「まっすぐ政治改革」で、がんばる人が幸せになる右肩上がりの時代へ ～ 横粂勝仁議員 - BLOGOS編集部
※この記事は2012年12月03日にBLOGOSで公開されたものです
東京大学法学部を卒業後、司法試験に合格。2009年の政権交代劇により27歳の若さで政界入りを果たし、順調に夢の実現に向けて歩みを進めてきた横粂勝仁氏。しかし、その後の民主党執行部の政権運営に早くから異を唱え、菅内閣不信任決議案では民主党議員でありながら賛成票を投票。民主党という大きな後ろ盾を捨て、新党「改革の志士」や院内会派「改革無所属の会」の結成など、１期生とは思えない行動力で注目を集めてきた。一見すると無鉄砲にも思えるその行動の裏には、どんな思いがあったのか。そして、新しい風を吹かそうと乗り込んだ国会で、一体何を感じたのか。まさに民主党政権が解散するという前日、話を聞いた。（BLOGOS編集部：濱田敦子）
＊この取材は、解散の前日である2012年11月15日に行いました。肩書などは取材時のままとしています。
ひとりになって感じたのは一議員としての限界
原田謙介（以下、原田）：今日は明日解散という慌ただしい状況の中、お会いいただきありがとうございます。まず最初に、横粂さんは昔から政治家になるという目標を掲げ、実際にその若さで国会に来たわけですが、まさに１期目が終わるという今、率直にどういう感想を抱いていますか？
横粂勝仁（以下、横粂）：私は政治が素晴らしいと思って目指したわけではなく、なんとかしたいと思って入ってきたので、始めから期待していたわけではありません。でも、そうなんですけど、期待の無さを遥かに上回る失望感が漂っていたというか…… 魑魅魍魎がいる国民の常識とはかけ離れた世界だと改めて思うことがありました。
原田：具体的にどのような場面で感じたのでしょうか？
横粂：言葉と行動が伴わない人がたくさんいる。国民に向かっては「国家、国民のため」と耳触りの良いことを言いながら、実際の行動は党利党略、自己保身。それがあからさまじゃないですか。特に、東日本大震災の時に、より一層感じました。
原田：「議員としてもっとできるはずだったのに」とか、「１期目でこういうことをしたかったけど予想以上に出来なかった」と思ったことはなんでしょう？
横粂：覚悟はしていましたけど、一議員としてできる限界ですね。民主主義は数の世界です。その中で議員が１人で、いくら正論や正しいと思う主張を訴えたとしても、それが通る世界ではありません。ただ、だからといってそこで諦めるということではなく、今は難しいことでも、２期、３期と経験を積む中でやり得るという感覚は持っています。
と言うのも、昔の１年生議員にように、１議員が簡単に潰される時代よりは、若干風穴があいてきているように感じるんです。ウェブメディアが発展してきたことに加え、既存メディアも少しずつ今までだったら取り上げなかったようなことにも注目するようになってきた。思いを強くもち、それが本当に正しいことなら、極一部ですが山が動き始める気配のようなものは感じています。でも、今の段階ではまだまだ大きな流れに逆らえない、小さな存在でしかない一議員としての限界を感じた１期目ではありました。
原田：外の環境によって風穴があいてきたように感じるとのことですが、政治は中からも変わろうとしていますか？
横粂：変わろうとしているのかも知れませんが、中はまだまだです。今の段階では、外からの影響が大きいのではないでしょうか。個人が情報を発信できるSNSなどウェブメディアの発展などにより、情報を色々な所から拾い、多角的に物事を見る人が増えてきたように感じます。それに伴って真実を知る人も増えてきたことで、小さな声が押し潰されにくくなってきた。今までだったらあっという間にかき消されてしまっていただろう声や政策も、若干ではありますけど表に出るチャンスが生まれてきたと思います。
政策実行のために仲間を集めるという
正しいスタートラインに立っている
原田：では、政治を取り巻く環境が変わりつつある中で、２期、３期目と続けるうちにチャンスを増やして実現できそうなこともあると。
横粂：先ほど話した１期目で見えた一議員としての限界ですが、特に私の場合は始め与党にいて、そこから無所属になったんですよね。だから、１人でできることが何で、できないことが何か、本当によくわかったんです。１人の非力さをわかった上で、今後政策を実行するために仲間を集めていく。これは、根っこの強さが違います。
