マスタードの中には、からしと色がよく似た商品も

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 色がよく似た調味料に「からし」と「マスタード」があります。どちらも黄色で、からしは納豆に、マスタードはハンバーガーなどに使用されています。からしとマスタードは何が違うのでしょうか。それぞれどのような栄養素が含まれているのでしょうか。栄養士の資格を持つ、料理研究家の長田絢さんに聞きました。

種子、製造方法に違い

Q.そもそも、からしとマスタードは何が違うのでしょうか。原材料について、教えてください。

長田さん「からしとマスタードは、ともにからし菜(カラシナ)の種子が使われていますが、それぞれ品種が異なります。からしは『オリエンタルマスタード(和がらし)』という品種の種子、マスタードは『イエローマスタード』『ブラウンマスタード』という品種の種子がそれぞれ使われていますが、イエローマスタードやブラウンマスタードは、オリエンタルマスタードに比べて辛みが弱いのが特徴です。

製造方法にも違いがあります。からしは、和がらしの種子を粉末にした粉からしを水やぬるま湯に溶かした後、練って作られますが、マスタードの場合、からし菜の種子のほかに酢、砂糖、ワインが使われます。酢には辛みを抑える効果があるため、一般的なマスタードは、からしよりも辛みが弱く感じられるのです」

Q.からしとマスタードには、それぞれどのような栄養素が含まれているのでしょうか。

長田さん「からしとマスタードの両方に含まれている栄養素として、糖質の代謝に必要なビタミンB1のほか、高血圧を予防するカリウム、骨や歯を形成するカルシウム、貧血を予防する鉄などが挙げられます。

からしの辛み成分であるアリルイソチオシアネート(アリルカラシ油)は、強い殺菌作用と抗酸化作用があり、体の酸化予防や免疫力を上げるといった効能が期待できます。

一方、マスタードには、モリブデンという栄養素も豊富に含まれています。この成分は、糖質や脂質の代謝に関わる酵素として働き、鉄分が不足すると、肝臓に貯蔵されている鉄分の運搬を助け、血液を作る働きを促進するため、鉄欠乏性貧血を防ぐ効能もあります。

また、活性酸素を除去し、老化や動脈硬化を防ぐセレンという栄養素も含まれており、ビタミンEと合わせると効果が向上します。ビタミンEを含む植物油とマスタードを合わせたドレッシングはお勧めです。

このほか、マスタードの種子をつぶすと、比較的マイルドな辛み成分のパラヒドロキシベンジルイソチオシアネート(ベンジルカラシ油)が出てきますが、この成分は殺菌作用があります」

Q.からしやマスタードは、どのような料理によく使われるのでしょうか。

長田さん「先述のように、からしは強い辛みが特徴で、薬味として使われることが多いです。よく使われるのは、おでんやとんかつ、角煮、納豆、からしれんこんなどの和食系のメニューです。

一方、マスタードはハンバーガーやホットドッグ、サンドイッチ、ステーキなど洋食系のメニューに使われることが多いです。また、比較的マイルドな味わいなので、ソースの調味料としても活用できます」