NASAとアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)は原子力ロケットエンジン(核熱ロケットエンジン)の開発プロジェクト「Demonstration Rocket for Agile Cislunar Operations(DRACO)」を進めています。新たに、原子力ロケットエンジンの設計やテストを航空宇宙企業ロッキード・マーティンが請け負うことが明らかになりました。加えて、NASAとDARPAは原子力ロケットエンジンを搭載した試験機「X-NTRV」を2027年に打ち上げる計画も発表しています。

DARPA Kicks Off Design, Fabrication for DRACO Experimental NTR Vehicle

https://www.darpa.mil/news-events/2023-07-26

NASA, DARPA Partner with Industry on Mars Rocket Engine | NASA

https://www.nasa.gov/directorates/spacetech/nasa_darpa_industry_partner_mars_rocket_engine





世界中の研究機関や企業が宇宙開発を進める中、地球と月の間に広がる空間「シスルナ」における安全保障や物資の輸送手段に関する議論も活発化しています。DARPAはシスルナでの活動を見据えて原子力ロケットエンジンの開発を進めており、2023年1月にはNASAと共同で原子力ロケットエンジンを開発するDRACOプロジェクトを発表していました。

NASAが核分裂の熱で火星を目指す「核熱ロケットエンジン」の開発を発表 - GIGAZINE



新たに、NASAとDARPAは原子力ロケットエンジンの設計やテストの元請業者として宇宙開発企業ロッキード・マーティンを指定しました。ロッキード・マーティンは「当社は原子力技術開発の長い歴史と専門知識を有しています。DRACO原子力宇宙船は宇宙旅行の次の一歩であり、月旅行だけでなく最終的には火星旅行も効率的かつ高速に行えるようになります」と述べ、プロジェクト成功への自信をアピールしています。





DRACOプロジェクトでは、2027年に原子力ロケットエンジンを搭載した試験機「X-NTRV」が打ち上られる予定です。また、X-NTRVの打ち上げにはアメリカ宇宙軍が協力することも決定しています。

NASAによると原子力ロケットエンジンには「従来の化学ロケットエンジンと比べて2倍以上の燃料効率を実現できる」「燃料効率が向上することで搭載する燃料が少なく済み、空いたスペースに実験機材などを多く詰め込める」「航行時間が短くなり、宇宙飛行士への負担が軽減される」「化学ロケットエンジンと比べて機器に供給できる電力が増加する」といった数多くのメリットが存在するとのこと。NASAのパメラ・メルロイ副長官は「DARPAや宇宙開発企業と協力することで、人類を火星に送るために必要な技術の開発を加速させられます」と述べ、DRACOプロジェクトがシスルナ安全保障だけでなく火星旅行の実現にも大きな意味を持っていることを強調しています。