田中角栄さんが言った数の理論、「政治は数、数はチカラ、チカラは金」は事実かもしれないけど、数がそろっている場所しか知らない人が言っても、これは机上の空論になってしまう。最初から最大与党など数がそろっていることが当たり前の場所にいると、“数が全て”になってしまい、数は集まっていても“何をするのか”が見えなくなってしまうように思います。私はその点１人を経験して「１人では絶対にできないことがある」と心の底から思いました。その上で理想の実現のために数を集めようとしている今は、政治家として正しいカタチで動くスタートになったと思っています。
原田：確かにほとんどの政治家がどこかの党に所属していますが、果たして「その党の１人」としての発言なのか、「一政治家としての発言」なのか、有権者としても疑問に思うことがあります。横粂さんは、2011年6月の菅内閣不信任案に、当時民主党員でありながら賛成を投じましたよね。次の選挙では、その菅さんの選挙区から出馬するとして準備を進めていらっしゃいますが、あえてその選挙区を選んだのは何故なんでしょうか？
横粂：子供の頃から今の今まで政治で目指していることは、ずっと変わりません。10歳の頃から20年来に渡って「政治家たるもの、そして総理たるものはこう」という思いを持ってきました。それは何かと言うと、「国民のために一緒に喜べるか、一緒に泣けるか」なんです。家族のことのように、国民のことを思えるかどうか。
菅さんのことは全否定しているわけじゃなく、むしろ世襲じゃない方が総理大臣になったという点で尊敬していました。だけど、理想や期待が大きかった分、違う行動をとった事に対する怒りと疑問が大きかったんです。国民が正に政治のチカラを求めている震災の時に、総理が死にもの狂いで頑張らないでどうするんですか。そんな時に、自分の政治家としての延命や、党利党略、民主党にとっての有利不利、印象が良いか悪いかに流された所が私は絶対に許せなかった。
原田：期待が高かった分、余計に許せないところがあって、内閣不信任決議に賛成したと。
横粂：そうですね。そして、それを機に民主党を離れたわけですが、党を離れるなら辞めろという意見をたくさんいただきました。なぜなら、私は民主党の比例復活議員として選ばれたのであって、横粂で選ばれたんじゃない。でも、皆さんが期待した民主党の姿、民主党に託した思いからズレた末に飛び出したというなら潔く辞めますが、私は今も託された思いの中にいると思っています。ズレて行ったのは、民主党、そして菅さんの方だという譲れないこだわりがあるからこそ、今の自分の立場を貫いているんです。
そして、これが単なる自己満足や自分の思い違いなのか否か、判断してもらうのが選挙。だから、ただ批判して終わりじゃなく、公正公平でしっかりと白黒がつく選挙で審判を頂こうと。こういう理由で、菅さんの選挙区で戦うと決心したわけです。横粂が駄目なら選挙で落として頂ければ良いですし、「横粂、頑張れ」と思っていただけるのであれば押し上げて頂きたい。自分の筋道を通して活動しているので、迷いは全くありません。「選挙が近付いてきたけど、民主党の支持率は落ちているしどうしよう」という政治家たちとは違う思いを持っていると自負しています。
どんな議員活動ができるかは、選挙の勝ち方で決まる
原田：先ほど１人の議員としての限界を感じたとおっしゃっていましたが、どんなところでそれを実感したのでしょうか？
横粂：まず、政党から離れると組織とお金を失います。そして、その組織とお金が何のために必要かというと、選挙のためなんです。政治家である以上は、誰もが選挙の洗礼を受けますが、その時に組織や金があった方が良いに決まっていますよね。例えば、民主党であれば組合、自民党であれば業界団体、そういったまとまった組織の票をもらえなくなるのですから。だから、みんな不自由なところがありながらも、政党に所属するわけです。
原田：党利党略に縛られたとしても、そのまとまった票の魅力が大きいと。
