プレミアリーグ今季注目の11人/GK&DF編  MF&FW編>>

開幕3試合が進んだ、イングランド・プレミアリーグ。世界最高峰の舞台で今季注目を集めそうな選手は誰か。そこで、英紙『ザ・タイムズ』の元チーフフットボール記者で、現在はオンラインメディア『The Athletic』のシニアフットボールライターを務めるオリバー・ケイ氏に、おすすめの11人を選んでもらった。ここではGK&DFの5人を紹介する。

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今季マンチェスター・シティからアーセナルへ移籍。重要なプレーを見せているジンチェンコ photo by Getty Images

自信に満ち溢れたパフォーマンス

GK/ディーン・ヘンダーソン(ノッティンガム・フォレスト)

 今夏にマンチェスター・ユナイテッドからローンでノッティンガム・フォレストへ移り、10位につける昇格組を支える新守護神だ。

 同じく夏に加入した新天地で目覚ましい活躍を披露している、ニューカッスル・ユナイテッドのニック・ポープも捨て難いが、自信に満ち溢れたパフォーマンスが印象的なディーン・ヘンダーソンを推したい。この2人は、イングランド代表のジョーダン・ピックフォード(エバートン)のポジションを脅かす存在でもある。

 現在25歳のヘンダーソンはユナイテッドの育成組織で育ち、10代でファーストチームに到達したものの、これまでの出場機会は29試合と限定的。一昨季はダビド・デ・ヘアと定位置を激しく争ったが、昨季に出番が激減し、今夏に通算6シーズン目の期限付き移籍を決断した。

 ユナイテッドがデ・ヘアを選んだことに落胆したと語ると、その言葉は批判の的に。それでも、フォレストに加わるとすぐさま本領を発揮し始めた。

 瞬発力ではデ・ヘアに劣るが、的確なコーチングと大きなプレゼンスで味方に落ち着きを与える。ここまでの白眉は第2節のウェストハム戦で、デクラン・ライスのPKを止め、合計19本のシュートを打たれながらも、クリーンシートを達成した。この出来が続けば、ユナイテッドと代表の首脳陣も、考えを改めるかもしれない。

好調ニューカッスルで輝く2人

DF/キーラン・トリッピアー(ニューカッスル・ユナイテッド)

 マンチェスター・シティ戦で決めた見事なFKがなくても、ここには彼の名前が入るべきだろう。それほど、ここ3試合のキーラン・トリッピアーの働きは見事だ。

 1月にアトレティコ・マドリーからの移籍が発表された時、残留争いに巻き込まれていたニューカッスルに加入したのは、カネのためではないかと訝しがられた。だがスペインでの生活に馴染めず、帰国を願っていた彼には、別の理由もあった──巨大資本を得て生まれ変わったニューカッスルのプロジェクトに加担したかったのだ。

 昨季後半戦は負傷もあって、エディ・ハウ新監督の下で復調したチームの力になれたとは言い難い。だがピッチ外でも影響力を発揮するリーダーのひとりは今季、開幕から3試合で腕章を巻き、1勝2分で6位につけるチームを支えている。

 フォレストとの開幕戦から状態のよさを感じさせ、セットプレーでもオープンプレーでも相手を脅かした。第2節のブライトン&ホーブ・アルビオン戦では、ゴールライン上のクリアなど、主に守備の貢献が光った。

 直近のシティ戦では、対面するフィル・フォーデンを巧みに抑え、前述の直接FKを沈めた。ケビン・デ・ブライネへのファウルで受けたレッドカードはVARで黄色となり命拾いしたが、あのシーンは責任感の表われと受け止めることもできる。イングランド代表でもっとも人材が豊富なライトバックの定位置争いでも、有力な存在だ。

DF/ファビアン・シェア(ニューカッスル・ユナイテッド)

 トリッピアーとは異なり、クラブがサウジアラビアの国家ファンドを中心としたコンソーシアムに買収される前から所属していた選手だ。そしてこのスイス代表DFは、じきに新戦力にポジションを奪われるだろうと見る向きもあった。

 ところがハウ監督の指導により、ミゲル・アルミロンやジョエリントンらと同様に見違えるような働きを披露するようになり、今やチームに欠かせない存在に。

 もっとも指揮官自身は、シェアの能力を疑ったことはない。ハウ監督はボーンマスを率いていた頃、当時ホッフェンハイムに所属していたシェアを獲得しようとしたことがある。また2018年にニューカッスルの選手として、シェアは鼻を折りながらもタフにプレーし、ハウ監督のボーンマスを下したことがある。

 そして昨季前半戦には定位置を約束されていなかった彼を、ハウ監督はレギュラーに据えている。

 白眉はフォレストとの開幕戦で決めた凄まじいロングシュートによる先制点だが、守備者としての本業も抜かりなく、開幕2試合の無失点に貢献している。

3連勝のアーセナルを支えるDFたち

DF/ウィリアム・サリバ(アーセナル)

 2019年夏にアーセナルと契約を結びながら、その後の3シーズンはローンでフランスに留まった。今季、満を持して所属元の一員となった若き守備者は、すぐさま最終ラインの中央に収まり、3連勝で首位に立つチームを力強く支えている。

 キリアン・エムバペと同じパリ郊外のボンディ出身の21歳は、全3試合にフル出場し、スピーディかつパワフル、そして知的な守備を披露。また直近のボーンマス戦では、左足で誰も止めようがない軌道のミドルシュートをトップコーナーに収めた。

 彼がセンターバックに入ったことにより(すでにガブリエウ・マガリャンイスと息の合った連携を披露)、昨季のレギュラーのベン・ホワイトは右に回り、負傷で出遅れた冨安健洋はベンチスタートが続いている。

 第2節のレスター戦では不運な形でオウンゴールを献上してしまったが、それ以外はほぼ完璧な出来だ。ミケル・アルテタ監督はサリバのことを「長い目で見ている」と繰り返す。だがもはやれっきとした主軸と言って差し支えない。

DF/オレクサンドル・ジンチェンコ(アーセナル)

 昨季まで所属していたシティでは、オレクサンドル・ジンチェンコは小さな歯車のひとつにすぎなかった。その頃からいい選手には違いなかったが、チームの成功に直接的な影響を及ぼす存在ではなかった。

 中盤とレフトバックを器用にこなす彼がピッチにいなくても、シティの機能性が落ちることはない──そんなふうに見られていた。

 彼がアーセナルに移ったのは、そうした便利屋的な立場から脱却し、毎試合に先発して重要な役割を担いたかったからだ。実際、ここまでの3試合は最終ラインの左のレギュラーとなり、彼の存在はミケル・アルテタ監督の掲げる攻守に現代的なスタイルを推し進める要因のひとつになっている。

 シティ時代にアシスタントコーチとしてジンチェンコを指導した指揮官は、このウクライナ代表の闘争心、汎用性、知性、技術を称え、獲得を強く望んだ張本人だ。そんな監督の期待に応えるように、守備時には冷静な対応で左サイドを封じ、攻撃時にはセントラルMF的にポゼッションを円滑にする。