マイレージの使い道に悩んでいる人はJALのバンコク線がオススメです(写真:やえざくら/PIXTA)

2023年4月以降、国際線が次々に増便され、海外旅行回復のトレンドが一層顕著となってきた。コロナ禍の間、マイルを使っていなかったことから、マイレージが貯まり使い道に悩んでいるという人も少なくないだろう。そうした人にすすめたいのが、ファーストクラスでの特典旅行である。

有償のファーストクラス航空券は高い。例えば、JALの羽田発ロンドン往復は諸経費込みで往復総額約341万円かかる(2023年6月中旬現在、以下同)。「比較的」安いエミレーツ航空でも往復160万円以上となる。

現在東京からロンドンまで乗継便で最も安いエコノミークラスは往復総額10万8000円程度(スリランカ航空)なのでその15〜30倍程度かかることになる。

マイルを特典航空券として利用する

そのファーストクラスも、マイレージの特典航空券として利用する場合はエコノミークラスの約3倍のマイルですむので、マイル単価としては非常に割安ということになる。

とはいえ、JAL、ANAとも日本発着のファーストクラスは原則的にアメリカ・ヨーロッパ路線にしか投入しておらず、必然的に必要マイル数が多くなり、燃油サーチャージ(特典航空券でも原則必要)も高くなる。

こうしたなか、注目したいのがJALのバンコク行きのファーストクラスだ。


(画像:JALのHPより)

2023年6月1日から、羽田11:15発バンコク到着15:40のJL31とバンコク22:05発羽田06:10(翌日)着のJL34でファーストクラスのサービスが開始された。

機材はB777-300ER。これまでも同便に投入されてきたが、その際は、ファーストクラスの座席をビジネスクラスの一部として提供する、いわゆる「ファースト開放」という形をとっていた。

筆者もその頃に利用する機会があったが、アラスカ航空の2万5000マイルで羽田からバンコクまでファーストクラス気分を味わえ、非常に費用対効果に優れたフライトだった。

とはいえ、サービスや機内食、飲み物はあくまでもビジネスクラスのものであり、ファーストクラスのような特別な「空気感」は存在しなかった。

その点、今回投入されたのは、JALのアジア内国際線では久しぶりとなる「本物」のファーストクラスとなる。

JALマイレージバンクでの必要マイル数は片道5万マイルで諸経費が2万2470円加算される。欧米なら、片道7万(アメリカ本土)・8万マイル(ヨーロッパ)に諸経費は4万円程度必要となるので、ハードルは低い。

ホノルルまでは、バンコクと同じ片道5万マイルでカバーしているが、現地での滞在費などを考慮すると、バンコクのほうがトータルの旅費はかなりセーブできるだろう。

ミシュランの3つ星の機内食

欠点は出発日の2週間以上前からの予約をしようとしても、有償航空券が優先のため、ほぼすべてキャンセル待ちとなること。そのため、前もって計画をたてた旅行には利用しづらい。ただし2週間前よりも直近になると、比較的予約しやすいようだ(6月11日時点では14日のうち、9日は予約可能だった)。


機内食は岸田周三シェフも監修している(画像:JALのHPより)

なお、羽田発バンコク行きもバンコク発羽田行きも必要マイル数は同じだが、羽田発バンコク行きのJL31がおすすめだ。

同便の場合、16年連続でミシュランの3つ星を獲得しているカンテサンスの岸田周三シェフの監修する機内食や、世界中の民間航空機に搭載されるシャンパンのなかで最も高価であるSALON2013(ネット上の実勢価格は約22万円)が提供されるからだ。


SALON2013が提供される(画像:JALのHPより)

筆者が2017年11月に利用した際は日本出発時にSALON2006(当時の実勢価格で約8万円)が往復分として3本搭載されていたが、いまは日本発限定で1本のみ。だが、仮にグラス1杯しか飲めなくても、1本あたり8杯どりの場合、1杯3万円近い金額となる。

また、羽田発なら、JALの国際線ファーストクラスラウンジが利用できるのに対して、バンコクでは、ビジネスクラスやJALマイレージバンクの上級会員組織JGC(JALグローバルクラブ)会員と同じサクララウンジ利用が基本となるのも大きな違いだ。また、帰りは夜行便のために、フライトそのものを楽しむ余裕がどうしても少なくなってしまう。

JALはワン・ワールドに加盟しているので、JAL以外での提携航空会社のマイレージ特典でも予約が可能だ。例えばアメリカン航空のマイレージプログラムであるアドバンテージでは、バンコクまでJALと同じ5万マイル。ただし、燃油サーチャージは徴収されないので、諸経費は31.85ドル(約4400円)ですむ。

さらに同プログラムの場合、同じ5万マイルで中東までカバーできる。例えば、羽田(JALファーストクラス)→バンコク(カタール航空A380ファーストクラス)→ドーハ(カタール)でも、同じ5万マイルでカバー可能だ。だが、両区間ともファーストクラスの特典の空いている日を見つけるのは難しい。

ファーストクラス、いつ乗るべき?

ブリティッシュ・エアウェイズのマイレージプログラムであるエグゼクティブクラブの場合、羽田からバンコクまで5万1500ポイント(単位はAvios)で諸経費が2万2470円と、JALマイレージバンクとほぼ同条件。アラスカ航空のマイレージプランでは、ファーストクラスの特典そのものが表示されない。

このファーストクラス、いつ乗るべきなのだろうか。少なくとも2024年5月までは、JALのバンコク線にファーストクラスが投入されるようだが、アジア内のファーストクラスはいつ投入が中止されてもおかしくない。

前述したカタール航空のアクバ・アル・バクルCEOも2023年6月3日、ブルームバーグへのインタビューのなかで、次世代の長距離路線用航空機にファーストクラスを設置しないことを明らかにしている。できるだけ早いうちに、というのが解答となりそうだ。

ANAの場合、ヨーロッパないしアメリカ路線にしかファーストクラスは搭載されていない。そのため、ホノルル往復で12万マイルが最低のマイル数とかなりハードルが高くなる(片道での特典航空券発券はできない)。

ただし、羽田〜香港間のNH859・NH860のB777-300ERは2023年6月にかぎり、THE Suiteとよばれるファーストクラスをビジネスクラスの利用者に開放している(B787での運航便は対象外)。

一般人でもファーストクラスに手が届くという意味で、現状ではANAよりもJALに軍配が上がりそうだ。

(橋賀 秀紀 : トラベルジャーナリスト)