旧市民球場ライトスタンド…解体を見守る 喫茶店の元店主の思い 広島
旧市民球場のライトスタンドの解体を特別な思いで見守っている人がいます。
球場のすぐそばで30年以上にわたってカープを見守ってきた喫茶店マリーナの元店主です。
1957年、カープの本拠地として誕生した広島市民球場。
原爆ドームの近くに建設され、広島市民にとって〝戦後復興のシンボル〟となっていたこの球場では偉大な記録が次々と打ち立てられました。
良くも悪くもファンとの距離が近い球場では様々なハプニングも。
多くの人に愛された市民球場…
しかし老朽化が激しいことから、2008年に51年の歴史に幕を下ろしました。
その後、解体され唯一残っていたライトスタンドもついに…
中川公一郎さん「もういすも外しているんですね。一部は(戦後の)復興の象徴としての砦だったのかな、複雑な思いですね」
スタンドを見つめるのは旧市民球場のすぐ近くにあった喫茶店「マリーナ」の元店長・中川公一郎さん。
1978年に開業した「マリーナ」は30年以上にわたってカープの監督や選手、多くのファンらが集まる人気店でした。
中川さん「ちょうどこの位置です。この位置ここから球場が見える。ここに来ると当時を思い出しますね」
中川さんが特に印象に残っているのはカープをリーグ優勝4回、そして日本一に3回に導いた名将・古葉竹識さんとの思い出。
監督時代、ホームゲームの日はほぼ毎日マリーナ通っていたそうです。
中川さん「うちで玉子カレーを食べてこれで負けないというゲン担ぎで、これが瞬く間に広がってうちに玉子カレーを観戦の前に食べてくれるファンの方が多かった。マリーナがにぎわうことができた恩人という感じ」
そんな思い出の詰まった球場の解体について納得していなかったという中川さん。
解体工事が始まった当初、喫茶店から定点撮影しインターネットで24時間中継する活動もしていました。
2011年の中川さん「だんだんと見せつけられると辛いです。(解体を)受け止めるわけではないけど見届けてやるわという微かな抵抗というか反抗というか」
そして最後まで残ったライトスタンドの解体工事も今週から本格化。
旧市民球場がこの場所にあったという名残が消えてしまうことについて中川さんは。
中川公一郎さん「球場自体が無くなったのに、あの場所だけが何故か残されたままになっていて寂しい思いをしたんじゃないかな。(スタンドが)成仏できるんだなってそんな気持ちになりました」
中川さんはポツンと残されたライトスタンドを見るたび〝仲間のところへ行って欲しい〟という思いを抱いていたそうです。
中川さん「(旧広島市民球場が)復興の象徴だったのにな、この場所はという思いは今も変わらない。色々な人が色々な思いをもって、訪れて平和を思って復興を祝ってそんなことができる場所になれたらいい」
解体されたライトスタンドの一部は、今後ベンチとして再利用され第2の人生を送ります。