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家事や育児、介護などの分担をめぐって、家族間で言い争いが増えて、いつのまにか一緒にいて心地よい存在だったはずの家族が「つかれる存在」になってしまった……そんな話を聞くことがよくあります。

どうして自分の不満が家族に伝わらないの? どうしたら「つかれない家族」になれるの? そんなふうに「つかれる家族」と「つかれない家族」を考察するこの連載。

前回から数回に分けて、茨城県在住のある野菜農家のご家族の生活を紹介しています。前回は「ふたりが農家になったワケと農家の幸せ」(記事はこちら)、今回は「農家ならではの産後クライシス」を紹介します。

農家の家事育児分担は世代や性格によっていろいろ


家業だからこそ「負い目」感じてしまいやすい


妻は里帰りせずに出産・育児スタート


夫は農家として迷いの多かった時期、負担も増加


お互いボロボロで「つかれた」とは言えない日々


妻の負い目は増し、できることを探し話してみるも


2人の仲はどんどん険悪に


のんさんの家で期間中、まぶさんは


それまでを振り返るまぶさん


お菓子工房を作り始めたり、まぶさんの行動に変化


のんさんのお菓子は大好評、意気投合する出会いも


「10年かけてやっといい夫婦関係になれた」



のんさんのお菓子屋「イツモノ」のマフィン。そよかぜ農園の自然栽培米や地元産のお米をその都度精米した米粉を使い、農園の野菜や季節の果物を使って作るおやつは大人気。種類は季節によって変わり、写真は左からモロヘイヤと白ごまのマフィン、かぼちゃのタイガーマフィン、自家製ドライトマトの酒粕ペッパーマフィン。著者もいただきましたが、独学で学んだとは思えないおいしさ! 詳細はそよかぜ農園インスタグラム(写真提供:のんさん)

農家の家事育児分担はいろいろで、「夫婦共に同じくらい農作業をして、同じくらい家事育児もする」というパターンもあれば、「夫が農作業、妻が家事育児」と完全に分けているパターンもあるそうです。

「夫婦ふたりで農業を始めたけど、途中から片方が働きに出る」という家庭も多いそう。これは、農家が労力のわりに儲からず、災害や豊作やいろいろなことに売り上げが左右されてしまい不安定、ということから途中でやり方を変えるという理由が多いからなのだとか。

パートナーを応援することで、家庭の幸せが増えることも

このお2人の場合は、産後クライシスを経て、今はまぶさんが外での農作業、のんさんが出荷作業とお菓子製作販売、という分担になりました。のんさんのお菓子は好評で、マルシェなどで販売するといつも完売。売り上げを立てられるようになったそうです。そのマルシェが彼らの仲間を増やすことにもつながりました。

結婚後に始めた仕事は、なにかと趣味扱いされて軽くあしらわれたり、仕事扱いされなかったりしがちです。でも、パートナーが失敗すると決めつけず、応援することによって、家庭の幸せが増えることもあるのかもしれないのです。

いまでは、まぶさんは「妻の直感はすごい。彼女が笑っていればうまくいく」と言うほどです。さらに「妻の好きなところは、芯の強さ。ふわふわ女子のようで、芯は本当にぶれない」と言います。今回の取材で農家の妻には強さが大事なんだなと思ったのですが、のんさんもそういう意味でまさに農家の妻にふさわしい人なのかもしれません。

さて、次回は、彼らの家事育児分担のさらなる詳細と、お菓子工房以外もいろいろと手作りする生活を紹介します。なんと自宅もセルフビルドで建築中なんだとか!

この連載にはサブ・コミュニティ「バル・ハラユキ」があります。ハラユキさんと夫婦の問題について語り合ってみませんか? 詳細はこちらから。

(ハラユキ : イラストレーター、コミックエッセイスト)