「体育座りは腰に悪い」のは本当? 痛くなる原因は? 姿勢調整師に聞く
学生時代に両膝を抱えた状態で座る、いわゆる「体育座り」をしたことがある人も多いと思います。中には、「体育座りの姿勢がつらい」「腰が痛い」と感じる子どももいるようで、SNS上では「体育座りは腰に悪い」「腰や内臓に負担がかかる」といった声が上がっています。
体育座りは、本当に腰に悪い座り方なのでしょうか。体育座りをすると、腰が痛くなるのはなぜなのでしょうか。小学校などで正しい姿勢を指導する、姿勢調整師の肥田明子(ひだ・あきこ)さんに聞きました。
関節や筋肉に問題がある可能性
Q.体育座りをしたときに、「姿勢がつらい」「腰が痛い」と感じる人もいるようです。体育座りは、体によくない座り方なのでしょうか。
肥田さん「体育座りは、体の構造が正常であれば、問題なくできる座り方です。体育座りをしたときに『つらい』『腰が痛くなる』と感じた場合、座り方が悪いというよりは、関節の動きや筋肉の状態に問題がある可能性があると考えます。
ただし、体育座りは腰から背中を丸めて座る行為なので、毎日1時間以上その座り方をすれば、腰に負担がかかります。また、座る行為は、立っているときよりも腰への負担が40%ほど増すというデータもあります。体育座りにかかわらず、長時間座り続けていれば、腰に負担がかかることを知っておいた方がよいでしょう。
体育座りが背骨や股関節に与える影響ですが、体の構造が正常で長時間座らないのであれば、問題はないと考えます。なぜなら、背中と腰の骨にゆがみがなければ、丸めることができるようになっているからです。
股関節は、17〜18歳で完成するといわれていますが、はまっている足の骨の先端は球体なので、滑らかに動きます。体育座りによって、股関節が悪化するとは考えにくいです」
Q.体育座りではなく、あぐらをかいた場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。また、学校側が体育館で生徒を座らせる際は、どのような姿勢が望ましいのでしょうか。
肥田さん「あぐらは腰が丸まるので、よい座り方とは言えません。腰や背中に痛みを抱える人があぐらをかき続けると、余計に症状を悪化させる可能性があります。
体育館で生徒を座らせる際は、可能であれば椅子がよいと思います。床に座らせる場合は正座がよいですが、座布団などを敷かないと痛いことや、足がしびれるのがデメリットです。椅子と正座を比べた場合、正座の方が腰への負担は少ないです。
先述のように、長時間座り続けると腰への負担がどうしても増えるので、体のためにも座る時間だけでなく、立つ時間を設けるのも望ましいと考えます」
Q.子どもの姿勢は、どのように変化しているのでしょうか。
肥田さん「近年、姿勢がよくない子どもが増えており、『しゃがめない』『体育座りがつらい』などの声を聞くようになりました。今や小学生でも、腰痛の子がいるぐらいです。
また、背骨が左右に曲がる『側湾症』の子どもが増えてきているといわれていますが、背骨が曲がっていれば、体育座りのときにつらくなると思います。各個人の体の状態に合わせ、必要に応じて医療機関を受診することが大切です」