料理家として活躍する飛田和緒さん。その暮らしぶりも注目されています。50代の今、実践するシンプルな暮らしのコツについて伺いました。

50代料理家のコンパクトにしているもの

飛田和緒さんの著書『おとなになってはみたけれど』(扶桑社刊)から抜粋で紹介します。

● バッグのスリム化

「はーぁー」
バッグを見るといつもため息が出る。正直いつもぐちゃぐちゃと散らかっている。その上キーケースや、眼鏡ケースを探すときにまたかき混ぜてさらに悪化する。
子どもが生まれてから荷物がぐっと多くなった。オモチャやお菓子、ティッシュ類、タオル…それはもう必要なくなったのに、なぜかその名残か、余計なものを持ち歩いている。ないと不安になるから、いつも使わないけれど、いざっていうときのために入れ続けている。
なるべくポーチや財布などは色のついた目立つものを入れようと思ってはいるけれど、黒とか紺とかやっぱり好きな色が集まっちゃうのよね。唯一、仕事仲間の作品展で買った真っ赤なポーチはバッグの中で異彩を放ち、とにかく目立ってよい。ハワイの文字も気に入っている。
今はお化粧品を入れるポーチとして持ち歩く。

携帯はリーバイスで買った白地の革に星のモチーフがついた折りたたみ式のケースに入れていた。これがとっても目立ってどこへ置いても見つかり、よかったが、ある事情で今は裸。だから一日に何度も携帯を探している(ある事情については別のお話で)。

車の移動が多く、出先で仕事をすることも多いから、大きなカゴに資料やパソコンを入れ、そこに手持ちのバッグを入れて、バッグinバッグ。さらにもうひとつ、財布と携帯しか入らない肩がけのポシェットを入れておくことも。車を降りてからどこへ行くかで、バッグを持ち替える。そして帰れば大きなカゴごと車から降ろして部屋に戻る。大移動なのである。
今はコロナ対策で、アルコールスプレーやウエットティッシュ、替えマスクなどと、さらにエコバッグも加わって、ますますバッグは膨らむばかり。

●基礎化粧品は少なくていい

とにかく面倒くさがりだから、基礎化粧品はできれば少ないほうがいい。いろいろ買っても結局使わずじまいのことも多くて、最近は化粧水とクリームのみ。ときどき美容液をちょっとつけるくらい。あとはお風呂や洗顔のあとに余裕があるときにはシートパックを顔にのせる。
朝はお弁当や朝食をつくっているあいだ、パックをしながら台所に立つこともある。メーカーはとくに決めておらず、なくなったら、そのときに雑誌やテレビで宣伝していたり、出かけた先で見かけたものだったり、友人からおすすめされたり、いただいたりしたものを使う。
成分とか、ナチュラルなものとかも、あまり気にしてないから言われたままに。ただただ肌が乾燥しないようにしたいので、顔を洗ったらすぐにつける、を心がけている。
海辺に越してからは日差しが強いので、朝は顔を洗っていなくてもまずは日焼け止めを塗る。
朝はバタバタと忙しいので、洗顔と基礎化粧の時間を後回しにすることもあり、そのときにもまずは日焼け止め。もう手遅れかもしれないけれど、日焼けすると乾燥がひどくなり、あとのケアが大変になるので、できる限りのことをする。慌ただしい時間が過ぎ、ほっとひと息つけるときに洗顔と基礎化粧を改めてする。

●お化粧はミニマムで

じつは、お化粧は仕事のときのみ。普段はほとんどしていない。近所への買い物のときにちょっと肌色がつく日焼け止めとリップを塗るくらいで、ノーメイク。
ただ、最近は眉毛が薄くなってきており、眉は描いておこうとは思っているけれど、まだ習慣にはなっていないから、娘によく注意される。思い出すのは母の眉。あるとき突然眉の毛並みがそろわず、いろんな方向へ毛が向いてしまって、眉ブラシをしてもどうにも収まらないと言い出した。確かに見ると、大半の毛が下を向いていて、あとは右へ左へ、上へと気ままに伸びていた。カットをしてもうまくいかず、わたしは母の眉を整えてあげることができなかった。
ああー、わたしもあのときの母に近づいている。
メイク道具は、シャネルのものを長く愛用している。シャネルが気に入っているのはパッケージが黒くてシンプルなデザインだから。毎年多少のリニューアルはあるけれど、ほとんどデザインが変わらないところがいい。
最近、娘もお化粧に興味を持って、休日出かけるときなどはずいぶんと時間をかけてお化粧を楽しんでいることもあり、ときどきJK使用のメイク道具を借りて試しているところ。これがなかなかよくできていて、発色がよかったり、のびがよかったりして感心する。
下地を塗ってファンデーションを塗り、眉とアイラインを引き、マスカラをつける。最後にチークをポンポンとのせて出来上がり。近頃、まぶたの張りもなくなっているからラインが引きにくくなってきてペンシルタイプからリキッドに替えた。
肌の調子でいうと、顔だけでなく、体全体が乾燥気味。とくに冬になると、かかと、ひじ、ひざがガサガサになり、粉がふいていることもある。
ヨガやストレッチのクラスに参加することがあるので、冬でも素足になることが多く、かかとの手入れは欠かさず続けている。
あるモデルさんのインタビュー記事で見たのだが、ベッドサイドにクリームを置いていて夜寝る前と、起きた直後にかかとにクリームを塗るという。こうしておくと塗り忘れがない。
すぐに、わたしもまねする。ちょっとしたことだけれど、日々時間に追われていると、こういうささやかな小さな積み重ねが大事になってくると実感している。

飛田和緒さんの新刊『おいしい朝の記憶』(扶桑社刊)は発売中。