横粂：それからお金に関しては、党に政党助成金が出て、そこから支部に対して補助が出ます。しかし当然、無所属にはありません。さらに多分、解散となると党から公認料という形で500万円、重点選挙区だから500万円、派閥から頑張れとして500万円などとお金が降ってきますが、私にはそれもない。そういうものをトータルしていくと、自分は昨年の６月２日に菅内閣不信任決議案に賛成して無所属になったことで、この１年半位の間で少なくとも１千万とか２千万というお金を受け取れなかったことになります。それを損と考えるかは別の話ですが、そういうお金や組織を投げ売って、１人でいることの大変さというのは日々感じていますね。
原田：そういう思いをしながらでも無所属を貫いて、自分が本当に発したいことをひたすらやっていける方が得るものが大きいと。
横粂：そうですね。政治家がどんな活動をできるかは、選挙の勝ち方で決まるのだと思っています。組織やお金に頼る選挙をする人は、その頼ったものや人に対して頭が上がらない政治になる。そこから脱却できる政治家が１番強く、そういう人が本物になると思っていて、今は「組織にもお金にも頼らないままに選挙で勝ち抜くこと」に全身全霊を掛けていますね。
まっさきにやるべきは景気経済対策
原田：実際に選挙区を移られ、タウンミーティングなどを通じて地道に地元で思いを広げる活動をされていらっしゃいましたが、１年５ヶ月ほどやってみてどのような感触を持っていますか？
横粂：徐々に徐々に浸透してきているのではないでしょうか。最初の内は、私を知らない人は「なんだか若い横粂という奴が何か言っている」だったし、逆に知っている方は「何でここに横粂さんがいるの？」という雰囲気でした。でも、タウンミーティングのような地道な活動の積み重ねで、ようやく、なぜ私が東京18区で菅さんと戦うのかを多くの方に知って頂き、それが高まってきたと感じています。
原田：タウンミーティングでは、どのような話をしていますか？
横粂：皆さんからは景気経済に対する要望が１番多く、私もそれを最優先にすべきと思っています。私の名刺にはキャッチフレーズとして「まっすぐ政治改革」と言う言葉が書いてあるのですが、これが経済の話をするときにいつも話している「右肩上がりの時代へ」という言葉とリンクしている感覚です。まずは、自分がぶれずにまっすぐ政治改革に向けてぶつかっていく。でも、政治を改革することはゴールじゃありません。「政治が良くなりました。皆さん嬉しいでしょ？」と言われても、別に嬉しくないじゃないですか。嬉しいのはやっぱり景気経済が昨日より今日、今日より明日と良くなっていくことで、そういう右肩上がりの時代へと、まっすぐ政治改革で導くことが大事だと思っています。
経済的なチカラが加われば「家庭を持とう」と少子高齢化も解消していくし、外交力も増していく。そんなわけで、今はなんといっても景気経済が最優先というのが一番多く聞かれる皆さんから意見ですし、私も強く感じているところですね。
原田：先日の党首討論などを見ていても、永田町で話題になっていることと、世の中の多くの人達が望んでいることに大きなズレがあると、僕も感じる所があるのですが、ズレてしまうのは党利党略で頭がいっぱいになってしまうからなんでしょうか？
横粂：政党人は党利党略ばかりで、自分の党にとってどう有利か。一政治家としては目先の選挙のことばかりという人が多くて、彼らが10年後、20年後を見据えているような印象を受けません。加えて社会がどういう状況に陥っているか、現実を見ていない。だから、全然違うことを言っている人が多いんでしょう。
「失われた10年」と言われ、これを20年にしちゃいけないと誰もが思ったはずなのに、実際に今なってしまった。じゃあ、この10年の間は何をしていたんだという話ですよね。このまま行ったら、確実に「失われた30年」になってしまうじゃないですか。今は正にそうなるかどうかの分岐点に立っていて、そこに対する政治の責任はとても重いんです。そこを私に任せてみてほしいという思いがありますね。
決断１つで命を奪う重みをあえて背負いたい
原田：10歳の頃から政治家なるとして、そこへの目標もぶれていないというお話でしたが、なぜそこまで政治家という立ち位置へこだわりを持っていらっしゃるのですか？他の道は考えなかったんですか？
