50代、徐々に身の回りのものを自分で片づけていきたいもの。とくに捨てづらいのが趣味のものだと言われています。取捨選択が難しい片づけの指南や自身の片づけ体験について発信している整理収納アドバイザーの原田さよさんに、趣味のものの整理の仕方について教えてもらいました。

片づけでもっとも捨てられないのは「趣味」のもの?

50代は、そろそろ自分の老後を意識して片づけようと思いはじめる時期ではないでしょうか。これまでも布団や家具などの大きくて捨てにくいもの、食器や服などの多すぎて捨てにくいもの、取捨選択が難しい思い出のものの片づけ方などについてお伝えしてきました。

体力や気力のいる大きな家具や布団は、処分すると決めてしまえば、人に助けてもらったり業者を利用したりして手放せます。好きで集めたはずの食器や服も、使わない、着られないという事実を納得できれば、案外すんなり思いきれるようになります。そんななかでも、私がなかなか減らせなかったのが、趣味のものでした。これは思い出のあるものとそうでないもの、両方が入り混じっていて悩みました。今回は、そんな趣味のものの手放し方について紹介します。

●何年も保管したままの趣味のもの、どうする?

年齢を重ねるにつれ、しみじみ思うようになったのは、自分の努力や楽しい記憶がたくさん残っているものほど捨てづらくなってきたということ。たとえもうやめた趣味でも、作品やテキストだけでなく、余った材料さえ手放すのが惜しく、寂しいと感じるようになりました。

前に紹介した子どもたちの思い出のものも、母親としての努力や楽しい記憶がたくさん残っていて片づけにくかったのですが、自分の趣味のものはもっと苦労しました。「趣味なら再開できるかも?」という思いがどこかにあったのです。でも、そんな日は何年経っても来ませんでした。途中、オークションに出品してほかの人に使ってもらうようにしたものもありますが、出品もすぐに億劫になってしまい、大半のものは何年も保管したままになりました。

●収納には「今よく使うもの」だけを入れておきたい

なかなか減らせなかった趣味のものですが、思いきって全部見直すことに。まず、お人形づくりにはまっていたころの細々した布や型紙、綿やリボンや毛糸などから手放しました。飾ることもなくなっていたものを、またイチからつくる気になるとは思わなくて。子ども服の型紙や端切れは懐かしさもあり最後まで迷いましたが、もういりません。その子はもう2人の子の母親になって日々を回しているのだから、私も前を向くことにしました。

このように趣味のものを見直そうと思ったいちばんの理由は、それらを入れていた押し入れに、「今よく使っているもの」だけをしまいたいと思うようになったからです。

押し入れやタンスは、使わないものを入れておく場所ではなく、使っているもの、いついつ使うとわかっているものをしまう場所。たとえ好きだった趣味のものでも、生かされていないものをしまっておくと、死蔵品になってしまいます。

押し入れを有効に使えるようになれば、入りきらなかったものが床に置いてあるという状況などが改善してきます。床置きのものがなくなれば、歩くときも躓かないので安心。掃除もラク。また、必要なものがすぐ見つかるようになるのはもちろん、戻すときもさっとできるのでストレスがありません。そんな理由から、思い入れのあった趣味のものでも減らしていき、これからの暮らしがラクになるほうを優先しました。

●趣味のものを処分したいときに確認すべき2つのポイント

目的がはっきりすれば、手放すのが寂しくても思いきれるものです。ただし、一気に捨てようとしないでください。大切にしてきたものを焦って手放すと必ず後悔するので、時間をかけて区別していくのがいいでしょう。

増えすぎた趣味のものを手放すときに確かめてほしいポイントは、2つだけ。迷ったら、この2つを思い出してみてほしいです。

・使う頻度は少なくなっていても、今の自分を支えてくれると思えるものであれば残す(見れば元気が出る、癒されるなど)

・趣味のものを入れておくスペースをあらかじめ決め、そこに入る分だけにする(引き出し1段分だけとか、押入れの下段の4分の1だけというように)

趣味のものというのは、すらすらと好きな理由を語れるもの。そのくらいの情熱があれば、残しておく意味は大きいです。また、どんな趣味かにもよりますが、上限を決めておくと整理が進みやすくなるので、ぜひ具体的に考えてみてください。

●趣味は自分の支えになるからこそ、整理しどき

女性の暮らしは、50〜60代にかけて大きく変わることが多いです。子育てや仕事、自身の更年期が終わったと思ったら病気になったり介護に直面したり。私もそうだったので気持ちが塞いでしまうことがよくありましたが、趣味はそういうときの自分を支えてくれました。この先もきっとそうなるはずです。

ただしその趣味の種類も、体力が落ちたり目が見えにくくなったりしてきたら変わることもあるでしょう。収納を有効に使うためだけでなく、趣味を変えざるを得なくなったときを前向きに受け止めるためにも、増えすぎたものを整理しておくのはおすすめです。これだけ趣味を楽しむことができていたのだから、次もきっとそうなる!と思えるようになるでしょう。暑い季節ですが、ぜひいちど見直してみてください。

原田さよさんの最新刊『50代はやめどき、捨てどき、楽しみどき』(扶桑社刊)が発売中。