大気中の熱を閉じ込める温室効果ガスとして二酸化炭素よりもはるかに強力なメタンが地球上のどこで大量に放出されているのか、「国際宇宙ステーションの気候を調べる調査によってメタンの排出場所を特定した」とNASAが発表しました。NASAは検出された50以上のメタン排出エリアを「スーパーエミッター」と呼び、地球温暖化を抑えるための鍵として注目しています。

Methane ‘Super-Emitters’ Mapped by NASA’s New Earth Space Mission | NASA

https://www.nasa.gov/feature/jpl/methane-super-emitters-mapped-by-nasa-s-new-earth-space-mission

Methane 'super-emitters' on Earth spotted by space station experiment | Space

https://www.space.com/emit-instrument-international-space-station-methane-super-emitters

NASA Finds More Than 50 Super-Emitters of Methane | Smart News|

Smithsonian Magazine

https://www.smithsonianmag.com/smart-news/nasa-finds-more-than-50-super-emitters-of-methane-180981045/

NASAの地表鉱物粉塵源調査(EMIT)は、空気中に含まれる鉱物の粉じんを衛星によって検出することで、粉じんが人類に及ぼす影響について理解を深めることを使命としています。しかし、EMITには鉱物の粉じんだけではなく、強力な温室効果ガスであるメタンの存在を検出するという機能があることも実証され、これにより「地球上のどこでメタンが大量に放出されているか」をマッピングできたことをNASAが2022年10月26日に発表しました。



化石燃料、産業廃棄物、または農業部門でメタンを大量に放出する施設や機器、およびその他のインフラ全般をNASAは「スーパーエミッター」と呼称しています。EMITが2022年7月に国際宇宙ステーションに設置されてから収集したデータによると、スーパーエミッターは中央アジア、中東、および米国南西部で合計50以上のエリアが特定されています。以下の画像はトルクメニスタンのカスピ海沿岸部で検出されたメタンを濃度に応じて紫や黄色で示したもので、広いものでは32キロメートル以上広がっているとのこと。



メタンは放出後20年間で大気中の熱を閉じ込める効果が、二酸化炭素と比較して1トン当たり80倍も高いと推定されています。一方で、二酸化炭素は何世紀にもわたって大気中に残るとされますが、メタンは約10年間存続するのみと考えられています。つまり、メタンの排出量が削減されれば、大気への影響が短期的に見えやすく、温暖化の進行を明確に抑えることが可能です。

プロジェクトの管理責任者であるビル・ネルソン氏は「メタン排出量を抑えることは、地球温暖化を抑える鍵です。EMITの開発とメタン検出への転用は、研究者がメタンの漏れがどこから来ているかをより正確に特定するのに役立つだけでなく、どのように対処できるかについての洞察を迅速に提供します」と述べています。また、NASAで無人探査機等の研究開発を行う「ジェット推進研究所(JPL)」の研究者であるアンドリュー・ソープ氏は、記者会見の中で「温室効果ガスをマッピングするという成果は、EMITの可能性のほんの一部にすぎません。メタンの排出源を特定することにより、人間の活動による排出を削減できるというEMITの可能性に、私たちは本当に興奮しています」と主張しています。

EMITは宇宙ステーションの見晴らしの良い場所から広い範囲を繰り返し観測することで、さらに何百ものスーパーエミッターを特定することが期待されています。EMITの主任研究員であるロバート・グリーン氏は「地球の調査を続けるうちに、EMITはこれまで温室効果ガスの排出源とは誰も考えていなかった場所を観察し、誰も予期していなかったエミッターを発見するでしょう」とプロジェクトの意義を語っています。