緩やかに電動化を目指す自動車社会における現時点での最適解とは？ - BLOGOS編集部PR企画
※この記事は2015年10月08日にBLOGOSで公開されたものです
前編では、EV、PHV開発の歴史的経緯を追いかけて来たが、これらのいわゆる“次世代車”の中では、どのような車が主流になって行くのだろうか。引き続き、清水氏に話を聞いた。内燃機関の限界という問題をクリアし、一次エネルギーの多様化を実現したのがPHV
今世の中に多くある“次世代車”における、PHVの現時点での立ち位置や役割は、どのようなものなのか？
『ガソリンエンジンなど内燃機関を搭載する自動車は、もちろんメーカーのたゆまぬ努力もあり少しずつ改良が続くことによって成熟してきて、ある意味開発し尽された技術となっています。それに対してEVは、今でこそある程度こなれた存在になりましたが、実際にユーザー使用時のデータを検証し改善していかなければならない部分がまだあります。
つまり、必ずしも同じレベルでは考えられないものの、電気的な要素を持った自動車の方が伸びしろがある、というのが我々研究者のみならず一般的な見解です。そこで課題になるのがご存知の通り電池で、最高性能の電池を追い求める傾向の日本では、いまだ良質な電池を低コストで大量に生産するまでには至っていません
先に内燃機関が、技術としてはある意味“開発し尽されている”と言いましたが、世界的に低燃費・低公害規制が厳しくなる中、内燃機関だけではエネルギー効率や排ガス量を考えるとどうしても限界に達してしまい、別次元のエンジンを開発するか、ハイブリッド車にたよらざるを得ない状況になっています。ただ、ハイブリッド車と言えども、一次エネルギーには石油を使用することしかできません。一次エネルギーの多様化という面においては、電気であれば色々応用がきます（太陽光・水力・火力などを用いることかできる）。そういう観点からハイブリッドだけではなくて、グリッドから充電した電気も消費して走行するPHVが登場しました。
ちなみにPHVの起源とされているのはアメリカです。アメリカ車は大きくてガソリンを大量に使用するイメージですが、産油国との国際関係もありますし「脱石油化」に対する意識は日本よりも高く、低燃費にしたい、つまりEVにしたいはずなんです。ところが、広大な国土を移動せねばならず一日の走行距離は必然的に長くなりますし、高速道路での移動が主体ですので、ストップ＆ゴーでの電気の回収が期待できないなど諸々の理由でEVはダメだと。そこで、アメリカでは駆動用ではなく発電用に小さなエンジンを積んで電力を確保しながら走るレンジエクステンダーEVというのが昔から開発されてきました。これをもっと実用的に、徹底的にシステマチックにしたのがPHVと言えます。
このように、ひと口にPHVと言っても、地域によって捉え方は異なります。アメリカの場合は完全に電気自動車の代わりですし、日本の場合はなるべくランニングコストを抑えるための手段。ヨーロッパの場合はもともとPHVという考え方は少なくて、街中は電気自動車で、郊外では日本みたいに住宅が密集していないので「少しくらい排ガスが出ても…」とは言わないかもしれませんが、「ディーゼルで走りましょう」というのがこれまでの一般的な解釈です。
また、米国でハイブリッドの開発が本格化するころ、ヨーロッパやアメリカの次世代車に対する考え方を調べてもらったことがあったのですが、その時もヨーロッパは省エネだと完全にディーゼルで、それをベースに何かやろうという考え方でした。一方、アメリカはできればごそっと電気に移りたいというのが本音のようで、一時期は軍も燃費やコストを考慮して、FC（燃料電池）戦車の開発参加者を募集していた時期があります。お国柄が出ますね』
社会全体として緩やかに電化していくのが望ましい
では、今の日本において内燃機関搭載車（ハイブリッド車含む）に代わる自動車として、期待できる次世代車とは？