横粂：それには父の話を少ししなければいけません。私の父は中卒のトラック運転手でした。トラック運転手って給料が安くて、額に汗してどんなに働いても、定年時の給料が今の大卒の初任給と変わらない程度だったんですね。20万そこそこのお金を全部自分の子どものために使ってくれて、自分は酒も飲まない、タバコも吸わない、服だって同じものを10年20年とボロボロになるまで着続けるような人でした。そんな大好きで尊敬する父ですけど、でもなんか違うんじゃないか。そういう庶民が幸せになれるような政治ができるんじゃないかと思ったんです。
原田：汗水流して働く真面目な人が、がんばったらがんばった分だけ、もう少しまっとうに恩恵を受けられる政治があるんじゃないかと。
横粂：さらにそんな父が、集団予防接種によってＢ型肝炎になり、それが肝硬変になり…… 一昨年にはついに肝臓がんで亡くなったんですね。もちろん全て国が悪いわけじゃないですが、でもあの時代に集団接種によってＢ型肝炎が蔓延する恐れがあるということは、医学界ではある程度確信を持っていたことだった。それなのに、政治の腰が重かったのか何なのか、とにかく１回ごとに注射器を変えることがされなかった。政治の決断１つで命が奪われたんです。
私はそれ程に政治が重いものなら、あえて自分がそこに携わりたいと思いました。政治は人を殺すこともできるし、生かすこともできるし、幸福にもできるし、不幸にもできるんだって。それ位に重みがあることに自分が関わって、父の味わったような苦しみを、この社会から減らしたい。そう強く思っているからこそ今、絶対に許せないことが２つあります。１つは、景気経済に対してあまりにも無策だということ。そして、正にダイレクトに命と生活が関わった東日本大震災に対して、復興の道筋がきちんとなされていないこと。亡くなられた方の命や今も辛い目にあっている方がいることはもちろん、原発の影響による放射線で今後子供たちがどうなっていくかということも含めて、まさに命に関わる政治の重さが問われている。子供ながらにずっと貫いてきた原点の部分が、真っ向から否定されているような今の政治を見ていると、これじゃ駄目だろという思いがふつふつと湧いてくるんです。
原田：なんでやらないんだという怒りに似た感情があるんですね。
横粂：本当に今の政治家たちにやる気がないのであれば、それは選挙で全く新しい人に変わってもらうしかない。だけどそうじゃなくて、今の政治家たちは、それぞれ自分の立ち位置を分かっていないように思えます。１人１人はそれぞれ強い思いを持っていて、それを一致団結していけば変えていけるだけのチカラがあるはずなのに、自分の立ち位置や自分の役職の重みを忘れて、ただ数の１人として「そこに居る」ことだけに専念をしてしまっている。それは違うんじゃないかと言う、怒りですね。
原田：横粂さんは首相公選制や参議院の廃止も含めて色んな政治改革の政策を掲げられていますが、今お話頂いたような思いがこれらの政策の根底にある？
横粂：今の政治は致命的なレベルに機能していません。民間の景気経済の後押しをするどころか、足を引っ張っている状態です。それなら機能をする政治にまずは戻そうとうことで、「政治改革」を１番に主張しているんですね。景気経済と、景気経済を良くするための政治改革、それに教育・福祉・安全保障を加えた５つを掲げて活動していますが、全ての原点は１番最初の政治を変えるというところにあります。
原田：政治家になる前からずっとそう考えていたのか、それとも実際に政治の世界に足を踏み入れてからそう思ったのか、どちらでしょうか？
横粂：両方ですね。なんとなく自分の中で貫いてきたものがあったけど、それが何なのかはっきりと形にならないままに活動していた時期がありました。でも、活動する中で色んな人の声を聞き、現実に起きている問題を知っていく中で、この５つだと確証を持ったという感じです。この５つの柱は今も進化していて、大枠は変わりませんが徐々に細かく修正を加えているところですね。
今度の目標は「横粂として勝つ」
原田：選挙に向けて第三極と言われるところの動きが活発化していますが、横粂さんとしてはどう見ていますか？
横粂：民主でも自民でもない第三極に皆さんが期待を寄せていて、私もそういう流れの中で一気に政治改革を行うしかないと思っています。ただ、どこかに入らないのか？と聞かれたりもしますが、自分がどこかの党に所属しなくちゃとか、推薦をもらおうとか、形式的なことにこだわりはもっていません。どこかの風にのって選挙に勝とうとも思ってないですし。今は、とにかく「横粂として勝つ」ということにこだわりを持っています。
