米フロリダ州のケネディ宇宙センターで、出発を前にポーズをとる若田光一飛行士(写真・ロイター=共同通信)

 米航空宇宙局(NASA)と米スペースXは、日本時間10月6日午前1時に若田光一飛行士ら4人が乗る宇宙船「クルードラゴン」5号機の打ち上げに成功した。宇宙船は国際宇宙ステーションに向かい、今後半年間滞在する予定。月や火星の表面を走る探査機を用いる潤滑油の開発に向けた実験や、宇宙環境が加齢や精神に及ぼす影響についても調べる。

 若田さんは今回が5度目の飛行。米国やロシアなど他の海外の飛行士3人はいずれも初の宇宙飛行で、ベテランの若田さんがチームのまとめ役も務める。

 もっとも若田さんは日本人宇宙飛行士のなかで最高齢。現在、宇宙航空研究開発機構(JAXA)に所属する日本人宇宙飛行士6人の平均年齢は52歳で、このうち3人が55歳以上と宇宙飛行士の高齢化が進んでいるという。

「現在日本の宇宙飛行士は皆さん中年です。その中で今回のミッションに一番適した飛行士として若田さんが選ばれました。若田さんはエンジニアでもあり、パイロット出身だったり医者出身の他の飛行士よりミッションに合っていたとNASAが判断したのでしょう」(JAXA広報)

 宇宙飛行士を目指す若い人材は現れないのか? と思いきや、じつは宇宙飛行士募集に応募が殺到していた。JAXAは2022年2月、13年ぶりに宇宙飛行士を募集。すると応募者は、4127人にも上ったという。

 前回募集時の2008年は963人だったため、今回で約4.5倍も伸びた計算になる。JAXAの発表によれば、今回応募したうち最も多い世代は30代で1850人。60代以上も69人の応募があった。女性も919人の応募者がいた。

 応募者が激増した理由をJAXAの広報担当者に尋ねると、今回の募集には、いくつもの「条件解除」があったという。

「まず、これまでは自然科学系の4年生大学を出たことが応募の条件でしたが、今回はその条件を撤廃しました。最初の募集段階で、学歴から応募者を狭めることはないだろうという判断です。さらに、文系にも門戸を開きました」

 技術の発展により、応募できるようになった人も現われたという。

「身長の条件も158センチ以上から149.5センチ以上に緩和しました。宇宙服が進化して、身長が今までより低くても着られるようになったためです。

 加えて今回の募集は、米国のアルテミス計画で月面探査に参加できる可能性も高い。その結果、より注目されることになったのでしょう。宇宙開発への関心が高まることはありがたいことです」

 昨年12月にはZOZO元社長の前澤友作氏が、民間人として初めて国際宇宙ステーションに滞在し注目を浴びた。

「前澤氏の影響もあるかもしれません。全員ではないですが、中には前澤氏を見て応募してくる人もいました。少なくとも宇宙に関心を持つ人がいろんな分野に広がっています」(同)

 4000人を超えた応募者は、すでに書類選抜や試験を終え50人に絞られた。日本人で初めて月面に降り立つ人物が、この中から現われるかもしれない。