回転ずし店が、回転レーンによるすしの提供をやめたらどうなる?

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 回転ずしチェーン「すし銚子丸」を運営する銚子丸(千葉市美浜区)が3月3日、回転レーンを使ったすしの提供を4月26日までに順次終了すると発表しました。同社によると、フードロスや迷惑行為への対策のためで、今後はタッチパネルによるフルオーダーシステムに変更するということです。

 回転ずし店が回転レーンによるすしの提供をやめ、オーダーシステムを導入した場合、どのようなメリット、デメリットが考えられるのでしょうか。飲食店コンサルタントの小倉朋子さんに聞きました。

「ついで買い」が減る可能性

Q.回転ずし店が回転レーンを使ったすしの提供をやめ、代わりにオーダーシステムを導入した場合、どのような影響が考えられるのでしょうか。メリット、デメリットも含めて教えてください。

小倉さん「レーンを撤去するための店内改装費用がかかるだけでなく、撤去した場所を新たに客席にするのか、料理人が調理をしている工程を見せる『ライブ厨房(ちゅうぼう)』にするのかなど、デザインの構築も必要です。また、厨房とサービス双方の人員配置や構成の作り直し、各種マニュアルの再作成、それに伴う従業員教育など、ハードとソフトの両面において、さまざまな改良が必要になります。

レーンが回る場合は『つい客が手に取ってしまう』という売り上げアップのメリットがあります。これは、客側が受け身の姿勢でも可能なシステムです。一方、フルオーダーシステムの場合は、客側が自ら行動を起こして次に食べる料理を選ぶというアクションを起こさなくてはなりません。この心理的な『ついで買い』が減少する可能性はあると思われます。

しかし、長期的な視野で考えた場合、店への信頼回復が客数増加になり得るでしょう。実際にすし銚子丸では、店内改装によって客席数を増やし、客席のプライベート空間も増やしています。オーダーシステムよる食品ロスの削減などを含め、コストカットできる側面も少なくありません」

Q.回転ずし店が回転レーンを廃止する代わりにオーダーシステムを導入した場合、提供できなくなる商品やサービスはあるのでしょうか。

小倉さん「基本的にはありません。ただし、これまで一定量を作り、レーンにのせることで安い価格で提供していた商品については、利益率を見て、今後、対策を打つ可能性はあります。作りたてならではの味を出しやすい新商品が生み出され、その結果、回転レーン時代にあった商品の一部が淘汰(とうた)される可能性はあります。

いずれの場合も、レーンの廃止による客数や客単価、売り上げの状況などを見た中で、メニューの再構築が図られるでしょう」

Q.回転ずし店では、客は回転レーンを回っているすしを取ることが多いのでしょうか。それとも、タッチパネルなどで直接注文する人の方が多いのでしょうか。

小倉さん「基本的には、タッチパネルが多いと考えます。客側の心理として、通常はまずは自分が食べたい商品をタッチパネルでオーダーします。

その上で、レーンで回ってきた料理を実際に見ることによって『ついで買い』『衝動買い』など、思わず手に取ってしまうという流れがあります。可視化されることによって、『そういえばこれが食べたかった』と客側が気付くことが多いのです」

Q.今後、回転ずし業界で、回転レーンを使ったすしの提供をやめる動きが広がる可能性はあるのでしょうか。

小倉さん「回転ずし店の『回転する』というエンターテインメント性は、日本のみならず海外にも周知されています。そのため、回転ずし業界では、これほど諸外国で認知され、人気をキープしてきた定番のスタイルを完全になくすのではなく、店舗の立地や客層などの諸条件、環境によって、オーダーシステムと回転レーンが使い分けられるようになるのではないでしょうか。

ただし、一連の迷惑行為のように、今後も回転レーンによるすしの提供時に何らかのトラブルが発生し続けた場合、レーン廃止の動きが広まる可能性も考えられます」