ただ、審判を頂いた後に１人でできることとできないことが見えていますので、いずれ政策実現をやっていくために第三極に入ることも視野に入れたいと思っています。それが選挙前になるのか選挙後になるのか、タイミングを見ながら考えて行きたい。だた、選挙のために今どこかに入らなければという焦りは全くないですね。
解散を求められた時点で、政治は機能を停止する
原田：横粂さんも解散を早くすべきだと訴えてきたひとりですよね。このタイミングでの解散をどう評価されていますか？
横粂：遅すぎたという思いはありますが、これ以上先延ばしにするより良いと思います。政治ってどこかから解散が求められたら、もう機能しなくなる。そしたら、どんなにそのまま頑張ってももう動かないんですよ。それは報じられているようなことはもちろん、ニュースにならない議連（議員連盟）の動きなども含めて全部止まってしまうんですね。
超党派で動き出す議連も最初の１～２年はみんな積極的に動くんですが、３年目を過ぎていつ解散があるか分からないとなると、やっても無意味なんじゃないかとか、やっても解散になるしという雰囲気になる。そんな感覚では何も生まなくなるので、そうなったらさっさと解散して綺麗スッキリした方が良いと思っています。
一方で、究極的には１度選んだ以上はもう変えない、解散がないというのも１つの手段なのではないかと思うんですよ。私が出した首相公選制の案では、「解散権はなし」と考えていて、任期を全うしてそこまでにきっちりやることやりましょうと。
原田：徹底的に議論を尽くして、国民に選ばれたからには任期期間みっちりやる。確かに政治じゃなくて、一般の話なら当たり前の感覚ですけどね。
横粂：そうなれば頻繁に総理が変わることもないですし、どうしてもダメな場合は、総理に関しては内閣不信任決議案を議会で発議し、国民投票で辞めさせることができるという案にしています。大統領みたいに絶対に変わらないのとは違いますが、より安定的になりますよね。議会だって１度選んだ以上は、その体制でやるというのも１つだと思います。
民主党が駄目だから早く解散しろという話と若干矛盾しますけど、でも今みたいに解散権があって、それがいつ行使されるのかというソワソワ感が一番駄目。ないならないことを前提に国民も行動することができるので、今みたいなあるかもしれない、ないかもしれないが１番ダメということですね。
若者のチカラ、若者の思いを注入したい
原田：質問は変わりますが、横粂さんが若者の政治参加を進めようと努力されていることを心強く思っているのですが、若者の政治参加についてどう思っていますか？
横粂：政治も経済も、「若者がやらずして、どうする」と思うんですよ。経済に関しては、今の20代や30代って右肩下がりしか知らない世代ですよね。働けば働いただけ良い物が買える、働けば給料が上がるということを知らないから、不安で家庭が持てないと晩婚化になったり、それが少子高齢化につながったり。さらには家庭を持たなければ、マイホーム買おうとか、いい車に乗るぞとか、そういう前向きな感情が生まれず、夢も描けない。
社会的環境でそうなってしまっているのは事実なんですが、でも良くならないとあきらめてしまっては駄目で、20代30代が内向きではなく、外向きに意思を持って動いて行かないと、絶対に経済は良くならないと思います。もちろん、雇用や景気経済を解決するよう政治的システム作りにチカラを注ぎますが、片側のチカラだけではだめで、両方のチカラが必要なんです。
だからこそ、散々言われてきたけど、政治の世界がご年配の方、先輩の方々だけに偏って回っているので、そこに若者のチカラ、思いを入れていきたい。それには、まず投票に行ってほしい！ １票入れる人がいなければ誰かを押し出してほしい！ 誰も出す人がいなければ自分が出てほしい！ それ位のことをみんなが思う勢いじゃないと、良くなりません。
政治家を子どもがなりたい職業NO.1に
