在来線最速「京成スカイライナー」160km/h運転の感覚とは? 現役運転士に聞く
京成電鉄の看板列車といえば京成上野駅と成田空港駅を結ぶ「スカイライナー」です。この列車に使われるAE形(2代目)はどのような「乗りもの」なのでしょうか。現役の運転士に聞きました。
区間によりスピードが違うスカイライナー
京成電鉄の看板列車といえば、東京都心と成田空港を結ぶ「スカイライナー」です。東京の下町や、千葉ニュータウン等を経由し、30分台で走り抜けます。この「スカイライナー」に使われているAE形(2代目)は、2010(平成22)年にデビューした比較的新しい特急車両ですが、運転士にとってどのような車両なのでしょうか。
歴代のスカイライナー車両や数多くの通勤車両を運転してきた京成電鉄の現役運転士・松村眞一さんに、AE形がどのような乗りものなのか、話を聞きました。
京成電鉄の「スカイライナー」に使われているAE形(2代目)電車(画像:写真AC)。
――松村さんは、これまでどのような鉄道車両を運転されてきましたか?
京成電鉄には1987(昭和62)年に入社し、それから駅係員を1年10か月、車掌を10か月務め、1990(平成2)年7月から現在まで運転士をしています。(スカイライナーの歴代車両である)AE形(初代)、AE100形、AE形(2代目)にも乗務しました。現在はスカイライナーがほとんどですが、通勤車両に乗務することもあります。
――自動車であれば、曲がりくねった曲線区間と、高速道路では、運転に対する注意点が随分異なります。クルマの性能も影響するでしょう。AE形(2代目)は、京成本線は最高時速110km/hですが、北総線区間は最高時速130km/h、印旛日本医大〜空港第2ビル間では最高時速160km/hとなります。これだけ運転条件が異なれば、注意点も相当異なるのでしょうか?
京成本線を走行する京成上野から京成高砂までは曲線もあり、踏切が多い区間もあるので、そちらにも注意が必要です。加減速を繰り返しますから、運転操作により気を使います。
――すぐに思ったように、速度が変えられるものなのですか。
ノッチをP段(車でいうアクセル)に投入すると、レスポンス良く反応します。ただ、本線から先の北総線の最高130km/h区間は踏切がなく曲線も少ないため、定速運転機能を使い加減速もほぼなくなります。160km/h区間も同様です。
――定速運転機能は、スイッチを入れると同じ速度で走ってくれる機能なのですか?
はい。AE形(初代)、AE100形、AE形(2代目)に装備されていますが、操作方法は違います。
最高速度160km/h運転の感覚とは?
――130km/hと160km/hでは、運転している感覚は異なりますか? 例えば、160km/hでブレーキをかけても、なかなか止まらないと感じることはあるのでしょうか?
高速運転区間は、基本的には高架橋ですので、実感はあまり変わりませんが、スピードを上げる時のモーター音は明らかに違ってきますね。ブレーキ距離の長さについては、特に長いと感じることはありません。
――160km/h運転をする成田空港線内では「6現示6灯式信号機」という特別な信号が設置されています。高速では通常の信号と見え方が違うものですか?
特に問題はありません。高速運転時でも見えやすい信号機だと感じます。高速運転時に風速の影響を感じることも特にないです。
――AE形(2代目)は運転台が高い位置にありますが、通勤車両との違いを感じる時はありますか?
AE形(2代目)の方が、視界が広々しており、先を見通しやすいですね。ただ、先頭車の前頭部が流線型で長いため、通勤車両と比べて停止位置目標が変わるので注意が必要です。
――AE形(2代目)は先頭車(1号車・8号車)の台車にフルアクティブサスペンションを採用していますが、運転士の実感として「この電車は揺れないな」などと、効果を感じるものなのですか?
120km/h運転時の通勤車両と比較すると、揺れが「ない」と思うくらい違います。先代のAE100形と比較すると、それほど違わないですが。
――「モーニングライナー」や「イブニングライナー」としてAE形(2代目)が京成本線内を走ることもありますが、そのときは130〜160km/hの高速運転は行いません。先代のAE100形とほぼ同じダイヤのようですが、同じダイヤでもAE100形と運転感覚の違いはありますか?
ダイヤはほぼ同じですね。AE形(2代目)と、AE100形では車両性能はやや異なりますが、違いをそれほど意識せずに運転できると感じます。速度制限の表示通りに運転しているということもありますが、AE形(2代目)では、AE100形との加速性能の違いを考慮して、曲線でやや抑え目に走ることはあります。遅延時の回復運転時には、遅れを取り戻しやすいです。
――貴重なお話、ありがとうございました。