【▲将来の火星有人探査のイメージ(Credit: NASA/Pat Rawlings, SAIC)】


アメリカ航空宇宙局(NASA)が、新しい基軸で宇宙開発計画を立案・進行しようとしています。2022年5月に宇宙開発の“達成目標(objectives)”を立案し、商用パートナーや国際パートナーからのフィードバックを募ったNASAは、約5,000にも及ぶ膨大なフィードバックを受け取ったのちの2022年9月に改訂版となる「月および火星のための宇宙開発達成目標(Moon to Mars Objectives)」(以下、宇宙開発アーキテクチャ)を公表しました。


「どのように」ではなく「なぜ」を掘り下げて宇宙開発を進行

NASAが5月17日に公表した宇宙開発アーキテクチャの試案には、「交通と居住」「月および火星におけるインフラ」「運用」「科学」という4つのカテゴリに及ぶ計50個の達成目標が掲げられました。


宇宙開発アーキテクチャが立案された背景には、従来とは異なるアプローチで宇宙開発を進めたいNASAの意図があった模様です。従来の宇宙開発は、ミッションを達成するために必要な「開発能力(capability)」ベースで進められてきました。これに対して「達成目標」ベースのアプローチでは、宇宙探査機や科学技術といった達成に必要な「どのように(How)」を規定する前に、NASAが深宇宙開発に関して何を実施すべきかといった「何(What)」や「なぜ(Why)」に焦点を当てるといいます。



【▲ 5月に行なわれたNASAによる説明(Credit: NASA)】


その後の9月には、NASAが商用パートナーや国際パートナーから受け取った5,000程のコメントを反映した、計63個からなる達成目標の改定案が公開されました。大きく変更された点として、科学に関する達成目標が大幅に構築し直されたことがあげられるといいます。


改定前の達成目標案では、火星における宇宙開発についてサンプルリターン以外には固有の目的が掲げられておらず、月の宇宙開発のみに焦点が当てられていました。いっぽう更新された達成目標案では、将来の探査ミッションや人類の移住等に備えて、人類が他惑星の環境に耐えられるのかや資源の活用可能性など、火星の宇宙開発にも大きく焦点が当てられるようになりました。


また、既存の宇宙開発との関連づけも依然として残されているようです。今回の達成目標は、現在NASAが推進している有人月面探査計画「アルテミス」のミッション成功に焦点を当て続けながらも、将来の宇宙開発の目標すべてを支援する場面において、包括的な枠組みを保証するといいます。


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さらに、NASAはすべての達成目標に通底する9つの共通テーマも公開。国際的な義務や宇宙における責任ある行動規範と整合的に平和利用すべきといった、責任ある宇宙資源の利用についても明示的に言及されました。


NASAは今回公表した達成目標案に対して新たなフィードバックの場を提供するために、定期的な頻度でワークショップを開催する予定とのことです。


 


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Image Credit: NASA/Pat Rawlings, SAICSpaceNews - NASA updates exploration objectivesNASA - Update: NASA Seeks Comments on Moon to Mars Objectives by June 3NASA - Moon to Mars Objectives (May 2022)NASA - Moon to Mars Objectives (September 2022)

文/Misato Kadono