原田：まさに僕も同じような思いを持っていて、共感できます。横粂さんの発言でいいなと思ったのが、「子供のなりたい職業ランキングで、政治家を１位にしたい」という話し。政治家は社会を良くできる立派な職業なのに、政治家全体のイメージが悪過ぎて嫌われすぎている。だからこそ、がんばっている政治家を応援したいという思いもあるんですよね。
横粂：たかが世論調査、されど世論調査。なりたい職業ランキング１位になったらからといってなんだよと思われるかも知れないですが、重要なことですよ。子どもがそこを目指すか否かで、その業界の価値が変わってきます。例えば、石川遼くんや浅田真央さんみたいな人に憧れて、あんな風になりたいと努力する人が増えるからその業界が良くなる。若い人がどんどん入ってくることで、業界が進化していくわけですよ。
じゃあ政治の世界が30年前や20年前より進化して良くなったかというと、悪化している、劣化しているというのがみんなの感覚ですよね。あんな職業になるかという場所に、いい人材が集まるわけがない。人材が集まらなければ、悪い政治が行われる。そうすると更に政治家になんかなるかとなって、負のスパイラルに陥ります。これを反転させ、子供もなりたい、親がやらせたい職業にしたい。
本来ならそれに値する職業なはずなんですよ。いろいろなことをやれる権利があって、勉強し経験を積みながら世の中を変えていける可能性を秘めた仕事。こんなにやりがいのある仕事はないはずなのに、今は嫌がられているという事実は、政治家がもっと真摯に受け止めて、自分たちの手で業界・ジャンルを高めていく必要があると思います。
原田：官僚もそうだと思うんですが、絶対に世の中に必要でやりがいがある立派な仕事のはずが、何故か悪いイメージでもって見られてしまうのは、日本として勿体無いと感じますね。
横粂：官僚も自分たちの世界がどう見られているのか、もっと考えるべきです。もちろん世間で叩かれているような人もいるとしても、全体はプライドを持って国民のために仕事をしているはずです。外資に行ったエリートが何千万稼ごうと、俺たちはそういうこととは別の軸をもってやっているというプライドがあるはず。それを分からない国民が悪いではなく、その姿を見せていくように努力も必要。ちゃんと国民に知って貰おうとする感覚を持っているかどうかでも、表情や、窓口の対応も変わるはずです。
ビジョンは総理になったその先にも
原田：これは以前にもお聞きした質問ですが、とってもいいなと感じてみなさんにもお聞かせしたいので、横粂さんの人生のプランのお話をしていただけますか？
横粂：私は総理大臣になることをゴールとして見ていません。総理をゴールと考えて、それを終えた後に、しかも老害のようにただ残っている人が多数いる今の状況はおかしいと思います。総理大臣という最高権力者の時にやり残したことを、その後にできるはずがないじゃないですか。もし自分が総理になったら、どんなに業界の反対があろうが、殺されそうになろうがやり切るぞと思っていて、それをやり切ることで、まず日本の国益のために尽くしたい。
その後は教育や飢餓、病気など世界の問題に対して「元総理」という肩書をもって尽くしていこうと思っています。権威を威張るわけじゃないですが、その肩書がだからできることもたくさんあるでしょう。さらに年をとって60・70才となったら、日本の学校を訪れて、小・中学生の子供たちに経験を語って次の世代を育てたい。つまり、まず国の為に国益を追求し、その後世界益を追求して、最後に次の世代の育成、そこまで考えて死んでいきたいですね。
原田：政治家で総理の先まで語る方は珍しいと思うんですが、いつから先の話まで考えるようになったんですか？
横粂：子供の頃からです。もちろん「日本の政治家になり総理になること＝国益」で、国民を無下にして外ばかり支援では駄目ですが、国の違いが、国境の堺が命の境目になっちゃいけないという思いがあって。日本で餓死する人がいればおかしいと感じるのに、アフリカなら「まあそうなのかな」と思ってしまう今は感覚がおかしいと思うんです。
原田：そこを子供の頃から全く変わらずに思っているというのが、凄いですね。
横粂：根幹は父のような我武者羅に頑張っている人を救いたい、助けたい、幸せにしたいというシンプルなところにあります。自分が日本人だからまずは日本のためにやるけれど、日本が助かったらそれで終わりなのか。じゃあアジア・アフリカのそういう人たちはそのままでいいのかという思いがあって、そのためにできることをやりたい。そのためにも、ただ自分がどんどんチカラを付けて駆け上がらないといけません。
