月)の営業利益進捗率が過去3年の平均値を超過している順にランキング

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前半の進捗率が高く業績予想の上方修正や上振れ着地が期待できる企業は、今後の上昇相場の先導役になりそうだ(写真:hachiware/PIXTA)

為替相場の円安基調やコロナ禍の緩和による内需回復が続く中、日経平均株価は今年前半の急上昇を経て、足元ではフシ目の3万3000円を挟んだ攻防が続く。ただ、世界の株式市場の中で出遅れていた日本株には依然として割安感があるとの見方もあり、年末にかけて海外勢などの買い姿勢が再び強まる可能性がありそうだ。

そこで今から目をつけておきたいのが、「今期業績予想の上方修正や上振れ着地の期待が高い企業」だ。そうした上昇相場の先導役となりうる企業を探すには、会社の示す通期計画に対して四半期業績がどの程度進んでいるかを示す「進捗率」が重要な手がかりになる。

例年に比べて今期の四半期実績の進捗率が高ければ、実際の事業環境に対して会社の業績予想が慎重すぎたり、会社が考えていたよりも事業が勢いよく成長したりしていることが考えられる。

過去3年平均の進捗率を大幅に超過

今回は9月15日に発売した『会社四季報』2023年4集(秋号)に掲載した「営業利益 好発進・高進捗ランキング」の一部を紹介したい。2023年12月期決算企業を対象として、会社の通期営業利益計画に対する第2四半期(2023年1〜6月)の営業利益進捗率が過去3年の平均値を超過している順にランキングにした。

なお、今期の四季報予想の営業利益が30億円以上を対象とし、過去3年の第2四半期に赤字があった会社や決算期を変更した会社は除いている。


進捗率の超過度(乖離率)が1位だったのは、グローバル・リンク・マネジメントだ。「アルテシモ」ブランドの投資用マンション販売を主力にする同社は、通期の会社計画営業利益に対して、第2四半期の進捗率は79.3%に達しており、過去3年平均の34.2%を45.1ポイント超過している。

複数の開発物件をまとめて売る「バルク販売」に力を入れているほか、付加価値が高い環境配慮型マンションの扱いを増やしていることで、事業の効率化や高収益化が進んでおり、今期の高進捗につながった。四季報・秋号では、今2023年12月期の会社計画の営業利益37億5000万円に対して、上振れ着地を見込み営業利益40億円と独自増額している。

2位にランクインしたのは自転車の変速機やブレーキ部品で世界トップシェアのシマノ。第2四半期の営業利益進捗率は77.0%で、過去3年平均の43.2%を33.8ポイント上回った。

ただ、同社は7月25日に2023年12月期の第2四半期と通期の業績予想を修正。期初予想に対して第2四半期は上振れた一方で、欧州の完成車メーカーの在庫調整が想定より厳しく、下期の需要回復が遅れる見通しとなったため、通期は営業利益830億円としていた予想を700億円に引き下げている。今年後半の需要が想定をある程度上回って推移すれば、前半の貯金が効いてくる期待もできそうだ。

3位ビーロットで、中古不動産を仕入れて改修や建て替えなどで価値を高めて売却する不動産投資開発を主力事業とする。今期は住宅系不動産を中心に物件売却が順調に進み、第2四半期の営業利益進捗率は62.3%と、過去3年平均の進捗率29.3%を33.0ポイント上回った。

再生物件の売却が好調な一方で、ホテルや太陽光発電設備など収益性が高い物件を対象に、販売用不動産から賃貸用不動産に切り替えることでストック収益の拡大も図り、収益構造の安定化も進めている。

足元の勢いが続くのかどうかに注目

4位に入ったのは、スマートフォンや車載カメラに使う光学薄膜装置の製造・販売を手がけるオプトラン。第2四半期の営業利益進捗率は77.5%で、過去3年平均の45.1%を32.4ポイント超過している。

特にスマートフォン用カメラの高機能化を支える好採算のALD(原子層堆積)装置が伸びて業績を牽引。一方で販管費は計画内の水準だったこともあり、営業利益が積み上がった。四季報・秋号では、今2023年12月期の会社計画の営業利益86億円に対して、四季報予想は営業利益100億円と独自増額している。

アフターコロナへの移行が本格化する中で、外出や行楽需要の回復といった世界的な消費動向の変化や、原燃料高をはじめとする根強いインフレ圧力など、企業を取り巻く事業環境の不安定な状況が続く。今期業績が上振れそうな企業を探すには、進捗率に加えて、足元の勢いが続くかどうかを業態や各事業の状況と合わせて分析することがより重要になっている。


(山田 泰弘 : 東洋経済 記者)