6人の日本人選手が出場している2022−23シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)。13日、14日の両日はそのグループリーグ第2節が行なわれた。


シャフタール・ドネツク戦で先制点となるシュートを放った旗手怜央(セルティック)

 開幕週で直接対決したグループDのスポルティング(守田英正所属)とフランクフルト(長谷部誠、鎌田大地所属)は、それぞれトッテナム・ホットスパー(スパーズ)、マルセイユと対戦した。

 フランクフルトを3-0で倒し、勢いに乗るスポルティングは、このグループの最強チームと目される第1シードのスパーズをホーム、ジョゼ・アルヴァラーデに迎えた。試合が決まったのは最終盤だった。

 後半45分、CKのチャンスを187センチの長身FW、パウリーニョがニアで合わせて先制すると、その直後に交代で入ったばかりのアルトゥール・ゴメスが左から華麗なドリブルシュートを決め、2−0とした。

 昨季のポルトガルで2位のチームが、イングランドで昨季4位だったチームを完封した試合。今季の現在の成績で言うならば、ポルトガル7位対イングランド3位の関係である。概念的には番狂わせとなるが、そうした事件性は微塵も感じられなかった。少なくともポテ(ペドロ・ゴンサウベス)、フランシスコ・トリンコン、マーカス・エドワーズの3トップは、スパーズに入ってもスタメンを張れそうな実力者で、その前方向への圧力が最後までスパーズを苦しめたという印象だ。

 3−4−3の守備的MFとして2試合連続スタメンを飾った守田は、損な役回りを演じることになった。初戦のフランクフルト戦で、2得点に絡む有効なパスを送り、チームの3−0の勝利に貢献した余勢を駆り、この日も前半から光る存在だった。前半39分に前線を走るペドロ・ゴンサウベスに送った縦パスなどは、パッサーとしての能力を示す秀逸な1本だった。

 だが、後半18分に黄紙を受けると、萎縮したのだろうか、動きが消極的になっていく。両軍とも似たような布陣で、お互いの攻守が真ん中に固まり、その結果、中盤が常に混雑していたため、疲労が早めに訪れたというのが筆者の見立てである。後半27分、守田は最初の交代選手としてベンチに下がった。

チームで最も"見えている"守田

 そのあたりまで試合はほぼ互角だった。スポルティングのルーベン・フィリペ・マルケス・アモリム監督が、以降、エドワーズ、トリンコンといった実力者をスパッとベンチに下げ、新しい血を投入したのに対し、スパーズのアントニオ・コンテは、ひとりしか選手を代えることができなかった。その差が、最終盤に現れた格好だ。途中交代で入ったパウリーニョ、ゴメスが得点者になる姿にそれは象徴された。

 守田を採点するならば5.5(10点満点評価。以下同様)という感じになる。だが、限界を見せられたわけではまったくない。「もう少し偉そうにプレーしてもいいのでは」と助言したくなる。チームで最も"見えている"選手。とにかく視界が広く良好なのだ。この2試合を通して、守田からの前方へのフィードは、スポルティングに欠かせないプレーになることが証明されたと言える。

 そのスポルティングに開幕節、0−3のスコアで完敗したフランクフルトは、初戦でスパーズに0−2で完敗したマルセイと対戦した。前戦の終盤、3バックの真ん中の選手として交代出場した長谷部が、この試合では先発を飾ったことに、まず驚かされた。38歳の元日本代表選手。サッカー選手としての理想型を見る気がする。

 ヴェロドロームで行なわれたアウェー戦。鎌田も3−4−3の守備的MFとして先発出場した。4−2−3−1の3の左だった前戦のスポルティング戦から、ポジションを真ん中、やや後方に移した格好だ。守田に対して抱いた、もう少し偉そうにプレーしたほうがいいとの印象は、同じポジションでプレーした鎌田との比較に起因する。

 今季スポルティング入りした、チームでは新米の守田と、すでにチームの中心選手で、シーズン前にベンフィカへの移籍話さえあった鎌田。この差をそれぞれのプレーに見た気がする。欧州組としての風格という点で、鎌田は守田に勝っていた。とは言っても鎌田は26歳で27歳の守田より1年下だ。21歳で欧州に渡った鎌田と、大学を卒業し、Jリーグでしっかりプレーした後、25歳で欧州に渡った守田との差を見る気がする。

 ただし、両選手が現在所属するクラブのレベルは、前戦の3−0というスコアが示すとおり、守田のスポルティングが勝っている。鎌田は実力でスポルティングをほんの少し上回るベンフィカになぜ移籍しなかったのかとは、筆者の疑問だ。

たて続けに決定機を演出した鎌田

 それはともかく、鎌田がより光るプレーを見せたのは、マリオ・ゲッツェに代わり、チームの中心選手セバスティアン・ローデが投入された後半26分以降になる。これを機に3−4−2−1の2の左に入ると、持ち前の攻撃力を発揮する。

