とにかく暑い今年の夏。きついのは、人間だけでなく動物も同じです。今回は、自身も保護猫の小虎くんと暮らし、元野良猫との出合いから地域猫管理者となったライターの高木沙織さんが、自身の経験をもとに「地域猫」と暮らすうえでのルールをつづってくれました。

過酷すぎる外猫たちの夏。知っておきたい大切なこと

暑い日は冷房が効いた屋内で過ごすという選択肢がある私たちとは違い、外で暮らす野良猫や地域猫にとっては涼しい場所を探すのもひと苦労です。日陰や物陰、車の下、ちょっとした植込みのなかなど直射日光を避けた場所で休んでいるとはいえ、この気温と湿度…。決して快適とはいえませんよね。

また、狩りで食糧を確保するのだって簡単ではないし、やっとありつけた残りもののごはんが傷んでいたりすることもあったりして、外の猫たちの暮らしはとにかく過酷! 熱中症にかかったり、体力を奪われたりして命を落としてしまうことも珍しくないと聞きます。

●野良猫と地域猫の違い

筆者が2022年8月に出合った元・野良猫のミケ子も、まさに極限状態でしたが、今はTNR(※)を経て立派な地域猫(さくら猫)になりました。しかし、ここに至るまでにはわからないことの連続で試行錯誤の繰り返し。地域住民の住環境に猫が頻繁にやってくるようになるのだから、なにをおいても“地域猫のルール”を守ることがとっても大事になってくるんです。

TNRを経た飼い主のいない外猫は、もうこれ以上繁殖しない・当該猫一代限りの生をまっとうするようになります。そのため、地域猫として近隣の方々に受け入れてもらえることもあるのです。では、地域猫にはどう接していけばいいのか。

これからお話しするのは、野良猫時代に出合い、お世話をしようと決めた地域猫・ミケ子や近隣の方々に対して“地域猫管理者”となった筆者がおこなってきた例のひとつです。

TNR:T=Trap(猫を安全に捕まえる)N=Neuter(不妊・去勢手術をする)R=Return(元の場所に戻す)の頭文字。さくら猫というのは、TNR済の証に耳の先端がカットされた猫のこと

●それぞれの「地域猫のルール」を守ることが大事

最初におこなったのは、保護猫ボランティア団体への相談。外で暮らす猫に関する不明点や心配事は、その道のプロ・ボランティア団体に意見を求めるようにしています。

TNRや地域猫に関してのアレコレは、その地域のボランティア団体に聞くのが得策。

次は、TNRのために捕獲器を設置する必要があったので、住んでいる建物の管理人さんとの話し合いです。無事にTNRがすんだら(ミケ子の場合、ほかのボランティアさんの捕獲器に捕まりTNRが完了)お世話が始まりますが、その前に非常に大事なことでかつ最難関が「ご近所さん」への説明です。

筆者が暮らすエリアには地域猫がほかにもいることや、猫を飼っている方が多いことなどもあって、ミケ子に対するネガティヴな意見がなくホッとひと安心。とはいえ、単にごはんをあげさえすればいいという簡単な話ではなかったんです。

まず、ごはんは多くの人が行き交うような公共の場所であげないこと。地域猫の存在を認めてくれたとはいえ、猫に対する感情は人によってさまざまだし、なかにはアレルギーをもっている方もいるということを心に留めておく必要があります。

それと、ごはんは決まった時間にあげること。猫はわりと習慣を守る生き物なので、ごはんがもらえる時間がわかったらその時間にやってきます。食べ終えたら、きれいにあと片づけをすることも忘れてはいけないルールです。

じつは筆者、ミケ子が姿を現わしていないのにも関わらずいつもの時間にごはんを置いてその場を離れたら、カラスを引き寄せてしまった…という大失態を犯しています。食後、あと片づけまでしばらく時間をあけてしまったときなんかは、散らかった食べかすにアリが…なんてことも。これには猛反省です。

それからは、いつもの時間にミケ子がやってきたのを確認してからごはんをあげ(ミケ子は80%くらいの確率でやってきます)、食べ終えたであろう時間に掃除に向かうように。

ごはんの時間から少し待っても姿を現わさないときは、かわいそうだけど撤収。家猫のごはんとは違い、外での置き餌はトラブルのもとになるので致し方ありません。

●ほかにもケアすべきことはたくさん

さて、次はトイレ問題です。外で暮らす猫は、家猫とは違いトイレの場所を1か所に決めておらず、なわばりのあちこちで排泄をするため、近隣住民の生活の迷惑にならないように糞尿の管理をするのも必須項目です。

ただ、これがなかなか難しく、猫用トイレをつくっても外の猫はそこで用をたさないことが多いので、ビニール袋とトングを手に朝晩枯葉・砂の上などをチェックするようにしています。

普段、家で原稿を書いて過ごす筆者にとって10分強×2回のこの散策は、ちょっとした運動不足解消にもなってくれていることだと思います。

ほかにも、猫によるトラブルが起こっていないかアンテナを立てておくこと、はたまた猫同士のトラブル(ケンカなど)が起こっていないかを気にする必要もあるでしょう。仮に、ケンカで大きなケガをしてしまった場合、診てもらえる動物病院を探して連れて行くことも覚悟しなくてはなりません。「ニ゛ャー!」という威嚇し合う声が聞こえてきたら、慌てて様子を見に行くこともしばしばです。

また、エリアによって“地域猫のルール”が変わってきたりもします。独自の判断で行動するのではなく、住民も、生命を受けた外の猫たちも地域環境のなかで快適に暮らせるように心を配ることこそが、地域猫管理者(主にお世話をする人)の役割であると考えると、責任は軽くありません。

●でも、いちばん大切なことは…

あと、これは家猫にもいえることですが、「一度関わると決めたからには最後までお世話をすること」でしょうか。家猫の平均寿命が約16歳なのに対し、外の猫は3〜5歳となんとも短い猫生なんです。

ちなみに最近のミケ子は、香箱座り(手を体の下にしまった姿勢)やヘソ天(おなかを見せて寝転がる姿勢)を見せてくれるようになり、1年前と比べるとリラックスして過ごせているようでほんの少し微笑ましいです。

本来、猫は外で暮らすのに適した生き物ではありません。過酷な環境下で1日1日を生き抜く彼・彼女らの姿を見ると、1人励まされている新米・地域猫管理者の自分がいるのもたしかなのでした。

もし外で健康そうなさくら猫を見かけた場合、その猫を管理している方がいると思われるので「ごはんをあげなくちゃ!」と心配しすぎることなくソッとしておいていいそう。諸々の状況にもよりますが、ご参考まで。