オス犬は「匂いを嗅ぐ」とガンの危険が!? ケンブリッジ大学の研究
犬は家の中にいても、散歩中であっても、あらゆるものの匂いを嗅ぎまわる習性があります。これは、人間よりもずっと優れた嗅覚を持つ犬が、匂いからさまざまな情報を得るためとされています。でもそんな習性によって、オスの犬はある珍しいガンに罹患する確率が高いことがわかりました。
「CTVT」と呼ばれる犬のガン。正式名称を「可移植性性器腫瘍」といい、犬の外部性殖器に発生するガンで、珍しいタイプのガンです。感染性があり、犬同士が接触すると、生きているガン細胞が移りそれによってガンが感染ることがあるそう。そんなCTVTについて、イギリス・ケンブリッジ大学の博士が調べた、ある研究論文が発表されました。
その内容によると、世界中で報告されたCTVTのデータベースを詳しく解析したところ、通常は生殖器に発生するこのガンが、鼻や口に発生する例が見つかったそう。その数は、全部で約2000件報告されたCTVTのうち、わずか32件のみですが、うち27件はオス犬で発症していることがわかりました。オス犬は、メス犬に比べて、鼻や口にこのガンが発生する可能性が4〜5倍も高いことになります。
オス犬とメス犬で鼻・口にCTVTを発症しやすい理由について、この調査を行った博士は、オス犬とメス犬の行動の違いを指摘しています。オス犬はメス犬より、他の犬の生殖器の匂いを嗅いだり舐めたりすることが多いそう。CTVTはガン細胞が感染するため、それによって鼻や口にガン細胞が移って感染する可能性があると見られています。
このCTVTは、そもそも数千年前に1匹の犬の細胞から発生したと考えられています。感染性のガンであるため、その犬が死んだ後も、ガン細胞は他の犬に感染を広げて、今日でも世界中の犬にそれが広がっています。国単位でみればまだ症例数は少なく、珍しいガンの一つではありますが、自然界で生まれた最も古い感染性ガンの一つとも言えます。
犬が他の犬の匂いを嗅いだり、周囲の物の匂いを確認したりする行為は、犬にとって必要不可欠。匂いを嗅ぎまわることを禁止すると、犬に大きなストレスを与えてしまうそうです。とはいえ、そんな行動によってガンのような病気にかかる可能性があるなら、飼い主は心配するもの。普段から飼い犬の様子をよく観察し、わずかな異変を感じたらできるだけ早く獣医に相談することが大切かもしれません。
【出典】Strakova, A, Baez-Ortega, A, Wang, J, Murchison, EP. Sex disparity in oronasal presentations of canine transmissible venereal tumour. Vet Rec. 2022;e1794. https://doi.org/10.1002/vetr.1794