日本では6割の夫婦が陥ると言われるセックスレス。「夫はどう処理しているんだろう」と語るのは、幼少期にかかった麻疹が原因で1型糖尿病と戦い続ける主婦の亜子さん(仮名・46歳)です。持病を抱えながらの夫婦生活について、赤裸々に語っていただきました。

夫の書斎の引き出しに隠されていた「秘密の箱」

共働きですれ違いの日々。完全レスの状況で、男性の性衝動に対して否定的な考えをバンバンぶつけていたら、夫と大ゲンカになってしまった私たち夫婦。

●夫の理想の夫婦像は「義両親」

じつは夫の両親は80歳近くなった今でも、同じ寝室で2人仲よく手をつないで眠っているらしいのです。義母は「私たちなんて、もう先がそれほど長くないから、1日1日がすごく大事なの。お父さん(義父)と『お昼ごはんのお店おいしかったわね』とか『買い物してたらもう栗が売っていたわ』と、なんでもない日常を寝る前に振り返るのが日課になっているのよ」と聞いたことがありました。

「その日のうちに振り返らないと、ボケちゃって思い出せなくなっちゃうからな」と笑いながら合いの手をいれる義父との時間が、本当に幸せに満ちあふれているのが伝わってきました。夫はあの義両親を子どもの頃からずっと見ているので、ケンカのときにも「僕も、自分の両親みたいに、年を取ってからもずっと亜子と一緒に寝たいんだ」と打ち明けられて胸がギュッと締めつけられました。

●夫の描く理想の未来と妻の本音のギャップ

私は、夫がいない方がベッドが広くてよく眠れると思っていた自分を反省しました。

しかし、夫婦生活がないほうが体への負担も少ないのは事実。どうしたらいいものか…と悩んでいたある日のことです。夫の書斎で、とてもきれいな箱を見つけました。

●私とレスだから仕方ないけれど…

とくに隠すでもなく、鍵のかかっていない引き出しに仕舞われていたすごくきれいな箱。なんだろう? と思ってフタをあけました。そこから出てきたのはエッチな本や雑誌の切り抜き。

私が住んでいるのは北陸の片田舎で、町には女性のいるようなお店もないし、不倫でもしようものなら一気に噂が広がるような土地柄。私としていない間、夫はどう処理をしているのかなと心配してはいたのですが、このきれいな箱の中にその秘密が隠されていたのです。私が病気のときなどにひとりでしていたのかな? と、いろいろ想像してしまいました。

ショックというより、どうしたらいいものかなぁという悩みがさらに深まった感じです。まるで思春期の男の子の母親になったよう。でも、少しホッとした気持ちもありました。

40代で行為が復活。でも、じつは負担に感じていて

その頃40代に入り、もう子どもはつくらず、2人だけの人生を楽しんでいく道を選んだ私たち。夫とケンカしてピリピリした空気になったとしても、行為があるとまた元通り仲よくいられました。

そんなことの繰り返しで、ここ数年は月に1度くらいは夫婦生活をもつようにはなったのですが、やっぱり本音は負担に感じています。

●本音では、しなくてすむなら「もうしたくない」

それでも月1で夫婦生活をするようになったのは、夫と完全レスだった渦中のとき、何度か話し合いをしていくなかで、「できるだけ自分が不能になるまではくっついていたい」という夫の気持ちを知ったから。

私は、低血糖を起こして最後までできなかったらどうしようと毎回プレッシャーに思っていたのですが、夫は「それ自体がすべてじゃないんだよ。ただくっついているだけでも十分満たされている」と言ってくれたのです。救われた気持ちになりました。

けれどお互い40代半ばに差し掛かり、仕事もそれなりのポジションになって、夫が嫌いなわけではないのですが、体力と時間がたりないんです。今でもしなくてすむならもうしたないし、「できなくたって仲がよければいいじゃない」というのが私の本音ではあります。

●「体調いいときは言ってね」と誠実な夫

あの夫婦ゲンカ以降、実際、夫から誘ってくることはなくなりました。けれど、「本当は亜子の体にとって行為自体が大変なことはわかっているんだ。なるべく休ませてあげたいとも思っている。だから『俺から誘わない』ってケンカの売り言葉に買い言葉で言ってしまったけれど、意地をはっているのではなくて。俺は、いつ挑めるかわからないから、亜子が体調がいいときに言ってくれたほうが助かる」と伝えてくれました。そんな夫の誠実さにはちゃんと答えてあげたいという気持ちになりました。

行為の最中でも、私の低血糖が起きれば即中止になってしまいます。でもできないときも、義理の両親のように手をつないで寝たり、2人でいる時間はなるべく明るい会話をして過ごすなど、夫と過ごすこれからの人生が楽しい時間になるように、私なりに考えていきたいと思っています。夫と一緒に長生きする! それが私の目標です。