【スポーツメンタル】効きやすいコーピングと性格の関係を解明『ビッグファイブ』

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 「ストレス」はスポーツ選手やアスリートが常に心に留めていることのひとつではないでしょうか。特に、ストレスと付き合っていく上で、有効な予期や対処法を身につけたいと考えている方は多いと思います。そこで、この記事ではストレスの予期や対処法と個人の性格との繋がりについて解説します。

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コーピングとは

コーピングとは、感じたストレスを和らげるために意識的に行う対処反応のことです。 人は自身のストレスを客観視して把握し、ストレスに見合った自分なりの対策を講じます。 ストレスの対処にはコーピング以外に「適応機制」や「防衛機制」と呼ばれる反応も存在します。 コーピングとの違いは、無意識に行われるということです。 そのため、コーピングは本人の素質だけでなく、意識的な行動を重視して決定することができると言えます。

コーピングの例
コーピングの手法には次のようなものが存在します。

・ストレスの原因を明確化する:(例)気掛かりなことを書き出してみる、など
・ストレスの原因を取り除く:(例)不満な点を相手に伝える、など
・ストレスの捉え方自体を変える:(例)悩みごとのポジティブな面をクローズアップする、など
・ストレス反応を軽減する:(例)気分転換にリラックスする、など

コーピングは自覚的に行うものです。 そのため、思いつきで行うよりは戦略的に行った方が効果的です。 また、他人にとって効果的な方法であっても自分にも有効であるとは限りません。 コーピングを行う際には自分にあった方法を探してみることから始めると良いでしょう。

コーピングの方法は性格によって変えるべき?

コーピングにはさまざまな方法が存在します。 近年の研究によりコーピングの方法は性格の特性を示す「ビッグファイブ」に基づき変える方が効果的である、ということが分かってきています。 そんなコーピングと性格の関係について、Nature関連誌に掲載された論文「Sophie Schlatter, et al. Personality traits affect anticipatory stress vulnerability and coping effectiveness in occupational critical care situations, Scientific Reports, 2022」を基に解説します。

ビッグファイブとは
ビッグファイブとは、人の性格をつきつめて着目すると5つの次元で説明することができるとした考え方です。 人の性格はそれぞれの次元の強さを使って説明することができるとしています。 この考え方は「ビッグファイブ理論」「ビッグファイブ性格特性」「五因子モデル(FMM)」「OCEANモデル」などとも呼ばれます。 ビッグファイブは次の5つの次元を定めています。

解放性(Openness):想像力や好奇心の度合い
外向性(Extraversion):外交的か内向的か
協調性(Agreeableness)::他者に対する接し方の深さ
情動性(Neuroticism):精神の安定具合
勤勉性(Conscientiousness):物事に対する誠実さの度合い

それぞれの次元は独立しており、かつ正規分布を形成します。 そのため、例えば「外向性」の場合、極端に外向的な人や内向的な人は少なく、”中くらい”にあたる人が大多数を占めます。 仮にそれぞれの次元を「低・中・高」の度合いに分けて考えた場合、35=243通りの性格特性が存在することになります。 ただし、近年の研究ではビッグファイブの組み合わせにより大きく4通りのクラスタリング(区分け)ができる、ということがわかってきています。

ビッグファイブはコーピングの選び方に紐づいている
(Schlatter et al. 2022)では職業上の高ストレス下においてビッグファイブとコーピングの関連を比較しました。 本研究の被験者は、ER研修中の1〜5年目の研修医147 人です。 Schlatterらは、まず瞬間心拍数などを基にすることで心理的ストレスの指標を可視化しました。 被験者はクリティカルケアと呼ばれる、交通事故や心停止などによる重篤な患者に対する治療の実践に限りなく近いシミュレーションなどをこなした後に、リラクセーション法(呼吸法とも)という呼吸法によるコーピングを行いました。

この研究の結果、リラクセーション法によるコーピングはビッグファイブ性格特性によって効果に違いが生じたそうです。 例えば、情動性の高い被験者には効果があったものの、一方で勤勉性と外向性の高い被験者にはあまり効果がみられませんでした。 この研究は医療従事者などの高ストレス下におけるビッグファイブの重要性を示しましたが、スポーツ選手やアスリートにおける極度のストレス環境下においても活用されることが期待されます。

ストレスの予期・コーピングには性格特性の考慮をすることが重要

過度なストレスは競技における判断力をはじめパフォーマンスに直結する技能の低下だけでなく、日常生活にも支障を及ぼすことがあります。 コーピングはストレスの緩和を行う際に有効ですが、個々人によって最適な手法は異なります。 性格などの個人差をもとに、自分に最もあった方法を見出すことを意識してみましょう。

参照論文「Sophie Schlatter, et al. Personality traits affect anticipatory stress vulnerability and coping effectiveness in occupational critical care situations, Scientific Reports, 2022」

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。