原田：元総理が世界で活躍したら、日本のイメージも良くなりますよね。そういう未来を描ける頃には、景気も回復して……。そんな将来が来ると嬉しいですね。
横粂：元総理という肩書の人が、日本にはこんなにうじゃうじゃいるのに、その人たちはそれをいかさず何をやっているんでしょう。幅広い人脈やブレーンをもっているんだから、それをいかしたら何かできるはずですよね。人を巻き込んで、社会のため世界のために尽くしてほしい。逆に言うと、そういうことをしたいとムズムズしないような人が総理になってしまう社会にも問いかけていきたい。
それぞれのフィールドで感じた疑問を政治に届けてほしい
原田：最後にメッセージをお願いします。
横粂：政治家をなりたい職業ランキングで１位にしたいという思いはありますが、父のようなトラック運転手も、医者も学校の先生も政治家もそれぞれ役割があって、それぞれ社会に必要なことをやっています。それぞれの楽器が響き合って１つとして成り立つオーケストラのように、社会も成り立っている。これを読んでくれている人にも、色んな職業の方がいて、それには上も下もなく、皆で社会の音楽を鳴らしているという感覚を忘れずにもって頂きたい。私たち若い世代は、それぞれのフィールドでがんばっていきましょうと。
でも、それぞれのフィールドで全力を尽くすうちに、きっとこれはおかしいとか、これは違うということが出てくると思います。それを、全部受け止めるのが政治なので、その声を是非、政治に届けてほしい。そのおかしいを正しい流れに変えていくのが、政治の仕事なのですから。
私はそれを受け止めるために、２期目につないで２期目の議員として暴れたい。横粂がアホなことをやっているなとか、そういう感想でもいいから私の生き様も政策も見て頂いて。駄目だと思えばそれも関心の１つとして、それをきっかけに私よりも良い政治家を探して頂いてもいいし、良いと思えば続いてくれたら嬉しい。もちろん、応援する側として関心を向けてもいい。とにかく、何らかの形で皆で政治に関わってほしいです。私も関わってもらえるような活動をしていきたいと思います。
原田：無関心にはさせないと？
横粂：はい。そうですね。
原田：今日はありがとうございました。
インタビューを終えてプロフィール 横粂勝仁（よこくめ・かつひと）
衆議院の解散が決まった直後、まさに激動のタイミングでのインタビューとなりました。実は横粂さんとは過去に何度か話しをさせていただいているのですが、そのたびに、政治や日本の未来に対する信念の強さを感じます。震災後の対応への不満から、民主党を離党し、選挙区を菅直人氏と同じ選挙区へ移す。傍から見たら、突拍子もなく見えるこの行動も、横粂さんの中では信念に沿ったもの。マスメディアでは伝わりにく。横粂さんの考えや展望をお聞きできた時間でした。若者世代の代表として、今後共注目していきたいです。
原田謙介
1981年9月10日生まれ。東京大学卒、弁護士。2009年の衆議院選挙において神奈川11区より民主党公認候補として出馬。自民党の小泉進次郎氏に敗れるも、比例にて復活当選を果たす。その後、2011年3月の東日本大震災への対応に異を唱え、民主党を離党。無所属として活動する中で新党「改革の志士」立ち上げや、日本の政治を根幹から正すための「１億円プロジェクト」など、既成概念にとらわれない活動で話題を集める。また、人気番組『あいのり』（フジ）に出演経験があり、“総理”のあだ名でも知られる。
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原田謙介
1986年岡山県出身。東京大学卒。YouthCreate代表。ネット選挙運動の解禁を求める「One Voice Campaign」発起人。2008年4月同世代の政治への関心の薄さ、未来をみない政治に問題意識をもち、20代の投票率向上を目指す学生団体ivoteを結成した。（2011年6月引退）2012年3月に大学卒業後、「政治と若者をつなぐ」をコンセプトとするYouthCreateを設立。
YouthCreateホームページ／One Voice Campaignホームページ