『車両の用途によっても当然異なると思います。例えば，長距離輸送の貨物車や路線バスなど、大エネルギーを要する業務用途の車両は、インフラ整備や取り扱い者の面でも燃料電池車が好ましいと思います。個人が使用する前提で考えると、当面はバッテリー駆動EV（BEV）とPHVに限られますが、それらの評価はどのソースでつくられた電力を使用するかによります。
仮に、自然エネルギーなどでつくられた電気を使用する前提で、環境問題や今後の発展性などを踏まえ、トータルで見ればEVです。ただ航続可能距離や、インフラ構築などの目の前の課題を考えると、現時点ではPHVが最適解なのかなと思います。
一度の充電でどうしても長距離が走れないBEVは、主婦の方が普通充電で夜のうちに充電しておいて昼間街中のような近距離で使ってまた夜充電する、といったような使い方がベストです。業務用としても、近距離のデリバリーを複数の車両でシステマチックに急速充電器を共用する方法などは妥当な使い方であると考えます。また、ガソリンスタンドが減少している地方での域内使用にも向いているかも知れません。しかし、内燃機関自動車と電気自動車の2台を持てれば使い分けが可能ですが、1台でこなすにはPHVが現実的な選択肢ではないでしょうか。
BEVを採用した場合、遠出には出先で充電スタンドが必要になります。現在、どこに行っても不自由しないように充電インフラを組織的に配置する努力がされていますが、BEVの充電は夜間の普通充電が基本であるので、BEVの使用に慣れてきた時点では充電スタンドの利用頻度は意外と小さいのではないかという意見もあります。これは充電スタンドの経営を難しくする可能性もあり、特に急速充電器の最適配置には不明なところがあります。
一方，インフラ整備の初期段階では地方自治体等が設備を設置した関係で充電料金が無料の例が多かったのですが、普及の本格化にともない課金するようになってきたら、「メリットがない」と感じるユーザーも出てきたようです。インフラ設備のハードウェアに関しては基本部分の国際標準化が完了しているものの、運用に関連した装置や方法は自由競争に任されている現状から、インフラの運営コストと利便性が適切なレベルに抑えられるか否かは不確定要素が多い状況です。
現在はBEVの充電をセットする可能性が高い夕方の充電による電力負荷を避けるため、充電器に用意されたタイマーで深夜に充電を開始するような個別の努力が図られていますが、BEVが大量に普及した際には、夜間の充電タイミングもシステマチックに制御する必要があります。充電完了希望時間を付与して充電希望をユーザーが申告し、系統側が、電力負荷が平準化されるようにコントロールする“スマート充電“なども研究段階ではありますが提案されています。
これはスマートグリッドシステムに付加されたHEMS（HomeEnergyManagementSystem）などを介することも検討されており、大量普及時にはスマートグリッドも必須になってくるものと考えます．したがって、BEVの大量普及はインフラの高度化も必要なので、ある程度緩やかな普及を継続した先に来る必要があると考えられます。
行政もメーカーもユーザーも、それぞれがEVの使い方・充電スタンドの慎重な拡大をよく理解して、運用中のデータの吟味を行いながら、社会全体として緩やかに普及していくのが好ましいと思います。このような状況を準備期間と捉え、EVに慣れておくという意味でも充電インフラが軽微で済むプリウスPHVは良い選択だと思います。また充電作業についても、非接触充電、いわゆる駐車スペースに停めるだけで充電ができるようなシステムの研究が重ねられてきていて、十分実用段階に入ってきています。
厳密に言えばそれではプラグインではなくなりますが、PHVとしては電池容量が小さいものの、頻繁な充電によってEV走行の比率が充分高くなるプリウスPHVにとっては、充電の煩わしさがなく実使用時の効果が期待できる便利なツールになるのではないでしょうか。このように自動車社会は実際に、緩やかではありながら、電動化という進化に向けて確実に研究や開発が続けられているわけです』
【PR企画：BLOGOS×トヨタ自動車】
■関連リンク・プリウスPHV
・外部電源供給システム
・プリウスPHV特設サイト
