仕事で教えなきゃいけないの!? ニュージーランドで起きるキャッシュレス化の副作用
日本でも普及が進むキャッシュレス決済ですが、ニュージーランドではとうの昔から当たり前。全く現金を使わない「完全キャッシュレス社会」へと移行することも、そう遠い未来の話ではなさそう。しかし、キャッシュレス化で先を行く同国ではその副作用も現れています。
ニュージーランドは、金融機関の口座残高内ならカード1枚で決済できる「EFTPOS(エフトポス)」を1985年に導入。それ以降、デビットカードのようなこの支払い方法が主流となっています。ニュージーランド準備銀行が2022年に発表したデータによると、15歳以上の国民のデビットカード保有率はコロナ以前の2017年でも96.2%と極めて高い比率でした。
スーパーなどでは現金の取り扱いがないセルフレジがほとんどで、銀行でさえ現金を扱わない店舗が増えています。飲食店でも現金の支払いは全体のわずか10%ほどで、大多数はEFTPOSやクレジットカード、Apple Payなどのキャッシュレス決済を使用。子どものころからカード決済に慣れ親しんでいて、現金を全く持ち歩かない大人も決して珍しくありません。
子どものころから現金知らずのツケ
お財布いらずの便利なキャッシュレス決済ですが、そのおかげでニュージーランドには現金の数え方がわからない人がたくさんいます。現金を数えることができなくても普段の生活ではあまり困らないため、親からも教わらないことが多いようです。
筆者自身、現地の飲食店のマネージャー業務に携わっていたことがありますが、スタッフのトレーニングで現金の数え方から教えなければならないのは日常茶飯事でした。世の中にキャッシュレス化が広く浸透し、「お金=現金」という感覚が薄くなった証拠と考えられるでしょう。
ニュージーランドで見られるこの副作用は、日本を含めキャッシュレス化が比較的ゆっくり進んでいる国でも起きる可能性があります。人間がこれまで当たり前にできていた計算能力がキャッシュレス化によって衰えるということは、ビジネスだけでなく社会にとっても大事な教訓と言えそうです。
執筆者/磯村さやか