激闘来たる! カタールW杯特集

サッカー日本代表の9月の2連戦(23日アメリカ戦、27日エクアドル戦)のメンバーが発表された。カタールW杯本番を2カ月後に控えたなかで、現時点のベストメンバーは誰か。5人のライターにスタメンを選んでもらった。

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センターラインに頼りになる選手が少ない

杉山茂樹(スポーツライター)

FW/三笘薫、鎌田大地、伊東純也
MF/旗手怜央、守田英正
MF/遠藤航
DF/伊藤洋輝、谷口彰悟、吉田麻也、山根視来
GK/権田修一

 本番まで2カ月あまりに迫ったが、顔ぶれを見ると各所に問題点が目立つ。

 センターバック(CB)は大袈裟に言えば、使えそうな選手は吉田麻也と谷口彰悟しかいないという感じだ。左サイドバック(SB)は本職の選手がいない。左利きにこだわりたいので長友佑都ではなく伊藤洋輝で行きたい。右SBは酒井宏樹か山根視来か。この選択は贅沢だ。究極の選択で後者とする。

 4−3−3を選択すると、守備的MFは遠藤航の一択になる。ほかに候補がいない。大きな問題だと考える。その点を重視すると4−2−3−1で行きたくなる。4−3−3と4−2−3−1は、できれば併用したい。インサイドハーフはチャンピオンズリーガーを軸に考えたい。旗手怜央と守田英正。田中碧は3番手となる。

 右ウイングは伊東純也が一番手で、堂安律、前田大然が追う展開。左は三笘薫が一番手で、久保建英が追う展開だ。1トップ(CF)は候補がいない。上田綺世、町野修斗では物足りない。古橋亨梧は展開次第。大迫勇也が絶好調なら呼ぶべきだが、筆者が監督なら大迫と同系の鎌田大地を0トップに使う。GKは権田修一。

 ただし、これは第1戦(ドイツ戦)に限った話だ。2戦目(コスタリカ戦)では、このスタメンを半分程度はいじらないと、3戦目(スペイン戦)は戦えない。中3日で行なわれる連戦では、2戦続けて同じメンバーで戦うと、チームはエンストを起こす。その瞬間、先がなくなる。

 ベスト8など望むべくもない夢となる。センターラインに絶対的に頼りになる選手が少ないことが、日本の一番の問題だろう。

CLやELで躍動した選手を生かすべき

小宮良之(スポーツライター)

FW/古橋亨梧(上田綺世)
MF/鎌田大地(三笘薫)、久保建英(堂安律)
MF/旗手怜央、守田英正、遠藤航、酒井宏樹(伊東純也)
DF/伊藤洋輝、吉田麻也、冨安健洋
GK/シュミット・ダニエル

 代表はその時の条件で、ベストメンバーを組むべきである。その点、欧州でいいシーズンのスタートを切った選手の勢力を生かすべきだろう。とくにチャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)で躍動した選手は、今回の欧州遠征でぶつけるべきだ。

 王者レアル・マドリード戦、最後は力尽きたセルティックで、一矢を報いた形の旗手怜央は特筆に値する。日本人対決となったフランクフルトの鎌田大地、スポルティングの守田英正も、高い次元で攻防を見せた。そしてマンチェスター・Uを撃破したレアル・ソシエダで中心選手になりつつある久保建英も、ピックアップすべき人材だ。

 フライブルクで躍動する堂安律、セルティックで6得点の古橋亨梧、セルクル・ブルージュで気鋭の動きを見せる上田綺世、スタッド・ランスで適応した伊東純也のよさも引き出したい。残念なのは、ボルシアMGの板倉滉の離脱。ヒザのケガでW杯も間に合うか。シュツットガルトの伊藤洋輝、グラスホッパーの瀬古歩夢がバックアッパー候補だが......。

 過去に用いた4−2−3−1や4−3−3は目処がついているだけに、5−4−1、もしくは3−4−2−1という"攻守の厚みを変えられる"現実的布陣を試したい。そもそも左SBの人材難はアキレス腱で、ポリバレントな旗手を左ウィングバックで生かすのは一手。現代表選手は3バックにも適応でき、システム変更ではブライトンの三笘薫が切り札になる。

 選手の多くが欧州各地でプレー経験を重ね、実力は向上。森保一監督は、選手のよさを最大限に引き出す布陣を最後まで模索するべきだ。

懸案事項は左サイドと1トップ

原山裕平(サッカーライター)

FW/古橋亨梧(上田綺世)
MF/南野拓実(三笘薫)、鎌田大地、伊東純也
MF/遠藤航、守田英正
DF/伊藤洋輝、冨安健洋、吉田麻也、山根視来
GK/権田修一

 メンバー選考前最後の試合となる今回の欧州遠征は、システムとメンバーの最適解を見出す場として活用されることになるだろう。

 とりわけシステムに関しては、再考の余地がある。4−3−3で成果を挙げてきたとはいえ、受け身になることが予想される本大会を見据えれば、アンカー脇を突かれやすい4−3−3が適しているとは思えないからだ。

