宇宙船内での食料自給へ 植物の宇宙環境適応能力を調査 NASA
現在、有人月面探査ミッションであるアルテミス計画がNASAを中心とした各国の連携で推進されつつある。このミッションでは、単なる月面探査だけにとどまらず、将来の有人火星探査をにらんだ様々なアイデアが盛り込まれ、その実用性が試される予定だ。
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2020年代のアルテミス計画で、人間が長期間宇宙に滞在し、長距離航行するためのテクノロジーを蓄積した後、早ければ2030年代には有人火星探査ミッションが実行に移されるかもしれない。だが、移動航行技術の蓄積もさることながら、それ以外にも食糧問題という大きな課題が横たわっている。その具体的な解決策を探るべく、NASAは宇宙で発現する植物のエピジェネティクスの研究に取り組むことを10月末に公表した。
エピジェネティクスとは聞きなれない言葉だが、国立環境研究所のホームページでは、『遺伝子の上にさらに修飾が入ったもの』と解説されている。分かりやすく言えば、遺伝子の既存の情報を変更する代わりに、遺伝子発現に影響を与える情報が追加される現象である。
遺伝子の変化に伴う生物の形質の変化には何千年もの時間を必要とするが、エピジェネティクスを植物で起こすことができれば、比較的短時間のうちに宇宙環境に適応した形質を発現させることが可能になるのだ。
NASAによれば、宇宙環境ストレスによって植物はエピジェネティクスを引き起こす可能性があり、これに関する様々な実験を今後国際宇宙ステーション(ISS)で進めていくと言う。ISSで成長し、実った種子と、地球上で収穫された種子を再び同時にISSで育成することで、いったん宇宙で発現したエピジェネティクスが次の世代に継承されるかどうかを確かめていくのが狙いだ。
エピジェネティクスの発現の仕方は、植物の種類によって異なる可能性がある。したがっていろいろな種類の植物で実験を行うことで、宇宙環境により適応しやすい植物が見出されていくかもしれない。このような取り組みにより、宇宙での食糧問題について解決の糸口が見つかることを期待したいものだ。