釣りには何が必要?ギアと装備の基本アイテム【アジング編】
<プロが教える超初心者からの釣りデビュー講座>
最近のアウトドアブームで注目度の上がった遊びの1つが釣り。身近な水辺で手軽に楽しめて、魚がハリに掛かるときの微妙なアタリや掛かったときにググっとくる手ごたえは、他には味わえない独特の面白みがある。
釣った魚を持ち帰れば、まだまだ楽しみは続き、たとえ高級魚や大物でなくても自分で釣った魚を食べると格別においしく感じるはず。
老若男女の誰でも楽しめるのが釣りの魅力だが、いざゼロから始めてみたいと思っても、どのような道具をそろえたらいいか分からないはず。というのも、釣りといっても小物狙いや大物狙い、岸釣りや船釣り、エサ釣りからルアー釣りなど、さまざまなジャンルがあり、それぞれ専用の道具があるためだ。
▲使っているバッグは「HG ヒップバッグ」(ダイワ)。大容量のため小型の収納ケースであれば4〜5個ほど入り、ルアーやオモリなど、さまざまな小物を持ち歩ける。ウエストバッグなので、派手に動いても腰に密着して邪魔にならない
そこで入門にオススメしたいのが、海でのルアーフィッシング。身近な堤防でトライできて、道具は比較的シンプル。釣った魚をおいしく食べられるのも魅力だ。
■ルアーフィッシングとは
ルアーフィッシングは、本物のエサではなく、ニセモノのエサである“ルアー”を使った釣り。ルアーは日本語にすると疑似餌(ぎじえ)と呼ぶ。
ルアーには素材や大きさなど、さまざまな種類があり、魚を模したプラスチック製のルアーや、よく飛び沈みの速い金属性のルアー、ミミズやイソメ、小魚を模したソフトプラスチック製のソフトルアーなどが存在する。
ターゲットの魚が普段食べているエサに似せた形や動きのルアーを選ぶのが基本だが、自然界にはないような形や色でもヒットするので、自由な発想で選ぶのも楽しみ方の1つ。
また、ルアーはニセモノのエサなので、生きているように動かさないと魚は釣れない。自分が命を吹き込んだルアーに魚がヒットしたときの、本物のエサを使うエサ釣りとは一味違う“釣った感”も、ルアーフィッシングならでは。
難しそうに感じるかもしれないが、近年のルアーは巻くだけでリアルな動きをしたり、魚の好きな味や匂い付きのソフトルアーもあるので、意外と簡単に釣れることもある。
■海釣り入門のおすすめは「アジング」
海のルアーフィッシングには、さまざまな種類があるが、中でも入門にオススメなのが、“アジング”。
アジングとは、アジのルアーフィッシングのこと。アジといえば食卓でもおなじみの魚で、諸説あるものの、味が良いからアジという名がついたといわれるほどのおいしさだ。
釣り場は身近な漁港や堤防。手軽に狙える上に、群れがいれば数が釣れる“数釣り”も比較的簡単にできるため、海釣りの入門に最適だ。
アジ釣りには本物のエサを使う“エサ釣り”が一般的だが、なぜルアーフィッシングのアジングをオススメするかというと、理由は道具の手軽さにある。
エサ釣りでは、ハリにつける用のエサと群れを寄せたりとどめたりする用のエサ(コマセ)を使うが、アジングではエサを使わないため、準備する道具が少なく、手軽でクリーンに楽しめる。
竿と糸を巻き取るリールをセットで“タックル”と呼ぶが、タックル1つとルアーがあれば、すぐにでもチャレンジできるのだ。
■アジングに必要なものは何?
