日本代表発表で明らかになった弱点はCFとCB。カバーする手は限られている
W杯開幕まで2カ月あまり。9月23日、27日にデュッセルドルフで行なわれるアメリカ戦、エクアドル戦が貴重なテストマッチになることは言うまでもない。発表された30人の代表メンバーは以下のとおりだ。
GK
川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(清水エスパルス)、シュミット・ダニエル(シント・トロイデン)、谷晃生(湘南ベルマーレ)。
DF
長友佑都(FC東京)、吉田麻也(シャルケ)、酒井宏樹(浦和レッズ)、谷口彰悟(川崎フロンターレ)、山根視来(川崎フロンターレ)、中山雄太(ハダースフィールド・タウン)、冨安健洋(アーセナル)、伊藤洋輝(シュツットガルト)、瀬古歩夢(グラスホッパー)。
MF/FW
原口元気(ウニオン・ベルリン)、柴崎岳(レガネス)、遠藤航(シュツットガルト)、伊東純也(ランス)、南野拓実(モナコ)、古橋亨梧(セルティック)、守田英正(スポルティング)、鎌田大地(フランクフルト)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、三笘薫(ブライトン)、前田大然(セルティック)、旗手怜央(セルティック)、堂安律(フライブルク)、上田綺世(セルクル・ブルージュ)、田中碧(デュッセルドルフ)、町野修斗(湘南ベルマーレ)、久保建英(レアル・ソシエダ)。
フィールドプレーヤーを26人も選出しながら、それでも人材不足が顕著なポジションはまずCFだ。該当選手は古橋、上田、町野で、前田もギリギリそのひとりに加えることができるが、どの選手を1トップに据えても、パズルはきれいにハマりそうもない。本番を控え、これが完成形に近い顔ぶれだと提示されても、胸は少しも高まってこない。
代表での起用法にも注目が集まるブランクフルトの鎌田大地
大迫勇也の名前がないことが、その一番の理由である。32歳になった4年前のエースを、いまだ頼りにしなければならない現状にも問題を覚えるが、その名が見えない時、ここまで不安になるものかと人材難を痛感する。それに見て見ぬふりをし、ここまで放置してきた森保一監督に怒りの矛先は向かざるを得ない。
セルティックで1トップを張る古橋が、格的には一番上だ。しかしセルティックではともかく、過去に15試合出場した日本代表戦で、「古橋でいける」と太鼓判を押したくなる、うまくハマった試合は少ない。周囲との関係に問題を抱えるからだ。
言わずと知れたスピード系である。1トップでひとり突っ走ると周囲との距離は空く。1トップ下のいない4−3−3で戦う場合はなおさらだ。孤立することは見えている。大迫を万能型とすれば、古橋はストライクゾーンの狭い非万能型ストライカーだ。使うとすれば、相手が疲れた後半なかば過ぎ。ウイングのほうがいいのではないかとの見方もしたくなる。
上田は所属クラブであるセルクル・ブルージュが成績不振で、彼自身もその流れに巻き込まれている。ツボにハマれば一発はあるが、なかなかハマらない選手。彼もまたストライクゾーンの幅が狭い、コンスタントではない選手とは筆者の見立てなのだが、欧州組となっても変身したという様子はない。
国内組の町野は、東アジアE−1選手権で初代表に選ばれる前は、まさに「当たっていた」が、7月2日の名古屋グランパス戦以降は9試合で1ゴール(しかもPK)と不発だ。他に選ぶべき選手がいなかったので、仕方なく選んだという印象である。
前田も古橋同様、得点力はあるが、1トップにうまく組み込むためには周囲との綿密なコンビネーションが不可欠になる。過去にうまくいった例がいくつもあるならともかく、これからその関係を探ろうとすれば、時間的に難しいだろう。
フィールドプレーヤー26人を眺めたとき、もうひとつ決定的に貧弱に見えるポジションはCBだ。吉田、谷口、冨安、瀬古。26人に対し4人はどう見ても割合的に少ない。しかも冨安は所属のアーセナルで、ほとんど出場していない選手だ。慢性的な筋肉系トラブルも抱えている彼を、いまあえて選出すべきなのか。無理して起用すべきではないとは筆者の意見だが、彼を呼ばざるをえないところに、日本の弱みがうかがい知れる。
瀬古の選出に事態の深刻さが板倉滉が左膝靱帯を痛め、招集不能になったことは確かに痛手だ。本番に向けて暗い材料だが、だからといって冨安を含め4人しか選ばないというのはどういうことか。W杯でベスト8を目標に掲げる(5試合を戦おうとする)監督のすることではない。
板倉に代わって選ばれた瀬古は代表キャップ0だ。東京五輪でも22人のメンバーに選ばれながら、森保監督から1分もプレー機会を与えられなかった。U−24で同じ監督から冷遇された選手が、W杯を2カ月後に控えたいま、急にA代表選出される姿に事態の深刻さを見ることができる。
戦力として計算できるのは吉田と谷口の2人だけ。CFよりも悲惨な状況である。事態の深刻さを全面に訴え、逆になぜもっと新戦力を試そうとしないのかと、意見したくなる。問題点が明るみに出ないように、隠そうとしているのではないかと詮索したくなる。
CBとCF。まさに森保ジャパンは中心線に不安を残す状態にある。ともに可能な限り大型選手に務めてほしいポジションだ。W杯に出場する32チーム中、日本は平均身長ランキングで毎度30位前後に位置する低身長国だが、その基本的な問題点が、いま露わになっている状態だ。
一方、中盤とウイングの人材は豊富だ。好選手が僅差でひしめき合っている。この4年間で、日本の成長が見て取れる部分だ。しかし、できれば体格の大きな選手が、2人に1人以上の割合でほしいボランチやアンカーになると話は変わる。大きくて巧い選手が少ないことが、この26人の顔ぶれから鮮明になる。いわゆるセンタープレーヤーの絶対数が不足しているのだ。
そこで浮上する選手が、今季、チャンピオンズリーグ(CL)に初出場を果たした鎌田だ。先のマルセイユ戦では3−4−2−1の守備的MFとして先発している。後半の途中から2シャドーの左でプレーしているが、そこは相手ボールとなると5−4−1の4の左になる。半サイドアタッカーになる。鎌田のポジション的な適性は、真ん中に近い守備的MFのほうが高いように見えた。日本では希少な、文字通りのセンタープレーヤーであることが、この事実から浮かび上がるのだった。
CBが務まるか否かはともかく、適役は1トップ下だ。古橋などスピード系の選手をCFに据えた場合、まさに大迫と似たタイプの鎌田がその役をになう必要がある。そのうえ1トップとしても十分にいける。4年前の大迫役を、同様に身長180センチとタッパもある鎌田に託すという手が、最も現実的ではないかと筆者は考える。
日本の弱点を補うには鎌田を有効活用するしかない。フィールドプレーヤー26人の顔ぶれを眺めながら、その貴重さを痛感する。ない物ねだりを承知で言えば、後方にも鎌田タイプがもうひとりほしい――。