 後半33分、長谷部から出た絶好のパスをトラップミスしたプレーはご愛敬としても、その2分後、1トップ、ランダル・コロ・ムアニが放った決定的なシュートを、鎌田は見事なドリブルからお膳立てしている。ハーフウェーラインを過ぎたあたりからスルスルとドリブルで30メートル前進。ふたりのディフェンダーを置き去りにして送ったその右足アウトのラストパスは、CLの舞台においても一級品と言いたくなるワンプレーだった。

 後半34分にはシュートも決めている。アンスガー・クナウフの縦パスを受けドリブルで独走。GKの動きをよく見て左隅に蹴り込むシュートも、安心して眺められたものだ。VARの結果、わずかにオフサイドとなりゴールは取り消されたが、鎌田の評価がそれで下がることはなかった。

 その2分後のプレーもしかり。コロ・ムアニから決定的なパスを受けると、右足のインサイドでパンチの利いたシュートを放った。GKの好セーブでまたしてもゴールとはならなかったが、終盤、たて続けに決定機を演出するプレーには、頼もしさを覚えずにはいられない。

 気になるのは布陣との相性だ。3−4−2−1の2の左は、相手ボール時には5−4−1の4の左になる。4−2−3−1の3の左でプレーした前戦でも露呈したが、鎌田の適性はサイドにはない。南野拓実とほぼ同タイプになる。4−2−3−1の1トップ下がベストポジションで、適性という点では、この日、後半31分までプレーした守備的MFのほうが、4−2−3−1の3の左より大きく勝ると筆者はみる。大迫不在の代表では1トップでも十分、通用するはずである。バリバリのセンタープレーヤー。鎌田をひと言でいえばそうなる。採点するならば7となる。

 勝利したのはフランクフルトで、前半43分、イェスパー・リンドストロームのゴールが決勝弾となった。グループDの2節までの順位は以下の通り、1位スポルティング(勝ち点6)、2位スパーズ(3)、3位フランクフルト(3)、4位マルセイユ(0)。2位と3位は得失差による。

プレーに粘りがある旗手

 3人の日本人選手を擁するセルティックは、ポーランドのワルシャワで、シャフタール・ドネツクと対戦した。初戦のレアル・マドリード戦を0−3で落としたセルティックに対し、シャフタールはライプチヒに対し1−4で圧勝していた。舞台はワルシャワという代替地ながら、セルティックにとっては負けられないアウェー戦だった。

 セルティックの日本人3人衆の中で先発を飾ったのは、古橋亨梧と旗手怜央で、活躍が目立ったのは旗手だった。4−3−3の左インサイドハーフ。4−2−3−1の守備的MFにも見える瞬間があったので、その中間的な、まさしくセントラルMFとしてプレーした。守田、さらには途中まで旗手に近い守備的MFでプレーした鎌田と比較せずにはいられなかった。

 旗手は、代表スタメンに近い2人より意外性があった。面白い存在だった。欧州の舞台であまり見かけたことがない新鮮さがあった。採点をするならやはり7だ。

 接近戦に強く、プレーに粘りがある。相手が飛び込んでいきにくい独得のリズム感があるのだ。前半11分には神出鬼没ぶりを発揮した。

 ドリブルでライン際を前進する左ウイング、セアド・ハクシャバノヒビッチの内側を旗手はインナーラップ。ゴールエリアの左隅でボールを受けると、左足でゴールに流し込んだ。旗手と表示された得点者だったが、ほどなくするとUEFAは、シャフタールDF のオウンゴールと訂正した。前日VARで取り消された鎌田のプレーを想起したが、こちらは正真正銘のゴールである。

 試合は壮絶なる撃ち合いとなった。立ち上がりから両者が利かせたハイプレスがその原因で、攻撃的サッカーの真髄を見るかのような一戦だった。

 前半29分、シャフタールの左ウイング、ミハイロ・ムドリクが決めた左足シュートは、お見事と言うほかない一撃だった。ウクライナ代表の21歳は、今後が楽しみな選手である。

 古橋は不発に終わった。4−3−3を敷く日本代表で1トップを張ったときと同種の傾向を露呈させた。スピード系なので時間を稼ぐことができないのだ。プレッシングには向いているが、マイボールになった時、周囲との距離の遠さが目立ってしまう。採点するならば5だ。

 後半頭から出場した前田大然は、81分と89分にゴール前で惜しい場面に遭遇している。ネコ科の動物を連想させる、いい意味での変則的な動きを披露した。採点するならば5.5だ。

 開幕節に続き、古橋、前田よりも、日本代表チームでの順列が低そうな旗手のほうが活躍したという事実に注目したい。