アジングに欠かせない道具は少ないが、専門のものを用意するのは必須。安全に釣りをするためのアイテムも、そろえておきたい。
釣るための道具と、釣る際の装備を紹介する。
【釣り具編】まずは基本的な道具から始めよう
アジングで最低限必要になるアイテムは、竿(ロッド)とリールの“タックル”と、リールに巻く糸(ライン)にルアー。
他のルアーフィッシングに比べて使うルアーがとても軽いので、軽いルアーが扱いやすい専用のアジングロッドが発売されている。
使うルアーは、オモリとハリが一体となった“ジグヘッド”に軟らかいプラスチック素材のソフトルアーをセットして使う“ジグヘッドリグ”(リグとは仕掛けのこと)が基本。より飛距離を出すために、オモリやウキを付ける方法もあるが、まずは基本のジグヘッドリグからスタートしよう。
▲アジングでメインに使うタックルは、ロッドが「月下美人 AIR AGS AJING65L-S」で、リールが「イグジストLT2000S-P」(共にダイワ)。これらは上位モデルで高価なので、エントリーモデルを買うなら、ロッドは「月下美人 AJING510UL-S」リールは「レブロス2000S-XH」(共にダイワ)がオススメ
そのため、竿はアジングロッドのなかでもジグヘッドリグ用のものを選ぶ。
リールは軽いルアーを投げやすいスピニングリールというタイプが一般的。さまざまな大きさがあるが、1000〜2000番の小型スピニングリールがベストだ。
■汎用性が高い仕掛けを用意する
▲仕掛けはケースに分けて収納。左上のケースにはソフトルアー「月下美人 アジングビーム バチコンカスタム 2.2インチ」(ダイワ)を各色、右上のジグヘッドケース「月下美人ランガンケース175 typeB」(ダイワ)にはジグヘッド「月下美人アジングジグヘッドTG」の0.5〜3gをそれぞれ収納している。ソフトルアーは他にも4タイプ常備し、下段左から「月下美人 デュアルビーム 2インチ」「月下美人 アジングビームFAT1.5」「月下美人 ビームスティック極み 1.5インチ」「月下美人 アジングビーム 極み 2インチ」(全てダイワ)
ジグヘッドリグに使うジグヘッドとソフトルアーにも、多くの種類がある。エキスパートとなればアイテムを使い分けられるが、入門者はどれを選んでいいか見当もつかないはず。
そこで、まずはオールマイティーに使えるセットをそろえよう。
ジグヘッドの重さは1g、1.5g、2gの3種類あればベストだが、どれか1つなら軽めの1gを選びたい。
ハリには、さまざまなサイズがあるが、アジは口が大きくないため、大きいものより小さいものが無難。大きなハリでは小さなアジが掛かりにくいが、小さなハリは大きなアジも掛かる。“小は大を兼ねる”だ。
ソフトルアーはサイズ、形状、カラーなど、無数にあるといっても過言ではないが、オールマイティーに使えるのが、2インチ(約5cm)の装飾が付いていないストレート系のもの。アジング用のソフトルアーは1.5〜3インチのものが多いので、そのド真ん中のサイズは汎用性が高い。
ストレート系は適度なアピール力でナチュラルなアクションが出せて、アジをスレさせる(ルアーだと見破られたり、警戒されて食われなくなる)可能性が低い。特にボディーにリブ(溝)のあるタイプは水中での抵抗が増え、リトリーブ(リールを巻くこと)やロッドでアクションさせるときの操作性が良いため使いやすい。また、潮の流れを受けやすく、フワフワした自然な動きが出せる。
カラーの違いでアタリの数が大きく変わるのもアジングの特徴。なかでも外せないカラーがクリア系。水中で潮になじむため、ルアーだと見破られにくく、日中から夜まで幅広い状況で使える。
他にも、光を当てると蓄光して光る夜光カラーや、紫外線が当たると薄紫に光る“ケイムラカラー”もよく釣れる。
カラーを変えた途端に釣れ出すのはアジングではよくあり、そのときの“当たりカラー”をいち早く見つけるのが数を伸ばす秘訣。いろいろなカラーを用意しておけば、当たりカラーにたどり着ける可能性が上がるので、釣果を上げたい人は複数のカラーを準備しておこう。
釣り場に持っていく際は、ジグヘッド専用ケースに収納すると選びやすい。ソフトルアーを仕切りのあるケースに収納すれば、使いたいカラーをすぐに取り出せて、色移りや変形もしにくくなる。それらのケースを入れるウエストバッグがあれば、ポイント移動も楽チン。
■おすすめの糸はエステルラインとフロロカーボンライン
▲ジグヘッドリグで釣る場合のラインには、ケース上左のエステルライン「月下美人 TYPE-E 白 1.5lb.」に右のリーダー「月下美人フロロリーダー3lb.」(共にダイワ)を20cmほど結び付けたものを使っている
ラインには数種類の素材があり、現在アジングで最も使われているのが、“エステルライン”と呼ばれるポリエステル製のライン。伸びにくいため感度が高く、アジの小さなアタリを感じ取りやすい。
一方で、そのままジグヘッドに結ぶと強度が落ちてしまう特性があるため、“リーダー”を結ぶ必要がある。
