ルーキーながら巨人のクローザーを務めた大勢

32セーブの大勢がリードか?

 ペナントレースも残りわずかとなり、セ・パともに優勝争いは大詰めを迎えている。その一方で同じく熾烈な戦いが繰り広げられているのが、新人王レースだ。そこで広澤克実氏、川崎憲次郎氏、野田浩司氏の解説者3人に新人王を獲得するのは誰なのか占ってもらった。

 セ・リーグはここまで(9月15日現在、以下同)リーグ4位の32セーブを挙げている大勢(巨人)、リーグトップの39ホールドを記録している湯浅京己(阪神)、高卒3年目にして遊撃手のポジションを獲得し、チームの快進撃に貢献した長岡秀樹(ヤクルト)。さらに、17試合に先発して5勝ながら防御率2.41の高橋宏斗(中日)などが候補に挙がる。

広澤克実氏

 セ・リーグは大勢(巨人)と湯浅京己(阪神)の一騎打ちだと思います。ここまで大勢がリーグ4位の32セーブで、湯浅がリーグトップの39ホールドを挙げています。両者ともタイトル獲得が射程圏内です。ただ、大勢は4月、5月は勢いがありましたが、ここにきて少し陰りが見えてきたような気がします。

 一方、湯浅は40ホールドポイントに届くだろうし、このままだと順位は阪神のほうが上なので、湯浅が選ばれるのではないでしょうか。湯浅は球威もあるし、落ちる球種も持っている。プロ4年目ですが、実質1年目。これまでの下積みで苦労した分、怖いもの知らずの強気の投球を披露しています。

川崎憲次郎氏

 セ・リーグは大勢が新人王当確でしょう。2015年に山?康晃(DeNA)、2021年に栗林良吏(広島)がマークした新人最多セーブ記録の37に迫る勢いです。チームはシーズンを通して苦しみましたが、大勢は開幕からコンスタントに結果を残してきました。

 あえて対抗を挙げるなら高橋宏斗(中日)だったのですが......。10勝を期待していた私としては物足りないですが、150キロを超えるストレートはセ・リーグの強打者にも十分通用していました。

 ここまで17試合に先発して5勝6敗、防御率2.41、奪三振127。チーム事情もあってなかなか勝ち星に恵まれていませんが、球団の高卒2年目投手の100奪三振は、1960年の板東英二さん(126個)、2017年の小笠原慎之介(105個)以来です。

 新人王は厳しいかもしれませんが、近い将来、中日のエースとなる可能性は高いでしょうし、沢村賞を目指す投手になってほしいですね。

野田浩司氏

 セ・リーグは巨人のルーキー・大勢が最有力だと思います。これまでクローザーが確立できず、ゲーム終盤の戦いに不安があった巨人ですが、大勢の登場で劇的に変化しました。大勢のすばらしいところは、打者の左右を問わずインコースを突けるところ。腕の振りがいいので、打者は差し込まれてしまいます。

 シーズン終盤はおそらく疲れが出てきたのか、打たれる場面もありましたが、30セーブ以上挙げたというのは十分に評価できると思います。

 対抗は、阪神の湯浅京己かなと思っています。ここまで53試合に登板して、ホールド39はリーグトップです。大勢とは投げるポジションが違うだけで、貢献度は大差ありません。このまま最優秀中継ぎのタイトルを獲得すればチャンスはあるかもしれませんね。


ここまでリーグトップの56試合に登板している西武・水上由伸

リーグ最多登板の水上由伸の貢献度

 パ・リーグは本命なき大混戦となっている。当初は前半戦で6勝を挙げ、うち2完封の大関友久(ソフトバンク)が有力と見られていたが、精巣腫瘍摘出手術を受けて戦線離脱。その間、水上由伸(西武)はリーグトップの56試合に登板し29ホールドを記録。また、離脱者が続出するなかチームの危機を救ったのが柳町達と野村勇(ともにソフトバンク)の野手ふたり。さらに、「令和の怪物」佐々木朗希(ロッテ)とバッテリーを組み、完全試合を陰で演出した高卒1年目の松川虎生(ロッテ)、開幕投手に抜擢され、その後はリリーフとして活躍した北山亘基など、候補者は多数いる。

広澤克実氏

 本命は水上由伸です。西武は「山賊打線」の異名をとったように、2018、19年のリーグ優勝時、チーム打率はリーグトップながら、チーム防御率はリーグワーストでした。明らかな"打高投低"のチームでしたが、それが今季、チーム防御率はリーグ1位を記録しています。

 その立役者が水上です。リーグ2位の29ホールドをマークして、平良海馬や増田達至らととともに試合中盤以降、相手打線の反撃を封じてチームへの貢献度が高いです。

 対抗はソフトバンクの野村勇。今年は「投高打低」のシーズンで、本塁打1位が山川穂高(西武)の39本、2位が浅村栄斗(楽天)の26本。そんななか、新人ながら10本塁打をマークしているインパクトは大きいです。

 パ・リーグ新人王争いは混戦です。いずれにせよ残り試合でどれだけ印象度が増すかにかかっていると思います。

川崎憲次郎氏

 パ・リーグはソフトバンク勢を推します。大関友久は、精巣腫瘍摘出手術を受けて戦線離脱中ですが、今季18試合95イニングを投げ6勝中、2度の完封勝利が光ります。オールスターにも出場しました。

 そしてチームメイトの野村勇は、1939年の鶴岡一人さん以来83年ぶりの球団新人10本塁打。「また見たい」と思わせる思い切りのいいスイングです。パ・リーグの新人王は99年の松坂大輔以来、じつに22人中20人が投手ですが、野村勇にそのジンクス打破に挑戦してもらいたいですね。

 いずれにせよ、パ・リーグは松川虎生、北山亘基、水上由伸もいますしダンゴ状態。最後まで目の離せない戦いになりそうです。

野田浩司氏

 個人的には野村勇に頑張ってもらいたいなと。JR西日本のコーチをしている時、彼も選手としていたのですが、とにかく思いきりがよくて、当時からセンスが光っていました。打率は高くないですが、本塁打は2ケタに到達。チームが苦しいなか、野村勇の活躍は評価したいですね。

 ただ数字を見れば、水上由伸が頭ひとつリードしている印象です。リーグトップの登板数を誇り、ホールドもチームメイトの平良海馬に次ぐ2位の29。チームも優勝争いをしていますし、水上の貢献度は大きいですよね。

 松川虎生も高卒1年目ながらキャッチャーという難しいポジションをよくこなしたと思いますが、打率1割台では厳しいでしょうね。