 4−2−3−1の利点は、守備の強度を高めるだけではない。ドイツで出色の活躍を見せる鎌田大地を有効活用するためにも、こちらの布陣のほうが適していると考えられる。

 懸案事項は左サイドと1トップだ。新天地で不調にあえぐ南野拓実を置いたのは、これまでの序列を踏まえてのもので、選考理由としては後ろ向きではある。三笘薫の存在もあるが、彼はやはりジョーカーとして起用したい。

 もっとも南野もこの位置が適性ではないのだから、悩ましいところではある。所属先で左でもプレーしている鎌田との位置を、逆にしても面白いかもしれない。

 大迫勇也不在の1トップも決め手を欠く。大迫に近しいのは上田綺世だが、状態的には古橋亨梧になるだろう。もっとも裏抜けを武器とする古橋の能力は、現代表では生かされていない。その意味でも起点にもなれ、キラーパスも出せる鎌田がトップ下にいることは理にかなっていると思われる。

ドイツ戦を想定した戦い方を徹底すべき

中山 淳(サッカージャーナリスト)

FW/南野拓実(三笘薫)、鎌田大地、伊東純也(堂安律)(久保建英)
MF/田中碧(旗手怜央)、守田英正
MF/遠藤航
DF/中山雄太、吉田麻也、冨安健洋、酒井宏樹
GK/権田修一

 今回の最大の目的は、最も重要であるW杯初戦のドイツ戦を想定した戦い方を実践することだ。本来なら、選手と戦術を変更して挑みたいコスタリカ戦やスペイン戦に向けたテストも行ないたいところだが、時間が限られているため、まずはドイツ戦に集中すべきだろう。

 ドイツはハイプレスをベースとした攻撃的サッカーが身上。チーム戦術の練度も高く、何も準備しないで試合に臨めば自陣に押し込まれるだけで、大敗の可能性さえある。それを避けるためにも、自陣でボールを奪ったあとのプレーをパターン化し、確実に敵陣までボールを運ぶ方法を共有しておく必要がある。それは、6月のブラジル戦の反省点でもある。

 たとえば、鎌田大地を0トップ的に配置し、ボールを奪ったら鎌田に当てて、前を向いた状態の田中碧もしくは守田英正がリターンを受け、素早く右の伊東純也の前のスペースにボールを供給する。

 スペースがあれば、伊東の速さはドイツにも脅威を与えられるはず。少なくとも、敵陣までボールを運び、地域を挽回することはできる。

 そして、いざ勝負を仕掛ける時には、インパクトプレーヤーの三笘薫を投入。あのドリブル突破は、相手が疲労し始める後半に絶大な効果を示すだろう。堂安律、久保建英の俊敏性にも同じことが言える。

 とにかくドイツに勝とうとするなら、チーム戦術の徹底は必須だ。だからこそ、タイプは異なるものの、アメリカ戦とエクアドル戦をそのための予行演習の場とすべきだろう。

鎌田大地、旗手怜央の可能性を探りたい

浅田真樹(スポーツライター)

FW/久保建英、鎌田大地、堂安律
MF/旗手怜央、遠藤航
MF/守田英正
DF/伊藤洋輝、谷口彰悟、吉田麻也、冨安健洋
GK/シュミット・ダニエル

 9月に2試合しかないのが残念なくらい、フォーメーションごとに試したい選手はたくさんいる。当然一枚の図にまとめるのは難しいが、ひとまずここでは4−3−3で選手を配した。試すことがひとつのテーマなので、あえて入れるまでもない選手は一部外している。

 なかでもいろんな形で起用の可能性を探りたいのが、鎌田大地。4−3−3ならインサイドMF、4−2−3−1ならトップ下での起用が現状のベストなのだろうが、チーム状況を考えると、4−2−3−1のボランチ、4−3−3のCFはどうだろうか。大迫勇也の状態が不透明な上、過去の試合でスピード系のCFがあまりハマっていないことからも、鎌田=CFは見てみたい。

 そしてもうひとり、可能性を探っておきたいのが、旗手怜央。セルティックでも左インサイドMFを務めているが、左SBとしてのセンスのよさも川崎フロンターレ時代に証明済みだし、4−2−3−1なら2列目はもちろん、時間や状況次第ではボランチで使っても面白そうだ。

 また、4−3−3を前提にぜひトライしてみたいのが、アンカー守田英正、インサイドMF遠藤航の組み合わせ。つまり、従来の配置を入れ替えるわけだ。遠藤が一列前に出る守備は相手にとって脅威となりうるし、守田の攻守両面でのバランス感覚は、むしろアンカー向き。きっと新たな発見があるはずだ。