秋の古馬GI戦線に向けて重要なステップレースとなるGIIオールカマー(中山・芝2200m)が9月25日に行なわれる。

 GI天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)に向けては中4週とゆったりした間隔がとれるため、最近は天皇賞・秋と同じ東京が舞台のGII毎日王冠(10月9日/芝1800m)よりも、こちらを秋の始動戦とする実力馬が増えている。

 ただ、過去10年の結果を見てみると、1番人気は2勝、2着2回、3着1回と複勝率50%。及第点と言うまでには至らない。昨年のレイパパレや、2019年のレイデオロなど、断然の人気馬も馬券圏外に沈んでいる。

 今年は、GI宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)で3着と復調気配を見せた三冠牝馬デアリングタクト(牝5歳)が圧倒的な支持を集めそうだが、はたしてどうか。デイリー馬三郎の木村拓人記者はこんな見解を示す。

「デアリングタクトは、能力はもちろんありますけど、1年以上に及ぶ長い休養を一度挟んでいる馬。今回も本番ではなく始動戦ですから、まだビシッと仕上げてはこないと踏んでいます。

 人気どころではかなり安定した1頭ではありますが、2200mという距離も正直ギリギリといった印象。そうしたことを踏まえると、つけ入る隙は十分にあると見ています」

 また、外回りコースを使用する中山・芝2200mは特殊なコース形態。今回が初の中山となるデアリングタクトにとっては、これまた懸念材料となる。実際、木村記者はこう語る。

「中山の芝2200mというのは、そのコース形状からして、ビシッとキレる馬よりも、タラタラと長く脚を使えるような馬にとって一番いい舞台です。そして今回も、バビット(牡5歳)がまずは先手をとって、キングオブドラゴン(牡5歳)やソーヴァリアント(牡4歳)も前にいくと思いますので、そうそうペースが落ちることなく、上がりだけの競馬になることはないでしょう。

 つまり、残り5ハロンくらいからちょっとずつペースが上がっていって――という競馬になると思います。とすれば、このコースに合ったジワジワと伸びてくるタイプのほうが優位で、中山・芝2200mに実績のある"リピーター"を信用したいところ。というか、それが狙い目になると思います」

 そこで、木村記者は最初にコース巧者のウインキートス(牝5歳)を穴馬候補に推す。

「同馬はまず、中山実績があります。なかでも、芝2200mは3戦して1勝、2着2回。そのなかには、昨年のこのレース2着も含まれています。

 先週までの馬場傾向に基づくなら、この馬の器用な先行脚質というのは間違いなくいいですし、渋った馬場にも実績があるので、馬場が重くなっても大丈夫。この馬にとって、いい条件の舞台だと思います。

 GI馬がデアリングタクト1頭のみという今回のメンバーレベルであったら、能力的にも遜色ありません。休養明けでも仕上がっていれば、イケるはずです」

 木村記者は続いて、オープン入りして3戦目の馬にも目を向ける。

「キングオブドラゴンです。この馬もキレる脚のない馬で、タラタラッと長く脚を使うような競馬で勝ち上がってきました。中山・芝2200mも過去に3回経験していて、4着、2着、1着とまずまずの成績を残しています。

 以前は1勝クラスでも勝ちきれなかったのが、ここにきて力をつけてきました。レースぶりが安定し、だいぶ本格化してきた感があります。この馬には最も適した舞台だと思いますし、穴馬として注目しています」


オールカマーでの一発が期待されるロバートソンキー

 木村記者はさらにもう1頭、「ボコボコの馬場になったら浮上しそう」と言って、ロバートソンキー(牡5歳)を激走候補に抜擢する。

「格上挑戦だったGI天皇賞・春(5月1日/阪神・芝3200m)の7着は、距離が長かっただけで悲観するものではありません。この馬は、脚元の関係でなかなか多くのレースを使えませんけど、今回はそんなに間隔をあけずに使えるというのは、いい感じできている証。

 この馬も長く脚を使えるタイプで、中山の芝2200m向き。まだまだ底を見せていませんし、このメンバーに入っても......という期待はあります」

 先週に続いて、今週末も雨予報。木村記者によれば「馬場は読みづらい状況にある」というが、いずれにしてもタフなレースに対応できる馬が上位争いを演じることになりそう。ここに挙げた3頭は、その条件にもぴったり。キレ味ある人気馬たちが苦しむ展開となれば、いずれかがアッと驚くような大駆けを果たしてもおかしくない。