路線バスの後部を「店舗」に改造したバスが北海道を走っています。営業運行のかたわら、車内に食品や雑貨を並べて販売する移動販売機能を持った路線バスで、全国初の試みです。この実証運行を行っている十勝バスを取材しました。

全国初の店舗付き路線バスとは

 地方の交通な不便な地域で、スーパーマーケットなどが「移動販売車」を運行するケースが増えています。その一方、路線バスの事業者も買い物の足にバスを使ってもらうようPRするケースもありますが、では、路線バスそのものが移動販売車になったなら――そんな実証実験が2021年12月から北海道帯広市で行われています。


十勝バスが運行する「マルシェバス」。車内後部が店舗になる(画像:十勝バス)。

 通常の路線バスの後部およそ2分の1を「店舗」に改装し、路線バスとして営業運行するなかで、空き時間に食品や雑貨などを販売するという取り組みです。運行するのは地元帯広市の十勝バス。移動販売機能を持った路線バスは全国初で、この取り組みは経済産業省の「地域新MaaS創出推進事業」に採択されています

 始発バスが帯広駅を出発する前に、まず駅北の多目的広場で販売。そして路線バスとして運行し、終点の大空団地へ到着後、JAかわにし大空支店駐車場で販売。さらにその後、帯広駅まで通常運行で戻ったのち折り返し、終点の大空団地へ到着後、再びJAかわにし大空支店駐車場で販売、というスケジュールです。1日の運行で3回、計5時間ほど販売を行います。

 十勝バスが郊外団地である大空団地の活性化やコミュニティ形成に取り組んでいたところ、コロナウイルス感染拡大の影響で運賃収入が減り、新しい収入源の確保が求められるなか、バスの空間をうまく使えないかと考え、アイデアが生まれたそうです。

「店舗」に並ぶ商品は、野菜やくだものなどの食料品や日用雑貨など約300点。一番人気はからあげ、2番はクロワッサン、3番は高級茶菓子だといい、食品が人気の上位を占めています。

 十勝バスによると、1日3回の販売で計50〜60人のお客さんが買い物に訪れ、売れ行きも好調だそう。お客さんからは「クルマに乗らなくなり苦労していたので助かった」「いつも他の人のクルマに乗せてもらっていたが、これなら1人で来られる」といった声が寄せられているそうです。

まさか、走行中の販売は法律違反に…

 今回の実証実験は販売時間と販売場所の検証がメインで、その結果を受けて、既存のダイヤに組み込むのかダイヤ改正を行うのかなどを検討する予定だそうです。現在は、既存のダイヤ外で、週2日のペースにて販売が行われています。

 十勝バスによると、実はもうひとつ、実証実験で行いたいミッションがあったそうです。それは走行中の販売。走っている間にモノが売れる方が効率が良いし、路線バスでやるメリットも最大限活かせます。


通常の路線バスとして運行につく「マルシェバス」(画像:十勝バス)。

 ところが、法律の問題があって、走行中の販売はできないそうです。警察にも相談したそうですが、バス車内であっても“路上での販売”は許されないのだとか。もちろん停車中であっても、その停留所が道路上であればNGというわけです。

 とはいえ、十勝バスはこれまでの実験結果を受け、ポテンシャルを感じているといいます。2月まで実証実験を行い、その後本格的に検討するとしています。