アイドルだけじゃないの!? Z世代が抱く「推し」の概念があまりにも深い
アイドル誌『POTATO』が、今年のNo.1推し活アイテムを読者投票で選ぶ『#推し活AWARD2023』を開催中。本企画の審査委員長を務めるのが、若者のマーケティングを行うSHIBUYA109 lab.の所長・長田麻衣さんだ。毎月200人ものZ世代と触れ合う長田さんに、Z世代の特徴や推し活トレンドについて話をうかがった。
社会課題への関心、消費活動、発想力。あらゆる行動が推しと紐づく
――毎月200人ものZ世代と触れ合われているそうですが、Z世代にはどのような特徴がありますか?
長田麻衣(以下、長田)「社会課題に対しての問題意識が強く、自分たちが解決しなきゃと思っている子たちが多いです。ものすごく関心があるわけじゃなくても、常に頭の片隅には意識があって。例えば推しのコンサートグッズでSDGsを意識したものが販売されると、自分も意識しなきゃと思ったり。推しきっかけで社会課題に関心を持ち始める子もいますね」
――興味関心があることに推しが関連すると、熱量も上がるんですね。
長田「そうですね、Z世代は多くの消費活動が推しに紐づいているのを感じます。推しに会える機会がなくなってしまったコロナ禍ですらも、熱量は下がるどころか上がっていた感覚で。誕生日ケーキを作ったり、サイリウムをデコったり、創作活動が活発になっていました」
――自分で創作しようと思える発想力がすごいですね。
長田「いつも驚かされます。発想力といえば、口を開けている推しの写真を映し出したスマホに、スプーンですくったケーキを近づけて、あ〜んって食べさせているような写真を撮っている子もいて。そんな写真の撮り方、どうやって思いつくんでしょうね。どんな消費行動でも、推しに紐づけて楽しむのが上手な印象があります」
――そんなZ世代を見ていて、大変そうだなと思うことはありますか?
長田「自分が“どう見られているのか”というのを他の世代より強く意識しているので、例えばメインのSNSアカウントでは推しの話をしないようにする子も多くて。つながっているコミュニティに合わせたアカウントを2〜3個作って、使い分けていますね。
一見大変そうに思えるのですが、その子たちにとってはアカウントが1個しかないほうが大変で。周りの目が気になるから、アカウントが何個もあって交友関係が整理されているほうが生きやすいみたいです。そこの感覚の違いがおもしろいなと思います」
憧れの先輩も先生も、汎用化する“推し”という概念
――Z世代の82.1%もの人たちが「自分に推しがいる」「ヲタ活をしている」と認識している(SHIBUYA109 lab.調べ)そうですね。
長田「みんなに推しがいることがSNS上で“見える化”していることで、自分に推しがいることも言いやすいんだと思います。今のZ世代の子たちは、小さい頃からAKB48やモーニング娘。などの存在があったことで、“推し”の文化が身近で抵抗がないのも関係しているかもしれません」
――なるほど。今は友達や先輩などの身近な人に対しても“推し”という言葉を使う人が増えているそうですが。
長田「“推し”という言葉の汎用性が高くなり、使いやすくなっているのかなと思います。例えば、憧れの先輩に対して、好きとは言えないけど推しとなら言いやすかったり。推しということにしておけばフラれなくて済んだり(笑)。恋愛感情のない同性の先輩や先生に対しても使っていたりするので、絶妙な距離感を表す言葉としても便利なんだと思います」
――今回の『#推し活AWARD2023』のノミネート商品で、Z世代に刺さりそうなアイテムはありますか?
長田「ジャニーズやK-POPなどの界隈に関係なく、自由にアレンジできるものはみんなが楽しめると思うので、表紙を好みのシールやカードでカスタマイズできるこのバインダーはいいですね。カラバリも豊富で推し色を選べますし(favluv コレクションバインダー/キングジム)」
長田「このスマホケースは天才すぎる(笑)。常にアクスタを連れてお出掛けしたいという、ヲタク観点を大事にした素晴らしいアイテムですね。アクスタを立てられる穴がこんなところに空いているケースなんて、見たことない!(笑)(推部屋<おへや>ケース/推部屋<おへや>plus)」
「同じ熱量で、一緒に推し活を盛り上げていこうしているのが感じられる企業さんやアイテムは、Z世代に支持されますよね」
――最後に、審査委員長として『#推し活AWARD2023』への思いを聞かせてください。
長田「推し活は、みんなが楽しいことが一番だと思っていて。楽しみ方が増えれば推し活の幅もどんどん広がっていくと思うので、推し活の市場が盛り上がっていくことに貢献できたらうれしいです。
あと、推し活って何? という企業さんも多いと思うのですが、この企画ではヲタクの方にウケるアイテムがたくさんノミネートされているので、推し活を支えるよりよい商品作りのヒントになったらいいなと願っています」
■プロフィール
長田麻衣●おさだ・まい
総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPR サポートを経て、2017年に株式会社SHIBUYA109エンタテイメントに入社。SHIBUYA109 マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018 年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround 20(15歳〜24 歳の男女)と接する毎日を過ごしている。
宣伝会議等でのセミナー登壇・TBS『ひるおび!』コメンテーター・著書『若者の「生の声」から創る SHIBUYA109式 Z世代マーケティング(プレジデント社)』、その他メディア寄稿・掲載多数
■#推し活AWARD2023
投票期間:2023年6月7日(水)〜6月30日(金)23時59分
投票結果は、2023年8月7日(月)発売の『POTATO』9月号の誌面と、POTATO webの「#推し活AWARD2023」特設サイトにて発表。
特設サイト:https://potatoweb.jp/oshikatsu-award-2023/
■#推し活AWARD2023 期間限定ポップアップ概要
開催期間:2023年8月4日(金)〜8月18日(金)
会場:SHIBUYA109 B1F IMADA MARKET POPUPスペース
(住所:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂2丁目29-1)
撮影/我妻慶一 取材・文/田中千尋