【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】

◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ダンジグ】

 アメリカで走り、2歳から3歳にかけてダートの短距離戦ばかり3戦全勝。2着馬との平均着差は「7馬身強」でした。重賞を勝つどころか出ることもなく脚部不安で競走生活を終えましたが、種牡馬としては初年度から大成功を収め、またたく間にノーザンダンサー系のニュースターと見なされるようになりました。

 父と同じく小柄でガッチリとした馬体で、抜群のスピードと前向きな気性を伝えます。あらゆる馬場をこなす万能性もセールスポイントで、休み明けを苦にしません。1990年代の世界最強スプリンターといわれたデイジュールの父ですが、父系はデインヒルとグリーンデザートを通じて発展しており、とくにオーストラリアとヨーロッパで活発に勢力を広げています。

 日本では長らくダート向きの小系統にすぎませんでしたが、海外で大発展していることから、このところ種牡馬だけでなくこの血を抱えた繁殖牝馬も多数輸入され、急速に存在感を増しています。

◆血統に関する疑問にズバリ回答!

「なぜケガのしやすさも遺伝するの?」

 生物はあらゆる特徴を父母から受け継ぎます。これを遺伝といいます。馬場適性、距離適性、脚質、気性だけでなく、体質もそのカテゴリーに入ります。

 統計を取ったわけではありませんが、マルゼンスキー、リアルシャダイ、アグネスタキオンなどは、産駒の故障が多いという実感がありました。ファンもそうした目線でこれらの産駒を眺めていたと思います。

 無事是名馬(ぶじこれめいば)、という菊池寛の名言(怪我なく走れる馬こそ名馬であるという意)を引くまでもなく、いくら能力が高くとも、故障をしてしまっては大舞台で活躍することはできません。骨折しやすいとか、腱を痛めやすいとか、細かく見れば違いはあると思いますが、いずれにしてもそうした部分を正常に保つ力が、他の種牡馬より少し弱かったのだろうと思います。

 能力が低くて故障しやすい種牡馬は、すぐに淘汰されてしまいます。上記の種牡馬は、能力が高かったからこそ、そうした欠点を語られたという面があります。リアルシャダイとアグネスタキオンはリーディングサイアー、マルゼンスキーは最高2位の名種牡馬で、現代の多くの活躍馬に含まれています。