日本文化とシルバーアクセサリーの関係は古く、江戸時代中期には町人の間でも広く使用されていた。時代小説の大家である池波正太郎の「鬼平犯科帳」では、主人公である長谷川平蔵が愛用する銀の煙管(きせる)が物語を盛り上げる重要なアイコンとして使われ、銀の簪(かんざし)などの装飾品が随所に登場する。当時の日本人にとって銀製の装飾品は身近、かつ憧れのアイテムであり、また「燻し銀」の言葉が示すように経年変化によって磨きが掛かる魅力的な存在であることは間違いない。

 

今回、編集部が注目する「組紐と純銀のスマホストラップ」は、日本文化を象徴する職人が手掛けた逸品。本記事では、銀師として活躍する上川宗伯氏が先代の手掛けたループタイにインスパイアされ、そのデザインを現代風に表現した同製品の魅力を深堀してみたい。

 

伝統技術を身近に感じられる「肩掛けスマホストラップ」

日本の文化を色濃く感じさせる「組紐と純銀のスマホストラップ」は、伝統的な銀器をもっと知ってもらいたい、という想いから東京都台東区に拠点を構える「日伸貴金属」が企画を立ち上げ、創業371年を数える老舗「有職組紐 道明」と共同開発したものだ。ストラップのトップ部分と紐留め部分の銀細工は日伸貴金属の銀師(しろがねし)が手掛け、ストラップとして使用される組み紐部分は道明の匠が絹糸を使って編み上げている。

↑「組紐と純銀のスマホストラップ」発起人の銀師・上川宗伯氏

 

一般的に伝統工芸品と聞くとおいそれと手を出しにくく感じられるが、「組紐と純銀のスマホストラップ」は伝統工芸をより身近に感じることができ、実用性の高さを融合させているところが大きな魅力だ。同製品は商品名に「スマホストラップ」とあるように、現代社会の必需品であるスマートフォンを身に着けるためのツールとして開発された経緯を持つ。

 

用意されるアイテムは2タイプとなり、紐留め部分の銀細工は日伸貴金属2代目銀師の上川宗照氏、シルバーリングは当該プロジェクトの発起人でもある上川宗伯氏が加工を手掛けた。組み紐部分には職人が手作業で製作する「奈良組」と、伝統的な作業を機械で再現した「丸八組」が用意されている。色はいずれも、青と赤の2色展開。

↑江戸時代から続く銀細工と、正倉院にも残される「奈良組」、それぞれの伝統技術が光るスマホストラップ(※画像は、奈良組タイプのもの)

 

手入れをしながら育てる楽しみもある、江戸から続く伝統工芸の銀細工

「組紐と純銀のスマホストラップ」を桐製の箱から取り出して見ると、伝統工芸品ならではのオーラを濃厚に感じることができる。最近では製品精度の均一化が当たり前になっているが、銀師によって作り込まれる純銀製の紐留めとシルバーリングはひとつひとつが微妙に異なる表情を持つ。

 

紐留め部分は、継ぎ目のところも銀でろう付けしてやすりで仕上げたことで、継ぎ目の見えない美しい加工となっている。表面に満遍なく入れられた槌目(つちめ)の模様は、さまざまな角度に反射する繊細な美しさとクラフト感が融合している。また、手作業だからこそ二つと同じものが無い模様が「自分だけの」アイテムとしての価値を与えてくれる。

↑名工の手によって成形された紐留め。趣がある槌目は角度によって表情を変える

 

シルバーリングは、実測で直径約31mm、リング幅が約4mm、厚さが約1.8mm。リングの表面にはシャープな印象を与える筋状の意匠が与えられ、打刻された「宗照作 銀製」の文字が伝統工芸品ならではの渋い味わいを醸し出す。裏面に刻まれた槌目は、鈍い光を柔らかに反射する加工で、表とは違った風合いの違いを楽しめるのも魅力のひとつだ。

↑表面に刻まれたミリ単位の加工。手作業での加工なので一点物の風合いを楽しむことができる

 

伸縮性が高く馴染みやすい、オリジナルカラーの絹糸を使用した組紐

緻密に編まれた美しさが際立つ組紐にも注目したい。組紐には角打ち紐、平打ち紐、丸打ち紐が存在するが、同製品は丸打ち紐となり優しくも凛とした印象を主張。手頃な価格の「丸八組」は手編みではないが、機械編みにより伝統工芸の美しさが十分に再現されており、満足できる仕上がりになっている。均一に組まれた組紐はいずれも美しく、日本文化ならではの緻密さに溢れている。絹糸を使っていることもあり、自然素材ならではの優しくもしっとりとした質感も楽しめる。

↑伝統技法が機械編みで再現された「丸八組」

 

ちなみに、手編みで仕上げられた「奈良組」は、組台を据え、絹糸を巻いた組玉を順番に交差させて編まれていく。熟練の技が必要となり、常に一定のリズムで作業をしなければ均一の太さに仕上げることはできないという。複数色の絹糸を使用しているので、きれいな配色も楽しみたい、という人にはこちらがおすすめだ。

↑「道明」独自の技術を用いてオリジナルカラーに染色された組紐。「奈良組」は手編みで仕上げられている

 

「奈良組」には槌目が刻まれた直方形、「丸八組」には磨き込まれた円錐台形の留め具が使用され、それぞれに違った魅力を演出。組紐部分には十分な長さが与えられ、ネックストラップだけでなく、斜め掛けショルダーとして機能させることも可能だ。スマホを装着する場合には同梱される付属のタグを介して取り着け、留め具を調整することで長さを変更できる。

↑移動中でも邪魔にならない長さに調節できる(画像は丸八組・青)

 

↑手頃な丸八組でも、伝統技術ならではの風合いが十分に表現されている。性別や世代を問わずに使用できるデザインだ(画像は丸八組・赤)

 

コロナ禍も終息を見せ始め、今年の夏はお祭りや花火大会が再び盛り上がりを見せることだろう。浴衣や勘平姿で出かける人も多いと思うが、この「組紐と純銀のスマホストラップ」はそんな和装スタイルにベストマッチすることだろう。例えば、小粋な巾着と同製品でコーディネートすれば、風情のある夏の装いとしてもパーフェクトだ。落ち着いたカラーの組紐と渋いシルバーパーツの組み合わせは性別や世代を問うことがなく、ビジネスシーンで必須の社員証のストラップや眼鏡ホルダーとしても機能してくれる。

 

さらに、純銀のシルバーリングと組紐の伝統を感じさせるデザインは、ペンダントとして使用しても存在感を主張してくれる。日常的な装いに、伝統工芸を気軽に取り入れて楽しめるのは、「伝統技術を身近に感じて欲しい」という発起人の上川宗伯氏の心遣いといえよう。

↑野外できらりと輝く銀細工の美しさを、日常的に楽しめるのも嬉しい

 

デジタル社会を生きる日本人として古き良き江戸文化の「粋」を感じさせる素晴らしきアイテムをひとつ手に入れておくのも悪くない。銀製品は経年変化により表情を変え、リジットのデニムと同様 “育てる楽しさ” が味わえる。

 

今回紹介した「組紐と純銀のスマホストラップ」は、テレビ東京ダイレクトのメディア『東京もとくらし』の企画。同社公式通販サイト「テレ東マート」で購入することができる。価格は「奈良組」が3万4800円(税込)、「丸八組」が1万5000円(税込)。興味のある方はぜひアクセスしてみて欲しい。