Blackmagic Design導入事例:Official髭男dism「ミックスナッツ」MVの場合
Blackmagic Designによると、人気バンドOfficial髭男dismの新曲「ミックスナッツ」のグレーディングにDaVinci Resolve Studioが使用されたという。グレーディングは、ポストプロダクションの株式会社KASSENの根本恒氏が担当し、DaVinci Resolve Advanced Panelを使用して行われた。
Official髭男dismの「ミックスナッツ」は同バンドの最新シングル。遠藤達哉氏の人気漫画「SPY×FAMILY」を原作にした人気アニメのオープニング曲だ。かりそめの家族を演じる3人の登場人物たちをミックスナッツの袋に入っているマメ科のピーナッツに喩えて、同アニメ作品の世界観を表現した曲になっている。
「ミックスナッツ」のミュージックビデオは、映画のようなストーリー性のある作品で、YouTubeにアップロードされてから現在までに4,300万回の再生を突破している(2022年7月28日現在)。不気味な洋館のショットから始まるこのビデオは、ホラー調ながらポップさもあるユニークな作品だ。
監督はこれまでOfficial髭男dismの作品を多く手掛けている新保拓人氏。そして新保監督とタッグを組んで、同バンドのミュージックビデオのグレーディングを数多く手がけてきたのはKASSENのカラリスト、根本恒氏だ。
同MVは、3人の親子が不気味な洋館を訪れるところから始まる。雷とともに消えてしまった両親を探す娘は、そこでバンドメンバーが演じる謎めいた人々と遭遇する。一方、消えてしまった両親が再び登場し、親子が再会すると、ビッグバンドを率いたOfficial髭男dismが親子の前でパフォーマンスする。根本氏は次のようにコメントしている。
根本氏:新保監督は曲のパートごとに明確に演出を分ける方なので、シチュエーションの境目はグレーディングでも意識しました。この作品は最後まで何が起こるかわからない構成になっているので、視聴者が途中で飽きないように、監督の演出に合わせてメリハリのある色作りをしました。
クラシックなホラー映画のようなシチュエーションなので、導入部は怖さを意識して色を作っています。ただ、ホラー調に振り切りすぎると幅広い世代に愛されているアーティストのイメージが違うと感じたので、なるべくダークになりすぎないよう、ポップに仕上げました。バンドメンバーが着ていたユニフォームのオレンジ色や黄色やバリケードテープの蛍光色の黄色などは、あえて際立たせるようにしました。
常に意識していることは、画面の向こうに作品を楽しんでくれる大勢の視聴者がいることです。今回の作品はあえて暗めに撮っているシーンも多いのですが、ストーリー進行上問題ないところは、バンドの顔を見たいファンの人たちのために、バンドメンバーの顔は少し明るくしています。クリエイターサイドと視聴者の求める表現が必ずしも一致するとは限りません。そんな時に、そういった人たちの架け橋になれればいいなと思っています。
また、根本氏はコマーシャルやミュージックビデオの制作で求められる、様々なバージョンの作成においてDaVinci Resolveを高く評価する。
根本氏:同じ撮影素材を使って別バージョンのタイムラインがある場合、DaVinci Resolveのリモートグレーディング機能はとても便利です。色の調整をすると、そのタイムライン上のカットのみならず、他のタイムラインで使っている同じ素材のカットにも同様の調整が適用されるので、グレーディングの管理がしやすいですね。
長年DaVinci Resolveを使っていますが、他のシステムと比べて、スピードが速いことと、どんなマシンでも柔軟に使える点が気に入っています。開発スピードも速くバージョンアップのたびに良くなっていきます。また、ユーザーが多く、大抵のポストプロダクションにはAdvanced Panelがあるので、別のグレーディングルームを使う場合でもいつも通りの感覚で作業できる点もメリットですね。