リーダーとは、メインのラインよりもルアーの手前に結ぶ太いラインで、結び目の強度低下または魚体や岩によってラインが擦り切れるのを防ぐためのもの。アジングの場合は結び目の強度低下を防ぐために使うので、長さは20cmほどでOK。
フロロカーボンという素材のラインは直接結んでも強度が落ちにくいので、リーダーを付けなくても使える。
リーダーに使われるラインはフロロカーボン素材が多く、アジングでは3lb.(約1.3kgの強度)程度が標準。太さで表記される場合は0.8号ほど。エステルラインよりもやや伸びやすくて少し感度が落ちるといわれるが、リーダーがいらないため、入門者にはエステルラインだけでなくフロロカーボンのラインもオススメだ。
メインラインは、エステルラインとフロロカーボンラインの1.5lb.(0.4号)が標準。エステルラインとフロロカーボンラインは硬くてコシが強いので、太すぎると扱いにくくなる。心配だからと太いラインにするのは逆効果なので注意しよう。
■持っておきたい釣りを快適にするアイテム
▲使っているフィッシュグリップは「フィッシュホルダー240C」(ダイワ)。専用ケース付きでウエストバッグに装着しても周りが汚れない。ラインカッターは「ピンオンリール 45R」(ダイワ)に取り付けて使用。プライヤーは「フィールドプライヤーR 130H」(ダイワ)を使っている。いずれもウエストバッグに装着しておくと便利
タックルとルアーがあればアジングを楽しめるが、他にもいくつか持っておくと便利なアイテムがある。
釣れた魚をつかむ「フィッシュグリップ」があると、手を汚さずにハリを外せて、危険な毒魚が釣れても安心。アジの硬いウロコ“ゼイゴ”や背ビレが手に刺さる心配もない。
結び目のあまった糸をカットするには、小型のラインカッターが便利。引くと内蔵されている糸が伸びる「ピンオンリール」にセットすれば、使い勝手は抜群だ。
小型のプライヤーは安全にハリを外せる他、曲がってしまったハリを戻す際や閉じているスプリットリング(ルアーと釣り針をつなげる金具)を開く際にも役立つ。
▲愛用している「クールラインα GU1000LS」(ダイワ)はすでに廃盤となってしまったが、後継機種の「クールラインα ライトソルト」も竿立て×2と小物入れ付きで便利。10リットルと15リットルの2サイズがある
魚を持ち帰るにはクーラーボックスが必須。10リットルほどの小型タイプが使いやすく、保冷力の高いアイテムなら遠征釣行や夏場でも安心だ。ロッドホルダー付きだと、ロッドをまとめて持ち運べるのが便利な他、タックルを踏んでしまうリスクを減らせる。
【装備編】安全面を考えた装備をそろえる
▲ライフジャケットはスリムタイプで動きやすい「DF-2021 ウォッシャブルライフジャケット(肩掛けタイプ自動・手動膨脹式)」(ダイワ)を使用。キャップはつば付きの「DC-3320W」(ダイワ)。ヘッドライトはすでに廃盤の「ZX-350」(ゼクサス)を使っているが、最近はより明るく機能的なものが充実しているため買い替えを検討中。偏光グラスは「TLX004」(ダイワ)のフレームにタレックスのレンズ。TLX004も現在は廃盤だが、形状が自分に合っているためメンテをしながら使用中。レンズのカラー「イーズブルー」は数量限定品。海中が見やすくて現在最も好きなレンズ
装備面で欠かせないのは、ライフジャケット、帽子、偏光グラス、そしてヘッドライトだ。釣りを快適にするというよりも、釣りを安全に楽しむための装備が不可欠。
陸釣りだから要らないと思われがちだが、安全性を考えライフジャケットは着用すること。水を感知すると自動的に膨らむタイプは、コンパクトで着けていても邪魔にならないのでオススメ。
つば付きのキャップは直射日光を遮って日焼けを防止するだけでなく、万が一、ルアーやオモリが飛んできても、頭部や顔の周りを守ってくれる。上からの光をカットするので、水中が見やすくなるメリットもある。
偏光グラスは雑光をカットするため、使うと水中がハッキリ見えるようになる。魚や地形が見やすくなって釣果アップにつながるだけでなく、飛んできたルアーや目にダメージを与える紫外線から目を保護する役割も持つ。
また、暗い中で移動するのは非常に危険なので、夜釣りではヘッドライトが必須。夕方から釣りをする場合は忘れずに持っていこう。
次回はいよいよ実践編。ルアーの付け方と投げ方を説明する。
<文/渡邉長士 写真/須田俊哉>
渡邉長士|1981年生まれ、千葉県出身。地元の房総半島を中心に旬なターゲットを狙うプロ釣り師。海のルアーフィッシングが得意。アジをルアーで釣る“アジング”を提唱したパイオニアで、全国にブームを広めた1人。釣り具メーカー「ダイワ」「オーナーばり」と契約し、数々のアジング製品の監修、プロデュースやテレビ、雑誌などで釣りの楽しさを発信している
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