DeNA・嶺井博希【写真:中戸川知世】

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年に4回ほど観戦会を実施、9月は沖縄から両親も駆け付けた

 シーズンに数回、DeNAの本拠地・横浜スタジアムの一塁側スタンド一角は「嶺井博希」と書かれたボードを持ったファンで埋め尽くされる。SNS上などで“嶺井一族”として話題となるこの集団は、一体何者なのか。その正体に迫った。

 DeNAの嶺井博希捕手を応援するため、2015年に横浜を拠点に誕生した「嶺井博希ファンクラブ」。このファンクラブは年に4回ほど観戦会を実施し、嶺井グッズや嶺井ボードを手に熱烈に応援する。9月10日の阪神戦は、約370人が集結。横浜を中心に名古屋や大阪、さらにはアメリカからの参加者も。故郷の沖縄からは嶺井の両親も駆け付けた。

 打席に入れば一斉に「嶺井ボード」を掲げて応援。出番がなくてもイニング間などに見せる一体感のある光景には圧倒される。嶺井の31歳の誕生日だった6月4日に行った観戦会は過去最多の1000人ものファンが集まり、SNS上では即座にトレンド入りした。創設メンバーの知念正明さんは「次の日に話題になっていることに気付いて、本当にうれしかったです」と笑顔を見せた。

 それもそのはず。これだけの巨大組織になるには7年の歳月を要した。設立は3人からのスタート。グッズショップを訪れては、売れ残っていた嶺井のユニホームやタオルを1人20〜30枚“大人買い”。「在庫をなくさないとと思ってたくさん買って、色んな人に配ったり。普及活動をしていました」と懐かしそうに振り返る。

 地道な活動の成果か徐々に会員は増加し、現在は840人。しかしイベントが盛り上がりを見せる一方で、肝心の嶺井は2021年は36試合、2020年は41試合出場に終わり2軍暮らしも長かった。観戦会をしても嶺井がいない……。本人も「盛り上げてもらっているのに出られていなくてすみません」と恐縮しながらも「心のよりどころにして頑張ります」と奮起の材料とした。

親族は4年に1度“ミネリンピック”と称される大運動会を開催

 今季はプロ9年目でほぼ1軍に帯同し、正捕手争いをリード。キャリア最高といえるほどの成績を残している。知念さんも「応援しがいがあります。観戦会も今年が一番盛り上がっています」も鼻高々。「39」のユニホームを着たファンを目にする機会も増え、グッズショップを訪れると嶺井タオルが売り切れていたそうで「こんな日が来るなんて」と感激の面持ちだった。嶺井の父・博敏さんも、この騒ぎに「凄いね。自分の息子じゃないみたい」と目を丸くした。

 ファンクラブの会員たちは、嶺井の魅力について「礼儀正しく腰が低い」「沖縄キャンプでサインをもらったときに優しい対応で好きになった」「温かみがある」などと口をそろえて「人柄」をあげる。それを聞いた博敏さんは「親に似たのかな、ハハハ」と豪快に笑い、嶺井ファンクラブらしい温かい空気が流れた。

 ところで、ファンクラブの団結力も凄いが、本物の“嶺井一族”もまた凄い。嶺井の曽祖母キクさんが7人きょうだいの長女で、そこからどんどん増えた親族は現在全国に400人弱いるのだという。なお次女のトヨさんが現在98歳で“嶺井家”の最高齢だ。

 絆もハンパない。4年に一度、夏季五輪イヤーに合わせて親族が集結して大運動会を開催。通称“ミネリンピック”は、お年寄りから幼い子まで250人ほどが参加者し、5チームに分かれてさまざまな競技を行い絆を深める。新型コロナウイルスの影響で2021年は中止したが、博敏さんは「パリオリンピックの年からまたやれれば」と2024年の復活を見据えた。なお冬季五輪の年には忘年会を開催。こちらも200人ほどが参加するそうで、もう規模が大きすぎる。

 チームを支える「ハマのシーサー」は、超団結力の強いファンクラブ会員と全国の親族に見守られながら、プロ野球の世界で戦っている。(町田利衣 / Rie Machida)